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第26章 魔の森の目覚め
453.災害復旧で二次災害?
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明るい日差しが濡れた大地を乾かす。森の木々は雨に潤った大地をしっかりと抱きしめた。
「地滑りは一箇所、崩れた崖も海沿いの二箇所のみです。浸水地区がここからここまで広範囲ですね」
魔王軍が各地から集めた情報を纏め直し、地図へ落とし込むアスタロトの説明に頷く。地滑り箇所は事前の避難が功を奏し、死傷者ゼロだった。海沿いの崖は、ベルゼビュートの報告で救助も治療も終わっている。
「浸水が随分と広範囲だな」
「川が溢れちゃったのね」
執務室で朝食を食べたリリスは、昼食の準備が始まったテーブルの前で、こてりと首を傾げる。空中に掲げられた二つの大陸の地図は、最近になって海も書き加えられた。立体的な地図を見ながら、リリスが指で示す。
「この辺の地下は空洞で、海へ繋がっているの。水を下へ落としたらどうかしら」
中止になった視察の予定地だ。この場所は固い岩盤が覆っており、穴を開けるのは一苦労だった。少し考えて、ルシファーが妻を振り返る。案が採用されるのを待つリリスは、にこにこと笑顔を振りまいた。
「ちょっと穴を開けてくる」
「ええ」
「…………何でもない」
しょんぼりと肩を落とすルシファーの様子に、笑いを堪えるアスタロト。二人を見比べたリリスは、抱いたシャイターンの小さな手を掴み、左右に振った。
「忘れてたわ、いってらっしゃい」
シャイターンにバイバイさせる妻に、ルシファーは「泣きそう」と呟いて消えた。
「城内での転移はやっぱり禁止しましょうか」
以前は禁止していたが、緊急時用に魔王ルシファーは転移が可能になっている。それを普段から多用されると困る。ぼやいたアスタロトに、リリスは素直に尋ねた。
「アシュタ、どうしてルシファーは泣いちゃうの?」
「一緒に来て欲しかったのですよ。気づいていて無視したのでは?」
幼い息子がいるから断ったのかと思った。そんな言葉に、リリスは目を見開いた。大きな金色の瞳がこぼれ落ちそうだ。
「えええ?! 言ってくれたらいいのに」
その大声に目を覚まして、のそりと翡翠竜が動き出す。短い手でごしごしと顔を洗い、はふっと溜め息を吐いた。
「僕なら言われなくてもついていきます」
ストーカーに近い発言だが、リリスは嬉しそうに頷いた。
「そうよね。追いかけたらいいのよ」
シャイターンを連れたまま、外へ飛び出す。慌てたアスタロトが追いかけるが、すでに彼女の姿は廊下になかった。転移してしまったらしい。魔王の魔力と繋がるほど親和性が高いリリスは、当たり前のように転移魔法を使ったのだ。
「た、大変です! 魔王妃リリス様の追跡を!」
「え? 何があったの!」
報告に訪れたルキフェルは執務室を見回し、二人の姿がないことに焦る。アスタロトが声を張り上げた状況も手伝い、緊急事態だと階段を舞い降りた。広げた翼に、付いてきたアムドゥスキアスが激突する。
「「痛っ!」」
同時に叫んだ二人だが、すぐに中庭へ出て転移した。あの二人が追いかけたなら、問題ないでしょう。がくりと崩れるように椅子に座ったアスタロトは、安堵の息を吐く。
リリスは見事な方向音痴だ。もしルシファーの魔力を追わず、地図を頼りに転移していたら……ぞっとする。どこへ落ちるか想像できなかった。彼女に何かあれば、ルシファーが壊れる。
「ルキフェル、頼みましたよ」
ついでにアムドゥスキアスも……。おまけ扱いされた翡翠竜だが、彼は見知らぬ景色に困惑していた。
「ここ……どこです?」
波が高い荒れた海の上で、翡翠竜は首を傾げる。その周囲に、目標としたリリスの姿はなかった。
「地滑りは一箇所、崩れた崖も海沿いの二箇所のみです。浸水地区がここからここまで広範囲ですね」
魔王軍が各地から集めた情報を纏め直し、地図へ落とし込むアスタロトの説明に頷く。地滑り箇所は事前の避難が功を奏し、死傷者ゼロだった。海沿いの崖は、ベルゼビュートの報告で救助も治療も終わっている。
「浸水が随分と広範囲だな」
「川が溢れちゃったのね」
執務室で朝食を食べたリリスは、昼食の準備が始まったテーブルの前で、こてりと首を傾げる。空中に掲げられた二つの大陸の地図は、最近になって海も書き加えられた。立体的な地図を見ながら、リリスが指で示す。
「この辺の地下は空洞で、海へ繋がっているの。水を下へ落としたらどうかしら」
中止になった視察の予定地だ。この場所は固い岩盤が覆っており、穴を開けるのは一苦労だった。少し考えて、ルシファーが妻を振り返る。案が採用されるのを待つリリスは、にこにこと笑顔を振りまいた。
「ちょっと穴を開けてくる」
「ええ」
「…………何でもない」
しょんぼりと肩を落とすルシファーの様子に、笑いを堪えるアスタロト。二人を見比べたリリスは、抱いたシャイターンの小さな手を掴み、左右に振った。
「忘れてたわ、いってらっしゃい」
シャイターンにバイバイさせる妻に、ルシファーは「泣きそう」と呟いて消えた。
「城内での転移はやっぱり禁止しましょうか」
以前は禁止していたが、緊急時用に魔王ルシファーは転移が可能になっている。それを普段から多用されると困る。ぼやいたアスタロトに、リリスは素直に尋ねた。
「アシュタ、どうしてルシファーは泣いちゃうの?」
「一緒に来て欲しかったのですよ。気づいていて無視したのでは?」
幼い息子がいるから断ったのかと思った。そんな言葉に、リリスは目を見開いた。大きな金色の瞳がこぼれ落ちそうだ。
「えええ?! 言ってくれたらいいのに」
その大声に目を覚まして、のそりと翡翠竜が動き出す。短い手でごしごしと顔を洗い、はふっと溜め息を吐いた。
「僕なら言われなくてもついていきます」
ストーカーに近い発言だが、リリスは嬉しそうに頷いた。
「そうよね。追いかけたらいいのよ」
シャイターンを連れたまま、外へ飛び出す。慌てたアスタロトが追いかけるが、すでに彼女の姿は廊下になかった。転移してしまったらしい。魔王の魔力と繋がるほど親和性が高いリリスは、当たり前のように転移魔法を使ったのだ。
「た、大変です! 魔王妃リリス様の追跡を!」
「え? 何があったの!」
報告に訪れたルキフェルは執務室を見回し、二人の姿がないことに焦る。アスタロトが声を張り上げた状況も手伝い、緊急事態だと階段を舞い降りた。広げた翼に、付いてきたアムドゥスキアスが激突する。
「「痛っ!」」
同時に叫んだ二人だが、すぐに中庭へ出て転移した。あの二人が追いかけたなら、問題ないでしょう。がくりと崩れるように椅子に座ったアスタロトは、安堵の息を吐く。
リリスは見事な方向音痴だ。もしルシファーの魔力を追わず、地図を頼りに転移していたら……ぞっとする。どこへ落ちるか想像できなかった。彼女に何かあれば、ルシファーが壊れる。
「ルキフェル、頼みましたよ」
ついでにアムドゥスキアスも……。おまけ扱いされた翡翠竜だが、彼は見知らぬ景色に困惑していた。
「ここ……どこです?」
波が高い荒れた海の上で、翡翠竜は首を傾げる。その周囲に、目標としたリリスの姿はなかった。
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