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第27章 春の芽吹き
483.良かれと思い暴走したようです
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海の外へ転移した一行は、海辺の砂の上で二つに分かれていた。アスタロトとルーサルカ、そして魔王夫妻と精霊女王である。手を伸ばしても届かない距離で、リリスは無邪気に話しかけた。
「ルカ、大丈夫? 体調悪いのかしら」
「いいえ、平気です。ちょっと驚いてしまって」
その会話の間に、ルシファーは話を逸らそうと必死だった。先ほど聞かれた内容から、アスタロトの意識を逸らす必要がある。
「他の五人は見つかったのか? 助けに行かないと」
「でしたら、先ほどの海藻の森近くに囚われていますので、どうぞ」
「あ、ああ」
一緒に行こうと誘ったが、リリスは首を横に振った。囮になったルーサルカを心配する妻は、ここに残るという。人質にされそうで怖いが、ベルゼビュートによく頼んでおいた。
「頼んだぞ」
「警護は構いませんわ、でも」
アスタロト相手にどこまで逃げられるか。不安そうにベルゼビュートが溜め息を吐く。迷いながらも、民の救出を優先したルシファーが転移で消えた。
「ええ?! それじゃルカを探していたの?」
「そうみたいです」
ルーサルカを探して、尻尾の立派な獣人を誘い出していた。何ともコメントに困る話が溢れでる。その間に、ルシファーは無事五人を連れて戻った。
「ちゃんと空気を確保してあって、問題なさそうだったな」
ドーム型のスペースがあり、その中に五人は暮らしていた。地上に戻る方法がわからないものの、食料や水は不自由しなかったらしい。
「ルカを狙うなど……」
眉を寄せるアスタロトが「一万年早いです」と吐き捨てる。ルシファーも、この気持ちは分かると頷いた。もし万が一、リリスやイヴに対して惚れた男が誘拐事件を起こしたら、八つ裂きにしても足りないだろう。
「分かる」
一万年どころか十万年早い。現時点での寿命を越える年月を口にし、ルシファーも渋い表情をした。
「結局、なんだったんですの?」
ベルゼビュートは素直に尋ねた。これほどの騒動を起こし、魔王が救出に乗り出す事態になった。しかもルシファーそっくりの純白の容疑者の存在もあり、謎が謎を呼んだ事件だった。首を傾げるのも当然だ。
「簡単に言えば、紫珊瑚のカルンの親族の暴走です」
簡単すぎるほど簡単にまとめられ、ベルゼビュートはこてりと首を傾ける。まったく意味が通じないわ。
アスタロトが淡々と説明を始めた。
「紫珊瑚のカルンは現在、眠りについています。その眠りは深く、数十年は目覚めないでしょうね。以前にルカに求愛しましたが、大人になったらと彼女は曖昧な答えで濁しました。その話を知る親族……つまり珊瑚達が動いたのです」
地下水脈を遡り、影響力を増すのに十年近くかかった。その影響の枝を利用し、尻尾自慢の獣人を呼び寄せる。特殊な匂いを利用し、催眠状態にして操ることが可能だった。
水脈の上まで呼び寄せた獣人を、手元に引き寄せる。ところが地上に手助けする者がなく、また確認する手立てがなかったので、手当たり次第誘拐したらしい。
「尻尾自慢を呼び寄せたのは、カルンの影響ね」
ベルゼビュートは得心が行った様子で呟いた。カルンはルーサルカの尻尾がいかに見事だったか、素晴らしい女性だと話したのだろう。正確には眠るカルンから読み取られた情報なのだが、ベルゼビュートが知る由もない。
「ルーサルカが魔王城で暮らすことを知らなかったなら、まあ考えられる事件か」
間違いが続いて、これで終わりにしようと思っていたところで、本物が囮になって引っかかった。
「運がいいのか悪いのか。ところで、先に誘拐した五人はどうする気だったんだ?」
ルシファーはもっともな疑問を口にした。
「ルカ、大丈夫? 体調悪いのかしら」
「いいえ、平気です。ちょっと驚いてしまって」
その会話の間に、ルシファーは話を逸らそうと必死だった。先ほど聞かれた内容から、アスタロトの意識を逸らす必要がある。
「他の五人は見つかったのか? 助けに行かないと」
「でしたら、先ほどの海藻の森近くに囚われていますので、どうぞ」
「あ、ああ」
一緒に行こうと誘ったが、リリスは首を横に振った。囮になったルーサルカを心配する妻は、ここに残るという。人質にされそうで怖いが、ベルゼビュートによく頼んでおいた。
「頼んだぞ」
「警護は構いませんわ、でも」
アスタロト相手にどこまで逃げられるか。不安そうにベルゼビュートが溜め息を吐く。迷いながらも、民の救出を優先したルシファーが転移で消えた。
「ええ?! それじゃルカを探していたの?」
「そうみたいです」
ルーサルカを探して、尻尾の立派な獣人を誘い出していた。何ともコメントに困る話が溢れでる。その間に、ルシファーは無事五人を連れて戻った。
「ちゃんと空気を確保してあって、問題なさそうだったな」
ドーム型のスペースがあり、その中に五人は暮らしていた。地上に戻る方法がわからないものの、食料や水は不自由しなかったらしい。
「ルカを狙うなど……」
眉を寄せるアスタロトが「一万年早いです」と吐き捨てる。ルシファーも、この気持ちは分かると頷いた。もし万が一、リリスやイヴに対して惚れた男が誘拐事件を起こしたら、八つ裂きにしても足りないだろう。
「分かる」
一万年どころか十万年早い。現時点での寿命を越える年月を口にし、ルシファーも渋い表情をした。
「結局、なんだったんですの?」
ベルゼビュートは素直に尋ねた。これほどの騒動を起こし、魔王が救出に乗り出す事態になった。しかもルシファーそっくりの純白の容疑者の存在もあり、謎が謎を呼んだ事件だった。首を傾げるのも当然だ。
「簡単に言えば、紫珊瑚のカルンの親族の暴走です」
簡単すぎるほど簡単にまとめられ、ベルゼビュートはこてりと首を傾ける。まったく意味が通じないわ。
アスタロトが淡々と説明を始めた。
「紫珊瑚のカルンは現在、眠りについています。その眠りは深く、数十年は目覚めないでしょうね。以前にルカに求愛しましたが、大人になったらと彼女は曖昧な答えで濁しました。その話を知る親族……つまり珊瑚達が動いたのです」
地下水脈を遡り、影響力を増すのに十年近くかかった。その影響の枝を利用し、尻尾自慢の獣人を呼び寄せる。特殊な匂いを利用し、催眠状態にして操ることが可能だった。
水脈の上まで呼び寄せた獣人を、手元に引き寄せる。ところが地上に手助けする者がなく、また確認する手立てがなかったので、手当たり次第誘拐したらしい。
「尻尾自慢を呼び寄せたのは、カルンの影響ね」
ベルゼビュートは得心が行った様子で呟いた。カルンはルーサルカの尻尾がいかに見事だったか、素晴らしい女性だと話したのだろう。正確には眠るカルンから読み取られた情報なのだが、ベルゼビュートが知る由もない。
「ルーサルカが魔王城で暮らすことを知らなかったなら、まあ考えられる事件か」
間違いが続いて、これで終わりにしようと思っていたところで、本物が囮になって引っかかった。
「運がいいのか悪いのか。ところで、先に誘拐した五人はどうする気だったんだ?」
ルシファーはもっともな疑問を口にした。
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