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第26章 魔の森の目覚め
465.じゃあ、パッパが悪いんだね
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イヴはお姉ちゃんだ。自覚しているし、誰かにそう言われると嬉しい。だからシャイターンが憎いなんて思わない。
「どうしてお姉ちゃんはいつもそうなの!」
「何が気に入らないのか、きちんと話してよ」
目の前で喧嘩する姉妹を見ながら、こてりと首を傾げた。青緑の髪を乱して、アイカが怒鳴る。父ジンと同じ風の精霊族であるアイカは、無意識に風を巻き起こした。
保育園の玄関に飾られた絵が大きく揺れる。ぶらぶら揺れる絵は、すぐに木の枝に固定された。ドライアドのミュルミュール園長だ。慣れた様子で二人の間に入った。
妹の突然の激昂に、迎えに来た姉ライラは困ったような顔で立ち尽くす。青い髪と瞳をもつライラは、母ルーシアによく似ていた。
「アイカちゃん、お母さんはまたね。今日はライラちゃんと帰って頂戴」
すべてを分かったように取り成すミュルミュールは、木の根や枝を通じて、保育園内の様子をしっかり把握していた。
母親が迎えに来ると思っていたのに、姉だったのでがっかりしただけ。姉ライラが気に入らないのではなく、普段から大公女として忙しく働く母に来て欲しかったのだろう。
「……うん。ごめんね、お姉ちゃん」
「そういうことね。気にしてないからいいわよ」
すぐに自分が悪いと認めて謝ったアイカ、その謝罪を受け入れるライラ。どちらもイヴの目には不思議に映った。
「なんで、アイカちゃんは怒ったの? ライラちゃんはどうして許すの?」
はらはら、おろおろ見守っていたガミジンに問いかける。丁寧に説明され、納得したが……今度は別の疑問が湧いた。
「ねえ、ガミジン先生。どうしてアイカちゃんは、お母さんが来ると思っていたの?」
家庭の事情は分からない。そう返され、イヴは考え込んだ。アイカちゃんのお母さんはルーシア、難しいお仕事してるよね。普段はお迎えに来れなくて、風の精霊族のお父さんかライラちゃんが来る。いつもと同じ今日なのに、どうして違うと思ったんだろう。
湧き出る疑問は尽きることがなくて、もう一度ガミジンに尋ねようとしたが、彼は生憎忙しかった。別の子に捕まって、大泣きされている。
「イヴ、迎えに来たぞ」
純白の長い髪を揺らし、ルシファーが現れる。紺色を着ているから、肌もすごく白く見えた。駆け寄って抱きつき、パッパなら何でも知っているはず、と目を輝かせる。
「パッパ。どうしてアイカちゃんは、お母さんが迎えに来ると思ったの?」
「……すまん、何の話か最初から説明してくれ」
イヴは必死に順番を思い出しながら話す。すごく頭を使って、ちょっと疲れた。もう答えが分からなくてもいいから、眠りたい。腕に抱っこされた帰り道にそう思ったが……きちんとした答えがもらえた。
「正確な答えじゃないぞ。これは推測……えっと、オレが想像した結果だが」
ルシファーはイヴの黒髪を撫でながら、ぽつりぽつりと言葉を並べる。
「もし前の夜に、明日は仕事が早く終わるかもしれない……とルーシアが言ったとしよう。迎えに来れるとは言わなかった。でも早いなら来てくれるかも? アイカがそう思うのは、イヴも分かるだろう?」
順番に頭の中で考えてみる。もしママが明日は暇だと言ったら、来てくれるかもと期待する。そこは頷いた。
「でもルーシアはそこまで早く帰れなかった。迎えが遅くなるから、ライラに頼む。悪気はないし、アイカがそんな期待をしてると誰も知らない」
ここも理解できた。アイカちゃんのお母さんが来れないのも、迎えに来たライラちゃんも、期待したアイカちゃん悪くない。じゃぁ…………。
「パッパが悪いんだね」
「?? どうしてそうなった?」
上司の魔王のせいで、ルーシアが忙しい。だからルシファーが悪い。子どもならではの理論に、ルシファーは反論できなかった。
「対策を検討します」
アイカちゃん、お母さんに迎えに来てもらえるといいな。イヴは純粋にそう思い、頑張ってねと笑った。
「どうしてお姉ちゃんはいつもそうなの!」
「何が気に入らないのか、きちんと話してよ」
目の前で喧嘩する姉妹を見ながら、こてりと首を傾げた。青緑の髪を乱して、アイカが怒鳴る。父ジンと同じ風の精霊族であるアイカは、無意識に風を巻き起こした。
保育園の玄関に飾られた絵が大きく揺れる。ぶらぶら揺れる絵は、すぐに木の枝に固定された。ドライアドのミュルミュール園長だ。慣れた様子で二人の間に入った。
妹の突然の激昂に、迎えに来た姉ライラは困ったような顔で立ち尽くす。青い髪と瞳をもつライラは、母ルーシアによく似ていた。
「アイカちゃん、お母さんはまたね。今日はライラちゃんと帰って頂戴」
すべてを分かったように取り成すミュルミュールは、木の根や枝を通じて、保育園内の様子をしっかり把握していた。
母親が迎えに来ると思っていたのに、姉だったのでがっかりしただけ。姉ライラが気に入らないのではなく、普段から大公女として忙しく働く母に来て欲しかったのだろう。
「……うん。ごめんね、お姉ちゃん」
「そういうことね。気にしてないからいいわよ」
すぐに自分が悪いと認めて謝ったアイカ、その謝罪を受け入れるライラ。どちらもイヴの目には不思議に映った。
「なんで、アイカちゃんは怒ったの? ライラちゃんはどうして許すの?」
はらはら、おろおろ見守っていたガミジンに問いかける。丁寧に説明され、納得したが……今度は別の疑問が湧いた。
「ねえ、ガミジン先生。どうしてアイカちゃんは、お母さんが来ると思っていたの?」
家庭の事情は分からない。そう返され、イヴは考え込んだ。アイカちゃんのお母さんはルーシア、難しいお仕事してるよね。普段はお迎えに来れなくて、風の精霊族のお父さんかライラちゃんが来る。いつもと同じ今日なのに、どうして違うと思ったんだろう。
湧き出る疑問は尽きることがなくて、もう一度ガミジンに尋ねようとしたが、彼は生憎忙しかった。別の子に捕まって、大泣きされている。
「イヴ、迎えに来たぞ」
純白の長い髪を揺らし、ルシファーが現れる。紺色を着ているから、肌もすごく白く見えた。駆け寄って抱きつき、パッパなら何でも知っているはず、と目を輝かせる。
「パッパ。どうしてアイカちゃんは、お母さんが迎えに来ると思ったの?」
「……すまん、何の話か最初から説明してくれ」
イヴは必死に順番を思い出しながら話す。すごく頭を使って、ちょっと疲れた。もう答えが分からなくてもいいから、眠りたい。腕に抱っこされた帰り道にそう思ったが……きちんとした答えがもらえた。
「正確な答えじゃないぞ。これは推測……えっと、オレが想像した結果だが」
ルシファーはイヴの黒髪を撫でながら、ぽつりぽつりと言葉を並べる。
「もし前の夜に、明日は仕事が早く終わるかもしれない……とルーシアが言ったとしよう。迎えに来れるとは言わなかった。でも早いなら来てくれるかも? アイカがそう思うのは、イヴも分かるだろう?」
順番に頭の中で考えてみる。もしママが明日は暇だと言ったら、来てくれるかもと期待する。そこは頷いた。
「でもルーシアはそこまで早く帰れなかった。迎えが遅くなるから、ライラに頼む。悪気はないし、アイカがそんな期待をしてると誰も知らない」
ここも理解できた。アイカちゃんのお母さんが来れないのも、迎えに来たライラちゃんも、期待したアイカちゃん悪くない。じゃぁ…………。
「パッパが悪いんだね」
「?? どうしてそうなった?」
上司の魔王のせいで、ルーシアが忙しい。だからルシファーが悪い。子どもならではの理論に、ルシファーは反論できなかった。
「対策を検討します」
アイカちゃん、お母さんに迎えに来てもらえるといいな。イヴは純粋にそう思い、頑張ってねと笑った。
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