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第29章 魔の森の大祭
518.魔力が小さくて分からない
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無理やり起こされて、機嫌が悪いんだからな! 全身で訴えるルシファーへ、ベールは手短に騒動が起きたことを伝えた。
「……事故?」
「事件の可能性もあります。急いで……その……まず服を着替えてください」
言われて自分の姿を確認し、半裸であることを思い出した。イヴに悪戯されて、上着を脱いでいたのだ。そのまま眠ったため、起きた状態で上半身は裸だった。
外へ出る前に気づけばよかったが、ルシファーは頭に来ており衣服にまで考えが及ばなかったのだ。これはマズイ。半裸姿を見て興奮した若いドラゴンの雄に求愛された過去を思い出し、慌ててローブを取り出して羽織った。それからパチンと指を鳴らして、中の衣服も外出用に整えた。
「今日は行事はなかったよな」
「はい、公式行事はございません」
ベールに確認すると、ルシファーはほっとした様子で付け加えた。
「悪いが、リリス達はこのまま寝かせてやってくれ。ドアの前に護衛……そうだな、ヤンを頼む」
「承知いたしました。今回の騒動は私が同行いたします」
「ん? わかった」
珍しいな、と思いつつ階段を降りる。アスタロト同様、ベールも城内での転移に厳しいのだ。先ほどは緊急事態なので見逃されたが、次は叱られる可能性がある。
中庭まで歩いて、魔法陣を展開した。転移先をベールが指定する。発動させたルシファーは、やや不満げな腹の具合に溜め息を吐いた。朝食を食べ損ねた……ぐぅ。小さな腹の音が中庭に残された。
転移した先で、まず収納へ手を入れる。すぐに飴を発見した。一時期、リリスに買い与えていた大きな飴だ。カラフルで、彼女のお気に入りだった。ちょうどいいから、帰りに綺麗な瓶へ詰め替えてお土産にしよう。イヴも欲しがるだろうか。
「陛下」
ぴりっとした緊張を含む声に、ルシファーは気を引き締める。ついでに緩んだ顔も立て直した。
「あ、魔王陛下だ」
「大公様もご一緒だぞ」
慌てて駆け寄る民は、すべて鱗がある。リザードマンやドラゴン系など種類は様々だが、毛皮を纏う種族はいなかった。
大祭に際して、種族や特性に応じて野営地が割り振られる。ここは沼があり、近くの川の支流が流れ込んでいた。水量が少ないため、沼の表面だけ水が入れ替わる。その沼の中で、数匹の竜族が何かを探していた。
「見つかったか?」
「魔王様、それが……魔力が小さくてわからないんです」
「この辺だと思うんですが」
声がけに、泥に塗れたドラゴン達から答えが返る。ベールがちらりと視線を向けるのを感じながら、ルシファーは彼らに泥から出るよう命じた。
「まとめて泥の中を探る」
口々に了承したドラゴンは空に舞い上がる。彼らがいなくなった沼は、魔力感知にもほぼ反応がなかった。いくつか動きのある魔力もあるが、魚やトカゲなどの魔物だろう。
魔力で丁寧に網を作る。細かな目に仕上げ、沼の端から滑り込ませた。そのまま大きさを調整しつつ、向こう岸まで網を走らせる。魔力のある生き物だけ拾うよう調整した網に、魔物分類の魚やワニに似た動物が引っかかった。
その中に、小さなリスが混じっている。
「見つけた!」
リスを引き寄せ、泥だらけの毛皮を浄化魔法で洗浄した。ぐったりと動かないリスの呼吸を確かめ、胸が上下する様子に安堵の息を吐く。柔らかく小柄な体は冷えており、手のひらで包むようにして温めた。
両手の間でじっと動かないリスは目を開ける様子がない。本来は警戒心の強い魔獣なので、心配になった。そこへ両親と思しき魔獣のリスが駆け付ける。すごい勢いで木の枝を繋いで飛び、ルシファーの頭に着地した。
「……事故?」
「事件の可能性もあります。急いで……その……まず服を着替えてください」
言われて自分の姿を確認し、半裸であることを思い出した。イヴに悪戯されて、上着を脱いでいたのだ。そのまま眠ったため、起きた状態で上半身は裸だった。
外へ出る前に気づけばよかったが、ルシファーは頭に来ており衣服にまで考えが及ばなかったのだ。これはマズイ。半裸姿を見て興奮した若いドラゴンの雄に求愛された過去を思い出し、慌ててローブを取り出して羽織った。それからパチンと指を鳴らして、中の衣服も外出用に整えた。
「今日は行事はなかったよな」
「はい、公式行事はございません」
ベールに確認すると、ルシファーはほっとした様子で付け加えた。
「悪いが、リリス達はこのまま寝かせてやってくれ。ドアの前に護衛……そうだな、ヤンを頼む」
「承知いたしました。今回の騒動は私が同行いたします」
「ん? わかった」
珍しいな、と思いつつ階段を降りる。アスタロト同様、ベールも城内での転移に厳しいのだ。先ほどは緊急事態なので見逃されたが、次は叱られる可能性がある。
中庭まで歩いて、魔法陣を展開した。転移先をベールが指定する。発動させたルシファーは、やや不満げな腹の具合に溜め息を吐いた。朝食を食べ損ねた……ぐぅ。小さな腹の音が中庭に残された。
転移した先で、まず収納へ手を入れる。すぐに飴を発見した。一時期、リリスに買い与えていた大きな飴だ。カラフルで、彼女のお気に入りだった。ちょうどいいから、帰りに綺麗な瓶へ詰め替えてお土産にしよう。イヴも欲しがるだろうか。
「陛下」
ぴりっとした緊張を含む声に、ルシファーは気を引き締める。ついでに緩んだ顔も立て直した。
「あ、魔王陛下だ」
「大公様もご一緒だぞ」
慌てて駆け寄る民は、すべて鱗がある。リザードマンやドラゴン系など種類は様々だが、毛皮を纏う種族はいなかった。
大祭に際して、種族や特性に応じて野営地が割り振られる。ここは沼があり、近くの川の支流が流れ込んでいた。水量が少ないため、沼の表面だけ水が入れ替わる。その沼の中で、数匹の竜族が何かを探していた。
「見つかったか?」
「魔王様、それが……魔力が小さくてわからないんです」
「この辺だと思うんですが」
声がけに、泥に塗れたドラゴン達から答えが返る。ベールがちらりと視線を向けるのを感じながら、ルシファーは彼らに泥から出るよう命じた。
「まとめて泥の中を探る」
口々に了承したドラゴンは空に舞い上がる。彼らがいなくなった沼は、魔力感知にもほぼ反応がなかった。いくつか動きのある魔力もあるが、魚やトカゲなどの魔物だろう。
魔力で丁寧に網を作る。細かな目に仕上げ、沼の端から滑り込ませた。そのまま大きさを調整しつつ、向こう岸まで網を走らせる。魔力のある生き物だけ拾うよう調整した網に、魔物分類の魚やワニに似た動物が引っかかった。
その中に、小さなリスが混じっている。
「見つけた!」
リスを引き寄せ、泥だらけの毛皮を浄化魔法で洗浄した。ぐったりと動かないリスの呼吸を確かめ、胸が上下する様子に安堵の息を吐く。柔らかく小柄な体は冷えており、手のひらで包むようにして温めた。
両手の間でじっと動かないリスは目を開ける様子がない。本来は警戒心の強い魔獣なので、心配になった。そこへ両親と思しき魔獣のリスが駆け付ける。すごい勢いで木の枝を繋いで飛び、ルシファーの頭に着地した。
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