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07.その本能に従うべきだったのよ
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面識のない攻略対象シルヴァンが何を考えてるか、私が想像する必要はないわ。ただ強制力やシナリオが仕事してるだけだと思う。ならば、その適用範囲外まで逃げれば勝ちよ。
具体的に言うなら、他国。それも物語に出てこなかった国がいい。この王都から一番近い国は、物語に出てきたからダメ。その隣の山脈越えが安全かも。
自室で地図を広げ、考え込む。侍女のロザリーは追い出した。だって、彼女は高額給料が全てだ。絶対に金で私を売るに決まってる。ダイアモンド鉱山を手に入れるお父様に勝てる財力はない。ならば裏切る可能性が高い使用人は、遠ざけるのが正解だった。
出来るだけ自然に見えるよう、小さめの荷物を作る。旅行と一緒で服や靴は現地で購入、身の回りの物で必要なのは……宝石類ね。これは換金して軍資金にする。
お父様が管理する金庫のお金は、残念だけど諦めよう。あれを取り出したら、計画がバレる。それから日記、これは必須アイテムだった。なにしろ、未来の予言書と同じ。これからのゲームの展開を、一部抜粋で記してある貴重な情報よ。
暗器の類は身につけられる限界まで、あちこちに隠した。ところで、出先で暗器を隠せる服って手に入るのかしら。侯爵令嬢としての私だと不安だけど、前世の記憶が教えてくれる。
無理ね。ワンピースを一枚、丸めて出来るだけ小さく畳んだ。中央に下着を詰めて、そっとバッグに……入らない。なんてこと! ご令嬢のバッグって、ハンカチと口紅くらいしか入らない。袋状態の物を探し、靴をしまう際のポーチを発見した。
中の靴を放り出し、袋に着替えを詰め込む。重い暗器も可能な限り袋に入れ、パンパンになったポーチを太腿に括り付けた。
「完璧だわ」
鏡の前でくるりと回り、満足して頷く。もう少ししたらお風呂の案内にロザリーが声をかける。それを断り、眠ったことにしよう。夜に脱出し、明け方までに王都から出る。
もう一度地図をよく確認し、必要な部分だけをペーパーナイフで切った。これは持っていこう。胸元にぎゅっと差し込む。幸いにして、ペタンコのお母様に似ず、私の胸は人並みにふくよかだ。自分では手に収まるいいサイズだと思っている。
寄せて上げた谷間に捩じ込んだ地図の残りを、日記が入っていた引き出しにしまった。鍵をかけて、簡単に確認できなくする。もちろん鍵穴を潰す作業も忘れない。
「決行は今夜よ!」
気合を入れた私に、ノックの音が聞こえた。
「お嬢様、お客様がお見えです」
「……お客様? この時間に?」
お父様に居間を追い出されてから、3時間。もう人の家を訪ねる時間ではない。にも関わらず、侍女が取り次ぐならお父様の許可があるのね。
首を傾げながら、私は応じた。階段を降りる途中で、なぜか背筋がぞくりと震える。嫌な感じがするわ。それは本能が教えてくれた警告のような気がして、足を止めた。
「やっぱり、その……具合が悪いのよ。帰っていただいても」
「無理です。もう執事に案内されていますので」
ロザリーの笑みが怖い。すごく気の進まない一歩を踏み出し、私は客間へ向かった。
具体的に言うなら、他国。それも物語に出てこなかった国がいい。この王都から一番近い国は、物語に出てきたからダメ。その隣の山脈越えが安全かも。
自室で地図を広げ、考え込む。侍女のロザリーは追い出した。だって、彼女は高額給料が全てだ。絶対に金で私を売るに決まってる。ダイアモンド鉱山を手に入れるお父様に勝てる財力はない。ならば裏切る可能性が高い使用人は、遠ざけるのが正解だった。
出来るだけ自然に見えるよう、小さめの荷物を作る。旅行と一緒で服や靴は現地で購入、身の回りの物で必要なのは……宝石類ね。これは換金して軍資金にする。
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暗器の類は身につけられる限界まで、あちこちに隠した。ところで、出先で暗器を隠せる服って手に入るのかしら。侯爵令嬢としての私だと不安だけど、前世の記憶が教えてくれる。
無理ね。ワンピースを一枚、丸めて出来るだけ小さく畳んだ。中央に下着を詰めて、そっとバッグに……入らない。なんてこと! ご令嬢のバッグって、ハンカチと口紅くらいしか入らない。袋状態の物を探し、靴をしまう際のポーチを発見した。
中の靴を放り出し、袋に着替えを詰め込む。重い暗器も可能な限り袋に入れ、パンパンになったポーチを太腿に括り付けた。
「完璧だわ」
鏡の前でくるりと回り、満足して頷く。もう少ししたらお風呂の案内にロザリーが声をかける。それを断り、眠ったことにしよう。夜に脱出し、明け方までに王都から出る。
もう一度地図をよく確認し、必要な部分だけをペーパーナイフで切った。これは持っていこう。胸元にぎゅっと差し込む。幸いにして、ペタンコのお母様に似ず、私の胸は人並みにふくよかだ。自分では手に収まるいいサイズだと思っている。
寄せて上げた谷間に捩じ込んだ地図の残りを、日記が入っていた引き出しにしまった。鍵をかけて、簡単に確認できなくする。もちろん鍵穴を潰す作業も忘れない。
「決行は今夜よ!」
気合を入れた私に、ノックの音が聞こえた。
「お嬢様、お客様がお見えです」
「……お客様? この時間に?」
お父様に居間を追い出されてから、3時間。もう人の家を訪ねる時間ではない。にも関わらず、侍女が取り次ぐならお父様の許可があるのね。
首を傾げながら、私は応じた。階段を降りる途中で、なぜか背筋がぞくりと震える。嫌な感じがするわ。それは本能が教えてくれた警告のような気がして、足を止めた。
「やっぱり、その……具合が悪いのよ。帰っていただいても」
「無理です。もう執事に案内されていますので」
ロザリーの笑みが怖い。すごく気の進まない一歩を踏み出し、私は客間へ向かった。
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