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第22章 いろいろ増えるのは良いこと?
396.今日も魔王陛下は忙しい
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謁見の時期が終わり、海の方も爵位決めが一段落した。梅が一番上で、松が下になったのは日本人も首を傾げるが、最終的にそのままで収める。何事も臨機応変、指摘したら海の者達に恥をかかせてしまう。
顔を立てて対応する社交に長けた魔王は、にこにこと海の民が持ち込んだ結論を受け止めた。
「承知した、不具合があれば変更するとしよう」
人魚達は嬉しそうに帰って行った。というのも、戦った成果として梅を勝ち取ったらしい。人魚は優美な姿をしているが、内面は非常に喧嘩っ早くて獰猛なのだとか。ベルゼビュートの目撃談を交えて理解し、ルシファーは曖昧に頷いた。
「僕らがいない間に、アスタロトの希少な生態を見るなんて狡いよ」
「ルキフェル、そのように彼を見ていたのですか。否定はしませんが」
否定しないのか。そこに関しては、顎が外れるかと思うほど驚いたので、ルシファーは追求しない。本能でベルゼビュートは目を逸らした。
「ところで、まだアスタロトは戻らないのですか」
「本来はまだ休暇中だから、オレは気にしないぞ」
緊急事態で呼び出してしまったが、当初予定した休暇は出産までだった。アスタロトが休んでも誰も文句が言えないのだ。それより、大公三人が首を傾げる光景が広がっていた。リリスがルシファーと向き合ってしがみつき、離れないのだ。ぴたりと張り付いた姿は、いつもと違っていた。
「ルシファー、腰が痛い」
「あ、ああ。すまない、気づかなくて悪かった。ここか?」
「もっと左」
魔王に指示して撫でさせる魔王妃――ルシファーは妻に甘いので、珍しい光景ではないが。イヴが生まれてから、リリスは人前で甘えるのを控えていた。それが完全に元に戻っている。
両足を開いてがっちりしがみ付くので、スカートは裾が広がるフレアタイプでロングだ。中に細身のパンツも履いた。これで下着や足が丸見えになることもない。完全に抱きつくことを前提にした服装だった。
「パッパ、ママ」
イヴが両手を伸ばすが、残念ながら二人とも手が塞がっている。困ったと顔に書いたルシファーに、イヴはふふんと顎を逸らして手を引っ込めた。
「ママとパッパ、仲良し。私はおちょなだから、我慢すゆ」
幼くて噛んでいるというより、保育所で誰かの訛りが移ったようだ。徐々に直るだろうと放置するルシファーは、ほっとしながら頷いた。
「具合が悪いから我慢してくれると助かる。いい子だな、イヴ」
ぺったんこな胸と立派なお腹を逸らして、ひっくり返りそうになったイヴは得意げだった。さり気なくヤンが後ろで支え、転がらないようバランスをとる。
「あてち、ヤンと結婚すゆ」
さっきは私と言えていたのに、誰かの訛りが出現した。早めに直さないと定着してしまう。
「イヴ、私と言ってごらん」
「あたし」
「わたくしよ」
ベルゼビュートが横から口を挟み、ルキフェルに手で塞がれた。
「余計なこと吹き込むなよ、ベルゼ」
もごもごと抗議するが、ベールに睨まれたベルゼビュートは沈黙した。その間に、イヴは首を傾げて「あてち」「あたち」と繰り返す。
「私、だぞ。アスタロトと同じだ」
その表現に、目を輝かせたイヴは「わたし!」と大きな声で言い切った。よく出来たと手を叩くルシファーの膝上に跨ったリリスが呻く。
「痛いぃ……」
「左か?」
「真ん中より右の、もうちょっと下」
現在触れている場所から手を移動させ、丁寧に撫でる。さする動きで楽になるらしい。痛みのせいで不機嫌なリリスを乗せ、無邪気に言葉を直す娘を指導する。今日も魔王陛下は忙しかった。
顔を立てて対応する社交に長けた魔王は、にこにこと海の民が持ち込んだ結論を受け止めた。
「承知した、不具合があれば変更するとしよう」
人魚達は嬉しそうに帰って行った。というのも、戦った成果として梅を勝ち取ったらしい。人魚は優美な姿をしているが、内面は非常に喧嘩っ早くて獰猛なのだとか。ベルゼビュートの目撃談を交えて理解し、ルシファーは曖昧に頷いた。
「僕らがいない間に、アスタロトの希少な生態を見るなんて狡いよ」
「ルキフェル、そのように彼を見ていたのですか。否定はしませんが」
否定しないのか。そこに関しては、顎が外れるかと思うほど驚いたので、ルシファーは追求しない。本能でベルゼビュートは目を逸らした。
「ところで、まだアスタロトは戻らないのですか」
「本来はまだ休暇中だから、オレは気にしないぞ」
緊急事態で呼び出してしまったが、当初予定した休暇は出産までだった。アスタロトが休んでも誰も文句が言えないのだ。それより、大公三人が首を傾げる光景が広がっていた。リリスがルシファーと向き合ってしがみつき、離れないのだ。ぴたりと張り付いた姿は、いつもと違っていた。
「ルシファー、腰が痛い」
「あ、ああ。すまない、気づかなくて悪かった。ここか?」
「もっと左」
魔王に指示して撫でさせる魔王妃――ルシファーは妻に甘いので、珍しい光景ではないが。イヴが生まれてから、リリスは人前で甘えるのを控えていた。それが完全に元に戻っている。
両足を開いてがっちりしがみ付くので、スカートは裾が広がるフレアタイプでロングだ。中に細身のパンツも履いた。これで下着や足が丸見えになることもない。完全に抱きつくことを前提にした服装だった。
「パッパ、ママ」
イヴが両手を伸ばすが、残念ながら二人とも手が塞がっている。困ったと顔に書いたルシファーに、イヴはふふんと顎を逸らして手を引っ込めた。
「ママとパッパ、仲良し。私はおちょなだから、我慢すゆ」
幼くて噛んでいるというより、保育所で誰かの訛りが移ったようだ。徐々に直るだろうと放置するルシファーは、ほっとしながら頷いた。
「具合が悪いから我慢してくれると助かる。いい子だな、イヴ」
ぺったんこな胸と立派なお腹を逸らして、ひっくり返りそうになったイヴは得意げだった。さり気なくヤンが後ろで支え、転がらないようバランスをとる。
「あてち、ヤンと結婚すゆ」
さっきは私と言えていたのに、誰かの訛りが出現した。早めに直さないと定着してしまう。
「イヴ、私と言ってごらん」
「あたし」
「わたくしよ」
ベルゼビュートが横から口を挟み、ルキフェルに手で塞がれた。
「余計なこと吹き込むなよ、ベルゼ」
もごもごと抗議するが、ベールに睨まれたベルゼビュートは沈黙した。その間に、イヴは首を傾げて「あてち」「あたち」と繰り返す。
「私、だぞ。アスタロトと同じだ」
その表現に、目を輝かせたイヴは「わたし!」と大きな声で言い切った。よく出来たと手を叩くルシファーの膝上に跨ったリリスが呻く。
「痛いぃ……」
「左か?」
「真ん中より右の、もうちょっと下」
現在触れている場所から手を移動させ、丁寧に撫でる。さする動きで楽になるらしい。痛みのせいで不機嫌なリリスを乗せ、無邪気に言葉を直す娘を指導する。今日も魔王陛下は忙しかった。
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