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第23章 生まれるぅ!
418.出産は生まれた後も大変です
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イヴは黒髪に銀瞳、シャイターンは銀髪に赤瞳。幼い頃のリリスが赤い瞳だったことは、魔族に周知の事実である。敬愛する魔王と愛らしい魔王妃の色を分けて生まれた二人は、魔族にとって幸せの象徴だった。
各地で生まれた子ども達の報告が舞い込み、魔王城の文官達は上へ下への大騒ぎだ。戸籍制度を導入した魔族に、出産と死亡は届け出が義務付けられた。各種族の纏め役である貴族へ連絡が入り、転移魔法陣を使って即日送られてくる。
中庭で回収された書簡を拾い集めながら、アベルが苦笑いする。これは昼までに終わりそうもない。
「昼休み仕事したら、残業代くれるのかな」
「残業代なんか出さないよ、ほら」
通りかかったルキフェルが、風を使って一気に集める。正式書類だが、特殊インクを使っていないので魔力を当てても問題なかった。驚いた顔で、集められた書簡とルキフェルを交互に見た後、アベルは大きく息を吐いた。
「なんだ、魔法使っていいのかよ」
「なんで使えないと思ったのさ。先に誰かに聞けばいいじゃん」
仲がいいのか悪いのか。二人は言い合いながらも、大量の出産届を回収した。そもそもアベルの仕事であり、ルキフェルは関係ないのだが。最後まで付き合うあたり、意外とアベルを認めているのだろう。
「サンキュ、助かった!」
「お礼は何か新しい知識でいいや」
用が終わればさっさと別れる。二人の様子を見ながら、ベールは首を傾げた。
「あの二人は不仲なのでしょうか」
「どちらかと言えば、仲がいいと思いますよ」
アスタロトが淡々と指摘する。本当に不仲なら、ルキフェルは構わない。どんなに苦労していても、放置したはず。言われてベールも納得した。
「それはそうと、各地に送る支援物資はアムドゥスキアスに任せて大丈夫でしょうか」
「災害復興担当でしたね。誰か助手をつけましょう」
テキパキと書類処理をしながら、支援物資の分配表を作成する。魔王軍が配布と支給に回る予定だった。指揮をアムドゥスキアスに一任すると、正直、不安が残る。
孤独に洞窟へ閉じこもっていた時期が長く、さらに長い眠りにもついていた。他人との交流経験が少なすぎるのだ。トラブルの芽は事前に摘み取るのが、ベールとアスタロトの仕事でもあった。
待望の二人目に夢中のルシファーを動かすのは諦め、二人は細かな打ち合わせを続ける。大公女でありしっかり者のレライエを補佐に付けたいが、彼女は妊婦だった。万が一があってはいけない。できれば転移魔法陣も使わせたくなかった。
妊婦へ治癒魔法禁止が発覚したのも最近で、もしかしたら別の魔法も影響が出る可能性があった。検証が済むまで、妊婦への魔法使用を停止する命令書も作成する。各種族への通達が以前より楽になったのは、幸いだった。
「仕事手伝うぞ」
執務室にひょっこり顔を出したのは、ルシファーだ。出産後のリリスは眠りが浅く、どうしても細切れに休息を取る。今も眠ったようなので、子ども達を連れて私室を出た。起こさない配慮として満点だが、魔王らしからぬ姿に側近達は脱力する。
息子シャイターンを抱っこ紐で胸に抱え、右手をイヴと繋いでいる。左手にオムツが入った籠を抱えていた。
「そのお姿の理由を伺っても?」
眉を寄せたベールの声は低い。逆にアスタロトは笑いを堪えて、顔を逸らした。
「子ども達を安全に移動させるため、手を繋いだり抱っこで来たんだが」
「オムツの籠の話です」
はみ出したオムツのせいで、雰囲気は台無しだ。
「ああ、シャイターンが使う分だ」
そこでアスタロトが吹き出した。我慢できず思い切り笑う彼は、涙目だった。苦しいが笑うのも止まらない。数年に一度笑いがツボに入る吸血鬼王に、ルシファーは首を傾げた。
各地で生まれた子ども達の報告が舞い込み、魔王城の文官達は上へ下への大騒ぎだ。戸籍制度を導入した魔族に、出産と死亡は届け出が義務付けられた。各種族の纏め役である貴族へ連絡が入り、転移魔法陣を使って即日送られてくる。
中庭で回収された書簡を拾い集めながら、アベルが苦笑いする。これは昼までに終わりそうもない。
「昼休み仕事したら、残業代くれるのかな」
「残業代なんか出さないよ、ほら」
通りかかったルキフェルが、風を使って一気に集める。正式書類だが、特殊インクを使っていないので魔力を当てても問題なかった。驚いた顔で、集められた書簡とルキフェルを交互に見た後、アベルは大きく息を吐いた。
「なんだ、魔法使っていいのかよ」
「なんで使えないと思ったのさ。先に誰かに聞けばいいじゃん」
仲がいいのか悪いのか。二人は言い合いながらも、大量の出産届を回収した。そもそもアベルの仕事であり、ルキフェルは関係ないのだが。最後まで付き合うあたり、意外とアベルを認めているのだろう。
「サンキュ、助かった!」
「お礼は何か新しい知識でいいや」
用が終わればさっさと別れる。二人の様子を見ながら、ベールは首を傾げた。
「あの二人は不仲なのでしょうか」
「どちらかと言えば、仲がいいと思いますよ」
アスタロトが淡々と指摘する。本当に不仲なら、ルキフェルは構わない。どんなに苦労していても、放置したはず。言われてベールも納得した。
「それはそうと、各地に送る支援物資はアムドゥスキアスに任せて大丈夫でしょうか」
「災害復興担当でしたね。誰か助手をつけましょう」
テキパキと書類処理をしながら、支援物資の分配表を作成する。魔王軍が配布と支給に回る予定だった。指揮をアムドゥスキアスに一任すると、正直、不安が残る。
孤独に洞窟へ閉じこもっていた時期が長く、さらに長い眠りにもついていた。他人との交流経験が少なすぎるのだ。トラブルの芽は事前に摘み取るのが、ベールとアスタロトの仕事でもあった。
待望の二人目に夢中のルシファーを動かすのは諦め、二人は細かな打ち合わせを続ける。大公女でありしっかり者のレライエを補佐に付けたいが、彼女は妊婦だった。万が一があってはいけない。できれば転移魔法陣も使わせたくなかった。
妊婦へ治癒魔法禁止が発覚したのも最近で、もしかしたら別の魔法も影響が出る可能性があった。検証が済むまで、妊婦への魔法使用を停止する命令書も作成する。各種族への通達が以前より楽になったのは、幸いだった。
「仕事手伝うぞ」
執務室にひょっこり顔を出したのは、ルシファーだ。出産後のリリスは眠りが浅く、どうしても細切れに休息を取る。今も眠ったようなので、子ども達を連れて私室を出た。起こさない配慮として満点だが、魔王らしからぬ姿に側近達は脱力する。
息子シャイターンを抱っこ紐で胸に抱え、右手をイヴと繋いでいる。左手にオムツが入った籠を抱えていた。
「そのお姿の理由を伺っても?」
眉を寄せたベールの声は低い。逆にアスタロトは笑いを堪えて、顔を逸らした。
「子ども達を安全に移動させるため、手を繋いだり抱っこで来たんだが」
「オムツの籠の話です」
はみ出したオムツのせいで、雰囲気は台無しだ。
「ああ、シャイターンが使う分だ」
そこでアスタロトが吹き出した。我慢できず思い切り笑う彼は、涙目だった。苦しいが笑うのも止まらない。数年に一度笑いがツボに入る吸血鬼王に、ルシファーは首を傾げた。
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