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23.かくれんぼも自分で教えちゃう
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庭に用意された迷路は大人なら上から見渡せる。だが3歳の子はすっぽりと隠れてしまった。それが楽しくて、何度もかくれんぼをしてきたエリュである。侍女から隠れる方法も迷路の道順もすっかり覚えていた。入って左に曲がり、右、右、それから左。屈んで移動し、座り込む。
わくわくした。いつもは自分一人で隠れる。侍女達が追いかけて、十数分かけて見つけた。がさがさと茂みを掻き分ける音が聞こえると、這って逃げたりもしたけど。今日はここで待つ。リリンは侍女のケイトより早く見つけてくれるかな?
その頃のシェンは、卑怯な技を使っていた。小さな蛇の姿になり、樹木の下をくぐって移動する。かなり進んだところで幼女に戻り、葉を揺らさぬように丸まった。子どもの遊びも馬鹿に出来ぬな。これは緊急時の避難訓練にちょうどいい。
捲れてしまったスカートを直しながら、シェンはエリュの気配を探った。契約の前段階まで済ませたので、居場所くらいは分かる。庇護者となった影響もあるだろう。エリュが幼過ぎて契約の内容を理解できそうにないので、正式な契約の手前で止めてあった。
成長したら絶対に契約すると意気込むシェンの上に影がかかる。
「ん?」
「見つけましたよ、シェン様」
悪戯好きなんですから、と文句を言われた。シェンの首根っこを掴んで回収するリリンは、だいぶ容赦がない。
「うわぁ! エリュ、僕の分まで頑張れ」
まだエリュが捕まってないと判断し、そう叫んで派手に連れ去られた。迷路の入り口にいるケイトに預けられる。ちらりと視線を向けるリリンは、エリュの居場所が分かっているようだ。当然だろう。シェンの方が見つけにくいから先に探した。それもあるが、エリュが楽しそうなので時間をかけているらしい。
見つかるのは探された証拠で、もちろん嬉しい。迎えに来てくれる存在は大切だった。それでもすぐ見つかれば面白くないのも本音で。
エリュは葉を揺らさぬよう気を付けながら、時々顔を覗かせる。リリンもタイミングを合わせて背中を向けるもんだから、彼女はすっかり騙されていた。
「いつも、こうなのか?」
「ええ。とても愛らしいお方ですわ」
なるほど。普段からかくれんぼの最中に頭を覗かせるなら、侍女達も見失う心配がない。その上、本人が楽しそうなら何度も付き合える。すっと頭を引っ込めたのを確認して、リリンは振り返った。
「どこかしらね。エリュ様は隠れるのがお上手だわ」
うずうずしたのか、褒められたのが嬉しいのか。エリュは結局自ら居場所をバラしてしまった。がさっと音を立てて立ち上がり、完全に頭を見せる。
「ここ!」
「あら、そんなところに? 全然気づきませんでしたわ」
「エリュ、自分で教えちゃうの?」
「うん。この後はシェンとお絵かきの練習するから」
絵画に音楽、エリュが興味を持つような勉強は山ほどある。今はそれらを中心に進めれば構わない。その指示は、すでにベリアルやリリンを通して浸透させた。興味のあることをやらせ、必要不可欠な勉強を少しずつ足していけばいい。
「一緒に描こう。何の絵にする?」
無邪気さを装って手を繋ぎ、エリュと共に宮殿へ戻る。エリュの置かれた特殊な立ち位置を考えれば、皇帝になるための帝王学など不要なのだから。子どものうちくらい、好きにさせてあげたかった。
わくわくした。いつもは自分一人で隠れる。侍女達が追いかけて、十数分かけて見つけた。がさがさと茂みを掻き分ける音が聞こえると、這って逃げたりもしたけど。今日はここで待つ。リリンは侍女のケイトより早く見つけてくれるかな?
その頃のシェンは、卑怯な技を使っていた。小さな蛇の姿になり、樹木の下をくぐって移動する。かなり進んだところで幼女に戻り、葉を揺らさぬように丸まった。子どもの遊びも馬鹿に出来ぬな。これは緊急時の避難訓練にちょうどいい。
捲れてしまったスカートを直しながら、シェンはエリュの気配を探った。契約の前段階まで済ませたので、居場所くらいは分かる。庇護者となった影響もあるだろう。エリュが幼過ぎて契約の内容を理解できそうにないので、正式な契約の手前で止めてあった。
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「ん?」
「見つけましたよ、シェン様」
悪戯好きなんですから、と文句を言われた。シェンの首根っこを掴んで回収するリリンは、だいぶ容赦がない。
「うわぁ! エリュ、僕の分まで頑張れ」
まだエリュが捕まってないと判断し、そう叫んで派手に連れ去られた。迷路の入り口にいるケイトに預けられる。ちらりと視線を向けるリリンは、エリュの居場所が分かっているようだ。当然だろう。シェンの方が見つけにくいから先に探した。それもあるが、エリュが楽しそうなので時間をかけているらしい。
見つかるのは探された証拠で、もちろん嬉しい。迎えに来てくれる存在は大切だった。それでもすぐ見つかれば面白くないのも本音で。
エリュは葉を揺らさぬよう気を付けながら、時々顔を覗かせる。リリンもタイミングを合わせて背中を向けるもんだから、彼女はすっかり騙されていた。
「いつも、こうなのか?」
「ええ。とても愛らしいお方ですわ」
なるほど。普段からかくれんぼの最中に頭を覗かせるなら、侍女達も見失う心配がない。その上、本人が楽しそうなら何度も付き合える。すっと頭を引っ込めたのを確認して、リリンは振り返った。
「どこかしらね。エリュ様は隠れるのがお上手だわ」
うずうずしたのか、褒められたのが嬉しいのか。エリュは結局自ら居場所をバラしてしまった。がさっと音を立てて立ち上がり、完全に頭を見せる。
「ここ!」
「あら、そんなところに? 全然気づきませんでしたわ」
「エリュ、自分で教えちゃうの?」
「うん。この後はシェンとお絵かきの練習するから」
絵画に音楽、エリュが興味を持つような勉強は山ほどある。今はそれらを中心に進めれば構わない。その指示は、すでにベリアルやリリンを通して浸透させた。興味のあることをやらせ、必要不可欠な勉強を少しずつ足していけばいい。
「一緒に描こう。何の絵にする?」
無邪気さを装って手を繋ぎ、エリュと共に宮殿へ戻る。エリュの置かれた特殊な立ち位置を考えれば、皇帝になるための帝王学など不要なのだから。子どものうちくらい、好きにさせてあげたかった。
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