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24.見つからないなら呼びつければいいの
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学院の理事がゾロゾロと後ろを付いてくる。この国でルーベル公爵家、シモン侯爵家の名を知らない貴族はいない。様々な分野で特許を持ち、財を築いたシモン侯爵家の娘が来るなら、寄付額に期待するのも当然だった。
ルーベル公爵家は国王陛下信頼厚く、王太子殿下の側近候補に嫡男が選ばれたほど。今は私にべったりだけど、つい先日まで毎日王宮へ通っていた。その二人が結婚し、揃って学院を見学する。王族が命じた視察ではないかと疑う理事もいれば、単純に寄付金額に期待する者もいた。
施設をぐるりと確認し、修繕が必要な箇所や希望する新設備の話に耳を傾けた。しかし私の目はピンク色を探し、耳はヒロインの名前クリステル・ユニフェを求めている。逆にそれ以外は無意識に排除した。
「どこにいるのよ」
苛々しながら呟いた声を聞き咎め、顔を寄せたシルは囁いた。
「誰を探してるの? レティは俺の妻なのに」
「男じゃないわ、ピンクの髪の女を探してるの」
「レティは両方イケる派?」
「いいえ」
即答で否定する。ヒロインと百合? ないわ、絶対にお断りよ。間違いなく二人まとめて監禁されるオチじゃない!! 逆ハーエンドが追加されたら、悪役令嬢も攻略対象になるのかしら。
腕を組んだまま、ひそひそと会話する私達は、仲良し夫婦に見えたらしい。理事長が微笑みながら、穏やかな口調で切り出した。
「夫婦仲は良いようで、安心いたしました。寄付金について使途をご説明したいので、ぜひ理事長室へお願いします」
寄付を名目にしたので、露骨に「お金ください」コールが掛かった。別にいいわ、ヒロインが見つかれば安いくらいだもの。出来たらシルに一目惚れするか、シルが彼女に心奪われてくれるといいんだけど。そうしたら、特許の利益を全部寄付しても構わない。
あ、お父様に言って、私の特許の使用料の支払先を変更してもらわないと。実家のままになってるわ。手続き忘れを頭の隅に置いて、微笑んだ。
「優秀な学生に話を聞きたいわ。クリステル嬢とか」
こうなったら寄付金を餌に、直接釣り上げてやろうじゃない! 満面の笑みで、理事長に圧を掛ける。彼女を連れて来い、そうすれば金を置いて帰る。その短い脅しは、きちんと伝わった。
「あ……はい。誰か、ユニフェ男爵令嬢を呼んでくれ」
不安そうなシルヴァンの黒髪を撫で、頬に唇を掠めた。途端にぱっと表情を変えた笑顔の夫を連れ、理事長室へ足を踏み入れる。もちろんお金の入った箱も一緒よ。護衛の騎士以外にも、侍従を連れてきて良かったわ。
箱を二つ積んで、私はソファに腰掛けた。当然のように隣に座るシルの手が腰に回るのを許す。学院は寄付と国からの補助で成り立っている話を聞き流しながら、ヒロイン登場を待った。
ノックの音と控えめな「失礼します」が聞こえて、ようやく待ち侘びたヒロインが現れる。もし隣でシルが腰を抱いていなかったら、立ち上がって抱き締めたいくらい。ヒロインに成り切るため、ゲームのスチル以外で彼女の外見は確認できない。
ふわふわと踊る柔らかそうなピンクの巻毛と、青い瞳。それから……愛らしい顔立ちは実年齢より若く見える。中学生くらいの感じね。背も低いし、庇護欲を刺激するためかしら。
攻略対象がヤンデレや性癖拗らせた男ばかりのゲームだから、幼妻みたいな雰囲気を狙ったのかも。ドキドキしながら彼女の挨拶を受けた。
「クリステル・ユニファです。お呼びと伺いました」
声も可憐で可愛い。シルも惚れたでしょう? 期待の眼差しを向けたが……シルヴァンは私と目が合うと嬉しそうに笑う。あれ? ヒロインを見てくれないの? 思ってたのと違うわ。
ルーベル公爵家は国王陛下信頼厚く、王太子殿下の側近候補に嫡男が選ばれたほど。今は私にべったりだけど、つい先日まで毎日王宮へ通っていた。その二人が結婚し、揃って学院を見学する。王族が命じた視察ではないかと疑う理事もいれば、単純に寄付金額に期待する者もいた。
施設をぐるりと確認し、修繕が必要な箇所や希望する新設備の話に耳を傾けた。しかし私の目はピンク色を探し、耳はヒロインの名前クリステル・ユニフェを求めている。逆にそれ以外は無意識に排除した。
「どこにいるのよ」
苛々しながら呟いた声を聞き咎め、顔を寄せたシルは囁いた。
「誰を探してるの? レティは俺の妻なのに」
「男じゃないわ、ピンクの髪の女を探してるの」
「レティは両方イケる派?」
「いいえ」
即答で否定する。ヒロインと百合? ないわ、絶対にお断りよ。間違いなく二人まとめて監禁されるオチじゃない!! 逆ハーエンドが追加されたら、悪役令嬢も攻略対象になるのかしら。
腕を組んだまま、ひそひそと会話する私達は、仲良し夫婦に見えたらしい。理事長が微笑みながら、穏やかな口調で切り出した。
「夫婦仲は良いようで、安心いたしました。寄付金について使途をご説明したいので、ぜひ理事長室へお願いします」
寄付を名目にしたので、露骨に「お金ください」コールが掛かった。別にいいわ、ヒロインが見つかれば安いくらいだもの。出来たらシルに一目惚れするか、シルが彼女に心奪われてくれるといいんだけど。そうしたら、特許の利益を全部寄付しても構わない。
あ、お父様に言って、私の特許の使用料の支払先を変更してもらわないと。実家のままになってるわ。手続き忘れを頭の隅に置いて、微笑んだ。
「優秀な学生に話を聞きたいわ。クリステル嬢とか」
こうなったら寄付金を餌に、直接釣り上げてやろうじゃない! 満面の笑みで、理事長に圧を掛ける。彼女を連れて来い、そうすれば金を置いて帰る。その短い脅しは、きちんと伝わった。
「あ……はい。誰か、ユニフェ男爵令嬢を呼んでくれ」
不安そうなシルヴァンの黒髪を撫で、頬に唇を掠めた。途端にぱっと表情を変えた笑顔の夫を連れ、理事長室へ足を踏み入れる。もちろんお金の入った箱も一緒よ。護衛の騎士以外にも、侍従を連れてきて良かったわ。
箱を二つ積んで、私はソファに腰掛けた。当然のように隣に座るシルの手が腰に回るのを許す。学院は寄付と国からの補助で成り立っている話を聞き流しながら、ヒロイン登場を待った。
ノックの音と控えめな「失礼します」が聞こえて、ようやく待ち侘びたヒロインが現れる。もし隣でシルが腰を抱いていなかったら、立ち上がって抱き締めたいくらい。ヒロインに成り切るため、ゲームのスチル以外で彼女の外見は確認できない。
ふわふわと踊る柔らかそうなピンクの巻毛と、青い瞳。それから……愛らしい顔立ちは実年齢より若く見える。中学生くらいの感じね。背も低いし、庇護欲を刺激するためかしら。
攻略対象がヤンデレや性癖拗らせた男ばかりのゲームだから、幼妻みたいな雰囲気を狙ったのかも。ドキドキしながら彼女の挨拶を受けた。
「クリステル・ユニファです。お呼びと伺いました」
声も可憐で可愛い。シルも惚れたでしょう? 期待の眼差しを向けたが……シルヴァンは私と目が合うと嬉しそうに笑う。あれ? ヒロインを見てくれないの? 思ってたのと違うわ。
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