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第29章 魔の森の大祭

510.番のために強くなることを選んだ

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※更新し忘れておりました。ごめんなさい(o´-ω-)o)ペコッ



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 傷つけられた大地の上に立つ魔王へ、アラエルは上空から炎を吐いた。鳳凰は魔法を意図して構築しない。思った通りに魔力を操り、息をするように魔法が使用できた。だが火に関する属性しか持たないため、他の属性の魔法は一切使えない。

 アラエルも鳳凰として炎の魔法には自信があった。だがそれは一族内での実力であり、大公や魔王に効くと思っていない。にも拘らず、周囲をひたすらに焼け野原にし始めた。

 魔王チャレンジの暗黙のルールとして、見物している民に危険がなければ魔王は動かない。初手は受け切り、その後の攻撃が一段落したところで引導を渡すパターンが定着していた。そのため今回も様子見のルシファーは、興味津々だった。

 炎以外操れないアラエルが、魔王チャレンジの予選に通過したのだ。圧倒的な火力を誇るとしても、反対属性の氷や水を操る挑戦者もいただろう。勝ち抜いたのなら、他に手があるはずだ。鳳凰族に新しい能力が増えたのかと、わくわくした。

 過去の戦いで、鳳凰と衝突したのは一万年以上前だ。あの時は温泉街を守るため、火口の使用に一時的な制限を掛けた。怒った鳳凰数羽が襲い掛かったのだ。宥めても話を聞かないため、叩きのめしたが……。あの時も炎を叩きつける攻撃が主流だった。

 焼け野原に立つルシファーの結界は薄く、足元まで焦げたように見える。狭い範囲の結界は温度を遮断しているのだろう。平然と立つ魔王に向け、アラエルは予想外の動きを始めた。己の羽から数本引き抜き、地上へ向けて放つ。突き刺さった羽根がルシファーを囲う形で不格好な五角形を作り出した。

「僕が教えた、あれかな?」

 ルキフェルは首を傾げながら呟く。知っているのか問うたベールへ、うーんと唸りながら話し始めた。

「いや。こないだ魔法陣制作中に相談されて、いろいろ教えたんだよね。魔法陣を使ってみたいのかな? と思って専門的な話に五時間ほど付き合ってもらったんだ」

「応用した可能性があるのですか」

 アラエルも大切な番を守るため、己の戦闘能力を上げようとしている。そう考えたので教えたが、魔王チャレンジで腕試しすると思わなかった。からりと笑ってルキフェルは付け加えた。

「いいんじゃないかな。威力が分からない魔法陣だし、変な場所で使うと事故が起きたら困るし。その点、ルシファーなら受け止めて消滅させるくらい出来るでしょ」

「嫌な予感がします」

 ベールは溜め息をついて、ベルゼビュートを手招きした。民への結界を念のため強くしておくよう要請し、自らも魔王城側へ結界を張る。精霊や神獣は結界の能力に優れている。この場で幻獣霊王ベールと精霊女王ベルゼビュートに勝てる結界を張れるのは、魔王ルシファーだけだった。

 そのルシファーが当事者として戦っている以上、周囲を守るのは大公の役目である。ルキフェルが立てたフラグが回収されても、大きな被害が出なければいい。そう考えたベールの動きに、将軍サタナキアやアスタロトも同調した。

 それぞれに守りを固める中、アラエルは注目された中心でいきなり愛を叫んだ。

「ピヨ! 愛してるぞ」

 まるで魔王に挑戦して倒される直前の勇者である。どこかで見たような……記憶を探る年長者もいるくらいだ。よくある台詞だが、使い古したと感じるほど一般的な告白だった。なぜここで告白? 首を傾げる魔族の民をよそに、ピヨは興奮した様子で走り回る。

「アラエル、頑張れ」

 応援するくらいには、アラエルを認めているようだ。以前なら親しい魔王を応援しただろう。ヤンは結界の内側で、そっと目元を押さえた。

「ピヨも成長しているのですな」

「どうかしら。あれ、意味が通じてないと思うわ」

 中身はまだ幼児と同じ。ただ名を呼ばれたので興奮しているようにも見えた。リリスはぐさっとヤンに釘を刺し、空を見上げる。青空だったはずなのに、灰色の雲がいくつか現れていた。
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