【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
515 / 530
第29章 魔の森の大祭

513.娘と息子は見てなかった?

しおりを挟む
 幼い外見で戦うレラジェを侮る者はいなかったが、健闘を讃える理由になる。短い手足は戦闘において不利な要素だった。魔法だけで戦うなら関係ないが、今回のレラジェは剣術との組み合わせだ。

 手足は長いほど有利で、ましてや魔王ルシファーの武器はデスサイズだった。届く範囲が大きい分、叩きつけた剣が裾を切り裂いた功績は誰もが認める。

「立派だったぞ」

「うん! 嬉しい」

 素直に嬉しいと表現するレラジェの髪を乱暴に撫でる。駆け寄ったリリスが飛び付いた。

「凄かったわ、カッコいいじゃない! リリンにも報告しましょうね」

 一時期は姉のように慕い、今は義母の関係にあるリリスは、レラジェを強く抱き締める。おずおずと手を背中に回したレラジェは、ぼそぼそと小声で感謝を述べた。どうやら照れているらしい。

「リリス、イヴ達は?」

「ヤンのところよ」

 預けて来たと告げる妻に、ルシファーは慌てて所在を確認した。イヴはヤンの毛皮に顔を埋めて、狼吸いの真っ最中。両手がわきわきと毛皮を揉んでいる。シャイターンはロアに包まれて眠っていた。

「もしかして……見てなかった?」

 娘も息子も、全然見ていない。ショックを受けたルシファーだが、リリスがくすくす笑いながら教えてくれた。ずっと夢中になって、レラジェとの戦いを見ていたらしい。食い入るように見た後、そっぽを向いたのだとか。

「きっと恥ずかしくなっちゃったのよ」

 嬉しくなったルシファーが笑顔を取り戻したのを確認し、アスタロトが口を挟んだ。

「ルシファー様、そろそろ始めたいのですが」

「あ、ああ。そうだな」

 すっかり忘れていた。そんな顔だが、さすがに言えない。チャレンジ終了の気分だったルシファーは、アスタロトとベルゼビュートを交互に見た。

「ベルゼが先か」

「そうですね」

 アスタロトが相槌を打つので、ベルゼビュートに向き直った。何やら不満がありそうな顔だが、戦うかと聞いたら大きく頷く。彼女が賭けに負けた話を知らないルシファーは、怪訝そうにしながら背の翼を広げた。

「タイミングは任せる」

「では、今回は双剣で」

 気持ちを立て直したベルゼビュートは、一瞬で着替えを済ませた。肌の露出が多いドレスに着替える。精霊族にとって、肌は最高の魔法媒体だった。大気に満ちた魔力を感じ、気配を読んで戦いに利用する。

 それを除いても、ベルゼビュートが露出を好む理由があった。精霊は服を着る習慣がないのだ。己の魔力を形にして服のように纏うことはある。だが絹や綿で作られた衣服を着るのは、ここ一万年ほどの習慣だった。

 他の種族と交流するにあたり、裸は問題があると判断されたのだ。さすがに人前では服を纏うベルゼビュートも、精霊が集う森に戻れば衣服は放り投げていた。まあ、今も大差ないらしい。

 大きくスリットが両側に入ったスカートはタイトで、ぴたりと体に張り付く。首や胸元はぴたりと布で覆っているが、脇は大きく抉れていた。大きな乳がこぼれ落ちそうに見える。

「ベルゼビュート様、頑張って!」

「そのお姿素敵です」

 人々が歓声を上げる。意外なことにベルゼビュートは女性に人気が高い。胸の大きさに目を輝かせるのは若い男ばかりで、ある程度の年代は見慣れて新鮮さを感じなかった。

 大公女やリリスが現れるまでは、最前線で働き戦うベルゼビュートは女性達の英雄だったのだ。それは今も同じだった。大歓声で送り出されるベルゼビュートが、左右に剣を構える。長剣を左手、短剣を右に握った。

「陛下、お覚悟!」

 ばっと飛び出した彼女に、アスタロトが額を押さえた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

外れ婚約者とは言わせない! 〜年下婚約者様はトカゲかと思ったら最強のドラゴンでした〜

秋月真鳥
恋愛
 獣の本性を持つものが重用される獣国ハリカリの公爵家の令嬢、アイラには獣の本性がない。  アイラを出来損ないと周囲は言うが、両親と弟はアイラを愛してくれている。  アイラが8歳のときに、もう一つの公爵家で生まれたマウリとミルヴァの双子の本性はトカゲで、二人を産んだ後母親は体調を崩して寝込んでいた。  トカゲの双子を父親は冷遇し、妾腹の子どもに家を継がせるために追放しようとする。  アイラは両親に頼んで、マウリを婚約者として、ミルヴァと共に自分のお屋敷に連れて帰る。  本性が本当は最強のドラゴンだったマウリとミルヴァ。  二人を元の領地に戻すために、酷い父親をザマァして、後継者の地位を取り戻す物語。 ※毎日更新です! ※一章はざまぁ、二章からほのぼのになります。 ※四章まで書き上げています。 ※小説家になろうサイト様でも投稿しています。 表紙は、ひかげそうし様に描いていただきました。

一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?

たまご
ファンタジー
 アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。  最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。  だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。  女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。  猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!! 「私はスローライフ希望なんですけど……」  この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。  表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーレットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーレットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーレットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーレットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーレットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーレットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーレットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーレットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーレットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

処理中です...