【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
105 / 128

105.同じ宮殿に男女混合は問題あり?

しおりを挟む
 ナイジェルの発言を受けて、そういえば男性が一人だったと悩むベリアル。青宮殿に安全な男性を住まわせる必要性に気づいた。皇帝陛下であるエリュ、一応幼女姿のシェン、妖精族の王姪リンカ。侍女も含め、すべて女性だった。

「安心していいよ。僕がいるからね、間違いは起きない」

 シェンがそう請け負うものの、外部がそう見てくれるか分からない。噂の一番怖いところは、事実でなくても広がる部分だった。そうであって欲しいと願う内容なら、まったくの出鱈目でも広まる。宮殿や王宮の噂の怖さを知るナイジェルも唸った。

「そっか、友人関係とはいえ……問題だな」

 大国の王宮という伏魔殿を生き抜いた王子だ。危険性と今後の対策を練っていく。

「一番簡単なのは、この宮殿を男子禁制にすること。その次が、安全な男性に部屋を与えること、くらいか」

「ナイジェル、いなくなるの?」

 悲しそうなエリュの声に、シェンは男子禁制を案から排除した。となれば、誰か男性を住まわせる必要がある。使用人のメレディスを男性と紹介する手があるものの、彼女の性を捻じ曲げて喧伝するのは気が引けた。何より、使用人は男女の枠に入らない。この場合の男性は、貴族またはそれに準じた社会的な肩書きを……。

 そこでシェンは斜め後ろを振り返った。じっくり頭の先から爪先まで確認し、大きく頷く。

「ベリアルに部屋を与えようよ」

「あ、それはいい案だ」

 リンカもすぐに意図を悟った。ナイジェルは大喜びだ。さっきの言い訳で関係が改善しているし、同性がいれば気が楽だった。友人になったばかりの彼女らと離れなくて済む。

「私が、ですか」

「リリンの部屋も作ろう! よし、そう決まったら急がなくちゃ。ケイト、バーサ、準備して」

「承知いたしました」

 侍女達はすぐさま動いた。議会の承認もへったくれもない。守護神が認めれば、それでいい。ここは蛇神シェーシャが住まう神殿と同じだった。青宮殿は最古の建物であり、シェーシャのお気に入りだ。そこに加護を与えた皇族や王族を集めて住む、そう宣言されたら魔族は反対できなかった。

「うん。無事に片付いてほっとした」

「早めに気づいてよかったな」

 誰かに指摘されてからでは、面倒なことになっていた。そう笑うリンカとハイタッチして、大喜びで手を伸ばすエリュとも手を合わせる。はしゃいだナイジェルも加わり、リビングは大盛り上がりだった。

「どの部屋を使いたい?」

「一番玄関に近い部屋で結構です」

「あ、無理。そこは物置に使ってる」

 どこでもいい口振りなのに、指定すると拒否される。結局ナイジェルの隣の部屋をあてがわれた。決まっているなら聞かないで欲しい、後にベリアルはそう嘆いた。聞いて大笑いしたリリンは、リンカとナイジェルに挟まれた部屋だ。男女なので緩衝地帯として設けられた部屋だったが、騎士団長で将軍のリリンが使うなら問題なしと判断された。

「明日の朝、皆でご飯できる?」

「朝練習の後になりますが合流します」

「朝議を終わらせて駆けつけます」

 リリンもベリアルも、満更ではない様子。皆してエリュに甘いんだよね、一番甘い癖にそう呟いたシェンは頬を緩めた。
しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?

海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。 そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。 夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが── 「おそろしい女……」 助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。 なんて男! 最高の結婚相手だなんて間違いだったわ! 自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。 遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。 仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい── しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき@バカふり200万部突破
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

元貧乏貴族の大公夫人、大富豪の旦那様に溺愛されながら人生を謳歌する!

楠ノ木雫
恋愛
 貧乏な実家を救うための結婚だった……はずなのに!?  貧乏貴族に生まれたテトラは実は転生者。毎日身を粉にして領民達と一緒に働いてきた。だけど、この家には借金があり、借金取りである商会の商会長から結婚の話を出されてしまっている。彼らはこの貴族の爵位が欲しいらしいけれど、結婚なんてしたくない。  けれどとある日、奴らのせいで仕事を潰された。これでは生活が出来ない。絶体絶命だったその時、とあるお偉いさんが手紙を持ってきた。その中に書いてあったのは……この国の大公様との結婚話ですって!?  ※他サイトにも投稿しています。

処理中です...