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第28章 子ども達の自立?
491.外出の謎は深まるが友人が出来た
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機嫌の良さそうな息子を腕に抱きながら、ルシファーは今朝の騒動を思い出していた。目が覚めたらシャイターンがいない。家族全員でベッドに入ったはずなのに、息子だけ。
出かけた様子はなく、部屋中探してもいない。焦ったのはこの頃からだ。だが拐われたとは考えなかった。最強の魔王と一緒に眠る息子を、察知されずに腕の中から奪える存在などいないからだ。
魔王城内、それもこの部屋から見つかるだろう。そう思い、膨大な魔力を持つシャイターンの位置を探るが、魔力検知に引っかからない。慌てたルシファーに、侍従ベリアルが報告に訪れた。
曰く、ヤンからの伝言だ。「仲間がシャイターン様を発見したので迎えに行く」と。今度はヤンの魔力を終点に探れば、ちょうど彼が遠吠えに応えた。魔力を込めた会話は、シャイターンを発見したことを示す。
大急ぎで追いかけようとしたが、イヴとリリスが同行したいと騒ぐ。置いていくわけにいかず、大急ぎで着替えさせ連れ出した。さすがに寝着で妻や娘を外に連れ出せない。この辺は常識人を装うルシファーだ。過去に粛清中のアスタロトの元へ、真っ裸で現れた魔王と同一人物とは思えない。
無事に合流してみれば、フェンリルの若い雌に跨るシャイターンは、元気そのもの。頬に涙の跡があるものの、人前で指摘する不粋はしない。ルシファーは息子の涙を、魔力でそっと乾かした。
合流出来たからいいが、なぜシャイターンの魔力を感知出来ないのか。そこの検証は必要だろう。今後も何が起きるか分からないのだ。行方不明になるたび、探せない状況は改善しておきたかった。
朝食を食べながら考えるが、理由に思い至らない。こうなれば、大公達の知恵を借りるのが無難だろう。この辺の頼る切替が早いのは、過去の経験からだった。
「パパ、あーんいい?」
あーんをしてもいいか。首を傾げて待つシャイターンは、肉の塊を握っている。彼の視線の先は、今回発見し通報してくれた雌のフェンリルだった。魔獣は基本的に個体名がないことが多いので、若い雌としか判別できない。
「ああ、ちゃんとお礼を言うんだぞ」
「うん」
頷いた後、重い肉をずるりとフェンリルの前に転がした。
「あげる」
そこでお礼を忘れたと気づき、シャイターンは「ありがと」も付け加えた。フェンリルは嬉しそうに喉を鳴らし、生肉を齧った。ヤンが誇らしげに胸を張る。それもそのはず、この雌フェンリルはヤンのひ孫だという。
「本当にセーレの一族は、ずっとオレに寄り添ってくれる。その忠義が有難い」
「もったいないお言葉。お役に立てたのであれば、ひ孫も誉れに思うことでしょう」
まだ人語を話さない雌フェンリルは、唸る獣の響きで同意した。すでに言葉を聞き取っていることから、すぐに話せるようになるはずだ。シャイターンはにこにこと灰色狼の頭を撫でる。そこでいいことを思いついた。
「シャイターンの友人兼護衛として、彼女を一緒に保育園へ通わせるのはどうだ?」
「……よろしいのですか」
驚いた顔をするヤンに、反対する理由はない。敬愛する魔王ルシファーの子息に、ひ孫が仕える。それは光栄なことだった。一族が代々誇りとして受け継ぐほどの、栄誉だった。
「他にヤンや彼女が喜びそうな褒美が思いつかない。そうだな、何か可愛い名前もつけてやろう」
シャイターンと過ごすなら、呼びやすい名前がいい。うーんと悩んで、出来るだけ短く女性らしい響きを探した。狼だから兎などの愛玩系の名前はまずいぞ。唸るルシファーの隣で、シャイターンは勝手に名付けを行った。
「いっちょ! ロア!」
嬉しそうに雌狼が返事をしたことで、名前はロアに決定された。
出かけた様子はなく、部屋中探してもいない。焦ったのはこの頃からだ。だが拐われたとは考えなかった。最強の魔王と一緒に眠る息子を、察知されずに腕の中から奪える存在などいないからだ。
魔王城内、それもこの部屋から見つかるだろう。そう思い、膨大な魔力を持つシャイターンの位置を探るが、魔力検知に引っかからない。慌てたルシファーに、侍従ベリアルが報告に訪れた。
曰く、ヤンからの伝言だ。「仲間がシャイターン様を発見したので迎えに行く」と。今度はヤンの魔力を終点に探れば、ちょうど彼が遠吠えに応えた。魔力を込めた会話は、シャイターンを発見したことを示す。
大急ぎで追いかけようとしたが、イヴとリリスが同行したいと騒ぐ。置いていくわけにいかず、大急ぎで着替えさせ連れ出した。さすがに寝着で妻や娘を外に連れ出せない。この辺は常識人を装うルシファーだ。過去に粛清中のアスタロトの元へ、真っ裸で現れた魔王と同一人物とは思えない。
無事に合流してみれば、フェンリルの若い雌に跨るシャイターンは、元気そのもの。頬に涙の跡があるものの、人前で指摘する不粋はしない。ルシファーは息子の涙を、魔力でそっと乾かした。
合流出来たからいいが、なぜシャイターンの魔力を感知出来ないのか。そこの検証は必要だろう。今後も何が起きるか分からないのだ。行方不明になるたび、探せない状況は改善しておきたかった。
朝食を食べながら考えるが、理由に思い至らない。こうなれば、大公達の知恵を借りるのが無難だろう。この辺の頼る切替が早いのは、過去の経験からだった。
「パパ、あーんいい?」
あーんをしてもいいか。首を傾げて待つシャイターンは、肉の塊を握っている。彼の視線の先は、今回発見し通報してくれた雌のフェンリルだった。魔獣は基本的に個体名がないことが多いので、若い雌としか判別できない。
「ああ、ちゃんとお礼を言うんだぞ」
「うん」
頷いた後、重い肉をずるりとフェンリルの前に転がした。
「あげる」
そこでお礼を忘れたと気づき、シャイターンは「ありがと」も付け加えた。フェンリルは嬉しそうに喉を鳴らし、生肉を齧った。ヤンが誇らしげに胸を張る。それもそのはず、この雌フェンリルはヤンのひ孫だという。
「本当にセーレの一族は、ずっとオレに寄り添ってくれる。その忠義が有難い」
「もったいないお言葉。お役に立てたのであれば、ひ孫も誉れに思うことでしょう」
まだ人語を話さない雌フェンリルは、唸る獣の響きで同意した。すでに言葉を聞き取っていることから、すぐに話せるようになるはずだ。シャイターンはにこにこと灰色狼の頭を撫でる。そこでいいことを思いついた。
「シャイターンの友人兼護衛として、彼女を一緒に保育園へ通わせるのはどうだ?」
「……よろしいのですか」
驚いた顔をするヤンに、反対する理由はない。敬愛する魔王ルシファーの子息に、ひ孫が仕える。それは光栄なことだった。一族が代々誇りとして受け継ぐほどの、栄誉だった。
「他にヤンや彼女が喜びそうな褒美が思いつかない。そうだな、何か可愛い名前もつけてやろう」
シャイターンと過ごすなら、呼びやすい名前がいい。うーんと悩んで、出来るだけ短く女性らしい響きを探した。狼だから兎などの愛玩系の名前はまずいぞ。唸るルシファーの隣で、シャイターンは勝手に名付けを行った。
「いっちょ! ロア!」
嬉しそうに雌狼が返事をしたことで、名前はロアに決定された。
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