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第29章 魔の森の大祭
506.賭けは不成立になりそうですね
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大公女達は、魔王チャレンジというより模擬戦を希望した。つまり彼女達は四人で戦い、それぞれの技を見せ合いたいだけ。勝敗は最初から度外視していた。
これは困りましたね。アスタロトは考え込む。というのも、バアルは賭けに関してきっちりしていた。ここにきてのルール変更で、挑戦者の数が減ってしまう。その場合、賭けがチャラになるのでは? と心配になった。以前もそんな前例があるのだ。
大公女をカウントしなければ、五人になってしまう。まさか五人に賭けた人はいないでしょうが、そもそも賭けの不成立で終わりなら……まあ、それでもいでしょう。エルにもいい勉強になりました。
自分の中で決着がついたため、アスタロトはあっさりとルーサルカの肩を持つ。
「ルカが望むのであれば、構わないと思いますよ」
「アスタロト、せめて大公女が望むのであれば、と言うべきだろ」
苦笑いしながらルシファーは許可を出した。魔王チャレンジなら一対一が基本だ。戦いの最中に割り込まれても問題ないが、周囲を巻き込む可能性が高まる。故に、魔王ルシファーのためではなく周囲のために決まったルールだった。
今回は魔王チャレンジの権利を放棄した戦いなので、言うなれば実力試し扱いになる。四人一緒なら、それぞれに属性を利用できるので演し物としては面白い。許可に目を輝かせた四人は、感謝を述べた。
「私もやりたい」
「リリスはイヴとシャイターンの面倒を見て欲しいんだが」
「うーん、それなら諦める」
再チャレンジで手を挙げたが、あっさり却下された。その理由で納得するのもリリスらしい。イヴと手を繋いでヤンの上で横向きに座った。ロアもシャイターンを乗せて駆けつけたので、まとめて結界で包む。
「イヴ、結界に触れたり消したらダメよ。危ないんだから」
「うん、やらない」
魔力の制御を覚えたイヴは、ご機嫌で父ルシファーへ手を振った。
「パッパ、頑張れ」
「頑張る!」
必要以上に気合が入ったルシファーは、空中を睨んで考えた後、デスサイズを召喚した。さっと爪で左手のひらを切り、流れた血を媒体にする。現れた大きな三日月の刃をくるりと回した。
「よし、いつでもいいぞ」
「では参ります」
ぐっと拳を握ったレライエが先頭に立つ。斜め後ろに広がる形でシトリー、ルーサルカが並んだ。菱形になる陣形の一番後ろはルーシアが務める。
ルーサルカがしゃがんで大地に手をついた。魔法陣なしで発動するつもりらしい。魔法陣は魔力の消費が少なく安定するが、逆に手の内を読まれやすい。生活魔法なら問題ないが、上位者との戦いでは不利だった。
魔法陣の開発に長けた魔王相手なら尚更だ。芝の地面に魔力が走り、ルシファーの足元で爆発した。結界で防ぐことも可能だが、次の手が気になる。ルシファーはデスサイズの柄を地面に突き立て、ふわりと浮いた。
狙ったようにシトリーの刃が走る。風を扱う彼女の魔法が衣の端を掠めた。結界に阻まれたが、切り裂く距離を通過する。見送ったが、すぐに口元を緩めた。ルシファーは思わず感嘆の声を漏らす。
「これはっ、見事」
浮いたルシファーの足元に突然炎が燃え上がり、背後から避けた風の刃が戻ってくる。気を取られたところで、ルーシアが水を生み出した。
派手な水蒸気爆発で、ルシファーの視界が塞がれる。にやりと笑って、彼女達の成長を楽しむ。これは本当に楽しめそうだ。個々の能力を過信する傾向が強い魔族には珍しく、彼女達は協力することで能力を高め合う。心躍る戦いに敬意を表し、ルシファーは一対の翼を広げた。
これは困りましたね。アスタロトは考え込む。というのも、バアルは賭けに関してきっちりしていた。ここにきてのルール変更で、挑戦者の数が減ってしまう。その場合、賭けがチャラになるのでは? と心配になった。以前もそんな前例があるのだ。
大公女をカウントしなければ、五人になってしまう。まさか五人に賭けた人はいないでしょうが、そもそも賭けの不成立で終わりなら……まあ、それでもいでしょう。エルにもいい勉強になりました。
自分の中で決着がついたため、アスタロトはあっさりとルーサルカの肩を持つ。
「ルカが望むのであれば、構わないと思いますよ」
「アスタロト、せめて大公女が望むのであれば、と言うべきだろ」
苦笑いしながらルシファーは許可を出した。魔王チャレンジなら一対一が基本だ。戦いの最中に割り込まれても問題ないが、周囲を巻き込む可能性が高まる。故に、魔王ルシファーのためではなく周囲のために決まったルールだった。
今回は魔王チャレンジの権利を放棄した戦いなので、言うなれば実力試し扱いになる。四人一緒なら、それぞれに属性を利用できるので演し物としては面白い。許可に目を輝かせた四人は、感謝を述べた。
「私もやりたい」
「リリスはイヴとシャイターンの面倒を見て欲しいんだが」
「うーん、それなら諦める」
再チャレンジで手を挙げたが、あっさり却下された。その理由で納得するのもリリスらしい。イヴと手を繋いでヤンの上で横向きに座った。ロアもシャイターンを乗せて駆けつけたので、まとめて結界で包む。
「イヴ、結界に触れたり消したらダメよ。危ないんだから」
「うん、やらない」
魔力の制御を覚えたイヴは、ご機嫌で父ルシファーへ手を振った。
「パッパ、頑張れ」
「頑張る!」
必要以上に気合が入ったルシファーは、空中を睨んで考えた後、デスサイズを召喚した。さっと爪で左手のひらを切り、流れた血を媒体にする。現れた大きな三日月の刃をくるりと回した。
「よし、いつでもいいぞ」
「では参ります」
ぐっと拳を握ったレライエが先頭に立つ。斜め後ろに広がる形でシトリー、ルーサルカが並んだ。菱形になる陣形の一番後ろはルーシアが務める。
ルーサルカがしゃがんで大地に手をついた。魔法陣なしで発動するつもりらしい。魔法陣は魔力の消費が少なく安定するが、逆に手の内を読まれやすい。生活魔法なら問題ないが、上位者との戦いでは不利だった。
魔法陣の開発に長けた魔王相手なら尚更だ。芝の地面に魔力が走り、ルシファーの足元で爆発した。結界で防ぐことも可能だが、次の手が気になる。ルシファーはデスサイズの柄を地面に突き立て、ふわりと浮いた。
狙ったようにシトリーの刃が走る。風を扱う彼女の魔法が衣の端を掠めた。結界に阻まれたが、切り裂く距離を通過する。見送ったが、すぐに口元を緩めた。ルシファーは思わず感嘆の声を漏らす。
「これはっ、見事」
浮いたルシファーの足元に突然炎が燃え上がり、背後から避けた風の刃が戻ってくる。気を取られたところで、ルーシアが水を生み出した。
派手な水蒸気爆発で、ルシファーの視界が塞がれる。にやりと笑って、彼女達の成長を楽しむ。これは本当に楽しめそうだ。個々の能力を過信する傾向が強い魔族には珍しく、彼女達は協力することで能力を高め合う。心躍る戦いに敬意を表し、ルシファーは一対の翼を広げた。
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