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28.義母から躾し直す許可が出た
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友人になった男爵令嬢とお茶会を開く。そう告げたら、公爵夫人は感激して泣き出した。義母は息子が病んでいると理解している。女性の友人限定とはいえ、招くお茶会を許したことに光明を見出したのだろうか。
「本当に、あの子が許したのね?」
「はい、屋敷から出ない条件が付きましたが、お友達を呼びます」
「そう、良かったわ。いきなり求婚して3日で婚約結婚と駆け抜けたから。レオンティーヌ嬢に迷惑を掛けているのは分かってるけれど、あの子が可愛いのよ」
「ご安心ください。きちんと躾直し……教育し直します」
いつもの癖で物騒な単語が出てしまったが、義母は貴族夫人らしい笑みで頷いた。
「しっかり躾と管理をしてね。以前から言動が危うかったのよ。あなたを連れてきた時も、ついに人を攫ったかと心配したわ」
ああ、ええ、分かります。犯罪確定の心配をしたんですね。半分くらい合ってますけど。言葉に出来ない部分を、笑顔の裏に隠して、義母に名を呼び捨てるようお願いしてみた。
「レオンティーヌ……何だか恥ずかしくなるわ」
ぽっと頬を染める義母は、うちのお母様ほどでないにしろ若く見える。
「家族だもの、レオンちゃんでいいかしら」
「お任せします、お義母様」
「いやん! アリーと呼んで」
義母アリエルを、アリーと呼ぶ……これまた高いハードルだが、余裕で越えてあげるわ。
「分かりました、アリーちゃん」
様ではなく、敬称を軽く「ちゃん」にする。同じ並びがいいのよね? そう察した私に、きゃっきゃとはしゃぐ義母。中身も私より若い気がした。実家で甘やかされて育ったんだろうな。羨ましいのとも違う微妙な気持ちで、なま温く見守った。
「お茶会はいつがいいかしら。まだ数週間は天気がいいと思うの。もし雨が降れば、客間を使えばいいわね」
私以上に楽しみにしている義母が乱入する危険性を感じ取り、一瞬だけ天井を仰ぐ。先に発散させれば、当日は挨拶くらいで引き下がってくれるかも。ガス抜きってやつ?
「アリーちゃん、貴族同士のお茶会って初めてなの。実家では跡取り教育が忙しくて、参加しなかったわ。だから……一緒にお茶会をしてくれませんか?」
「もちろんよ!」
大はしゃぎの公爵夫人を前に、自分の懸念が現実になる寸前だったと確信した。頻繁にお義母様とお茶会しないと、大変なことになるわ。前世の話で盛り上がってるところに乱入されたら、危険だった。主に私の寿命的な意味で。夫にバレるのが怖いのよ。
「お茶会はいつにしましょう」
「そうね、明日までに準備させるわ。今日はお茶会じゃないお茶をご一緒しましょう」
ん? 意味を考えて、家族のお茶タイムね、と変換する。さすが公爵家、話した直後に隣の部屋にティーセットが並んでるなんて。ちょっと実家では無理だわ。裏を返せば、いつも見張られているってこと。
ちらりと天井を見上げ、2階で執務をするシルを思い浮かべた。
「アリーちゃん、シルも呼んであげましょう。お義父様は王宮でしたか」
「あの人はもうすぐ帰ってくるから、皆でお茶にしましょう。私、憧れてたのよ。シルヴァンに可愛いお嫁さんが来て、4人でお茶を飲むの」
くるくる回りながら少女のように夢を語る義母。年の離れた妹を相手にする気分だわ。
「本当に、あの子が許したのね?」
「はい、屋敷から出ない条件が付きましたが、お友達を呼びます」
「そう、良かったわ。いきなり求婚して3日で婚約結婚と駆け抜けたから。レオンティーヌ嬢に迷惑を掛けているのは分かってるけれど、あの子が可愛いのよ」
「ご安心ください。きちんと躾直し……教育し直します」
いつもの癖で物騒な単語が出てしまったが、義母は貴族夫人らしい笑みで頷いた。
「しっかり躾と管理をしてね。以前から言動が危うかったのよ。あなたを連れてきた時も、ついに人を攫ったかと心配したわ」
ああ、ええ、分かります。犯罪確定の心配をしたんですね。半分くらい合ってますけど。言葉に出来ない部分を、笑顔の裏に隠して、義母に名を呼び捨てるようお願いしてみた。
「レオンティーヌ……何だか恥ずかしくなるわ」
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「家族だもの、レオンちゃんでいいかしら」
「お任せします、お義母様」
「いやん! アリーと呼んで」
義母アリエルを、アリーと呼ぶ……これまた高いハードルだが、余裕で越えてあげるわ。
「分かりました、アリーちゃん」
様ではなく、敬称を軽く「ちゃん」にする。同じ並びがいいのよね? そう察した私に、きゃっきゃとはしゃぐ義母。中身も私より若い気がした。実家で甘やかされて育ったんだろうな。羨ましいのとも違う微妙な気持ちで、なま温く見守った。
「お茶会はいつがいいかしら。まだ数週間は天気がいいと思うの。もし雨が降れば、客間を使えばいいわね」
私以上に楽しみにしている義母が乱入する危険性を感じ取り、一瞬だけ天井を仰ぐ。先に発散させれば、当日は挨拶くらいで引き下がってくれるかも。ガス抜きってやつ?
「アリーちゃん、貴族同士のお茶会って初めてなの。実家では跡取り教育が忙しくて、参加しなかったわ。だから……一緒にお茶会をしてくれませんか?」
「もちろんよ!」
大はしゃぎの公爵夫人を前に、自分の懸念が現実になる寸前だったと確信した。頻繁にお義母様とお茶会しないと、大変なことになるわ。前世の話で盛り上がってるところに乱入されたら、危険だった。主に私の寿命的な意味で。夫にバレるのが怖いのよ。
「お茶会はいつにしましょう」
「そうね、明日までに準備させるわ。今日はお茶会じゃないお茶をご一緒しましょう」
ん? 意味を考えて、家族のお茶タイムね、と変換する。さすが公爵家、話した直後に隣の部屋にティーセットが並んでるなんて。ちょっと実家では無理だわ。裏を返せば、いつも見張られているってこと。
ちらりと天井を見上げ、2階で執務をするシルを思い浮かべた。
「アリーちゃん、シルも呼んであげましょう。お義父様は王宮でしたか」
「あの人はもうすぐ帰ってくるから、皆でお茶にしましょう。私、憧れてたのよ。シルヴァンに可愛いお嫁さんが来て、4人でお茶を飲むの」
くるくる回りながら少女のように夢を語る義母。年の離れた妹を相手にする気分だわ。
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