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第19章 出産ラッシュ再び?
357.隣の卵は楽に見える
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狩りに行きたかったリリスは頬を膨らませ、イヴを膝に乗せてベッド脇に座る。不貞腐れた母の気持ちを知らず、娘は友人達と遊び始めた。気を紛らわせようとシトリーが、話しかける。
「リリス様、今度は男の子がいいですか? もう一度女の子がいいですか」
「イヴが断言したから男の子よ」
「え? そんな能力が? 私も見てもらおうかな」
シトリーは卵を宿したお腹を撫でる。それを羨ましそうに見つめるリリスは、溜め息を吐いた。
「私も卵で産みたかった」
「卵も大変ですよ。胎児より流産しやすいし、卵が大きくなりすぎると出てこないし」
お互いに羨ましがるのは、どこの世界でも同じらしい。これが格闘技であっても料理競争であっても、同じように相手を羨ましがるのだろう。
シトリーの話では、卵生は小柄な種族なら問題ないらしい。ただ夫がグシオンで神龍に連なる一族だった。卵生同士なので問題ないが、炎龍の卵は鳥人族より大きい。卵の出産は、胎児と違い太い部分が突っ掛かる。
胎児なら引っ張れば多少変形しながら生まれ、後で伸びた頭部が元に戻る現象も珍しくなかった。しかし卵はその形を変えて生まれることはない。つるんと丸い形は産みやすいが、詰まればどうやっても出なかった。
まさか産む前に殻を割るわけにもいかない。そんな事情を説明され、リリスは青ざめた。
「やだ、そんなの大変だわ」
「そうです。だからリリス様は安心して産んでください」
からりと明るく笑うシトリーに釣られ、女性達は集まって出産時や育児の苦労を語り出した。途中からプータナーの愚痴が始まる。
「魔王様は育児に協力的です。羨ましいですね。うちは夫が消えちゃって」
「消えたの?」
「どこへ?」
興味津々のリリス達に、失踪という言葉を教える。プータナーは割り切って諦めたが、一族の中に同じような母子がいるそうだ。妻が強く自立している巨人族ではよくある事例らしい。
「どっか森の中にいると思いますけどね。帰ってきても家には入れません」
ぴしゃんと厳しく対応する表明を聞き、イポスが同意した。
「分かります。うちは考えられないですが、もし失踪したら毅然と対処したいですね」
武闘派の二人の発言に、リリスは首を傾げた。
「でも、自分の意思じゃなくて失踪する場合もあるでしょう?」
「そうですね。不可抗力なら許してもいいかも」
シトリーが同意する。途端に、武闘派の二人に詰め寄られた。甘い、そんなことでは夫を尻に敷けないと言われる。困惑した二人の後ろで、イヴが号令を掛けた。
「ママを助ける勇者だ! えいっ」
「私も!」
イヴとキャロルの枕攻撃が炸裂し、それを見たマーリーンが母イポスを守るためにイヴを倒す。後ろから引っ張られて転がったイヴが大声で泣き出し、テント内はあっという間に騒がしくなった。
イポスがマーリーンに注意する。
「イヴ姫を後ろから引っ張ったが、何度も言っただろう? 引っ張る時は頭を守ってやらなければならない。だから倒すなら前だ」
途中から戦い方の指導に変更となり、マーリーンは真剣に頷く。その脇で、我関せずだった娘サライへ、プータナーは渋い顔で説教を始めた。
「なぜ一緒に戦わない! 母が攻撃されたのだぞ?」
「お母さんは強いから、私が守らなくても平気。でもイヴちゃんは弱いから守る」
「その覚悟やよし!」
弱い友人と強い母なら、友人イヴを守るべきだ。そう主張するサライに、プータナーは乱暴な所作で頭を撫でる。首が取れそうな褒め方に、サライは満面の笑みを浮かべた。
「イヴよわくないもん!!」
弱いと断定され、イヴは不満を露わにする。混乱したテントに、狩りを終えた男親が戻り……顔を見合わせた。
「何があったんだ?」
「リリス様、今度は男の子がいいですか? もう一度女の子がいいですか」
「イヴが断言したから男の子よ」
「え? そんな能力が? 私も見てもらおうかな」
シトリーは卵を宿したお腹を撫でる。それを羨ましそうに見つめるリリスは、溜め息を吐いた。
「私も卵で産みたかった」
「卵も大変ですよ。胎児より流産しやすいし、卵が大きくなりすぎると出てこないし」
お互いに羨ましがるのは、どこの世界でも同じらしい。これが格闘技であっても料理競争であっても、同じように相手を羨ましがるのだろう。
シトリーの話では、卵生は小柄な種族なら問題ないらしい。ただ夫がグシオンで神龍に連なる一族だった。卵生同士なので問題ないが、炎龍の卵は鳥人族より大きい。卵の出産は、胎児と違い太い部分が突っ掛かる。
胎児なら引っ張れば多少変形しながら生まれ、後で伸びた頭部が元に戻る現象も珍しくなかった。しかし卵はその形を変えて生まれることはない。つるんと丸い形は産みやすいが、詰まればどうやっても出なかった。
まさか産む前に殻を割るわけにもいかない。そんな事情を説明され、リリスは青ざめた。
「やだ、そんなの大変だわ」
「そうです。だからリリス様は安心して産んでください」
からりと明るく笑うシトリーに釣られ、女性達は集まって出産時や育児の苦労を語り出した。途中からプータナーの愚痴が始まる。
「魔王様は育児に協力的です。羨ましいですね。うちは夫が消えちゃって」
「消えたの?」
「どこへ?」
興味津々のリリス達に、失踪という言葉を教える。プータナーは割り切って諦めたが、一族の中に同じような母子がいるそうだ。妻が強く自立している巨人族ではよくある事例らしい。
「どっか森の中にいると思いますけどね。帰ってきても家には入れません」
ぴしゃんと厳しく対応する表明を聞き、イポスが同意した。
「分かります。うちは考えられないですが、もし失踪したら毅然と対処したいですね」
武闘派の二人の発言に、リリスは首を傾げた。
「でも、自分の意思じゃなくて失踪する場合もあるでしょう?」
「そうですね。不可抗力なら許してもいいかも」
シトリーが同意する。途端に、武闘派の二人に詰め寄られた。甘い、そんなことでは夫を尻に敷けないと言われる。困惑した二人の後ろで、イヴが号令を掛けた。
「ママを助ける勇者だ! えいっ」
「私も!」
イヴとキャロルの枕攻撃が炸裂し、それを見たマーリーンが母イポスを守るためにイヴを倒す。後ろから引っ張られて転がったイヴが大声で泣き出し、テント内はあっという間に騒がしくなった。
イポスがマーリーンに注意する。
「イヴ姫を後ろから引っ張ったが、何度も言っただろう? 引っ張る時は頭を守ってやらなければならない。だから倒すなら前だ」
途中から戦い方の指導に変更となり、マーリーンは真剣に頷く。その脇で、我関せずだった娘サライへ、プータナーは渋い顔で説教を始めた。
「なぜ一緒に戦わない! 母が攻撃されたのだぞ?」
「お母さんは強いから、私が守らなくても平気。でもイヴちゃんは弱いから守る」
「その覚悟やよし!」
弱い友人と強い母なら、友人イヴを守るべきだ。そう主張するサライに、プータナーは乱暴な所作で頭を撫でる。首が取れそうな褒め方に、サライは満面の笑みを浮かべた。
「イヴよわくないもん!!」
弱いと断定され、イヴは不満を露わにする。混乱したテントに、狩りを終えた男親が戻り……顔を見合わせた。
「何があったんだ?」
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