337 / 530
第18章 お祭りに事件は付きもの
335.責任をとっていただきますわ
しおりを挟む
「次はわたくしの番ね、美女は最後に登場するものよ」
大公に女性は一人なので、美女と表現できるのは彼女だけ。ベルゼビュートが最後に登場は決まり事になったのか?
よくわからない理論を振りかざす精霊女王は、見事なボディを紺色のドレスに包んでいた。歩くたびに足がスリットから覗く。左右の太ももの付け根まで入ったスリットは、生足を存分に披露した。
すでに既婚者なので、多少控えてもいいのではないかとルシファーが眉を寄せる。胸元も寄せて上げなくても、立派な果実が揺れている。こちらも際どいデザインだった。全力で戦ったら、ぽろっと溢れかねない。
「ベルゼ姉さん、お胸が危ないわ」
「大丈夫よ、ちゃんと魔法陣で固定してるから」
見えそうで見えない位置は計算されたものらしい。となれば、当然足も同じだろう。ちなみにベルゼビュートが下着を身に着けないのは、かなり有名な話だった。
「陛下、責任をとっていただきますわ」
「人聞きの悪い言い方をするな。で、何のだ?」
「先ほど賭けをしましたの。陛下がどのくらいで勝つか、ベールとの戦いに時間をかけすぎですわ」
主君をダシに賭けをするな、とか。負けたからって八つ当たりはダメだぞ、とか。あれこれ浮かんだものの、ルシファーは溜め息ひとつで諦めた。彼女のギャンブル好きは、おそらく病気だ。死んでも治らない。
「今回はいくら賭けた?」
負けを取り戻すために、自分の戦いにも金を賭けただろうと問えば、ベルゼビュートは微笑んだ。
「ふふっ、ベールより長く、に金貨2枚ですわ」
取り返そうとして徐々に金額を大きく賭け、最終的に全部失うのがベルゼビュートのパターンだ。過去の賭け戦績を思い浮かべ、ルシファーはにやりと笑った。
「なら、短い方に金貨3枚を賭けよう」
「受けて立ちます、参りますわねっ!」
語尾に被せるように、ベルゼビュートは矢を放った。手に弓はない。だが弓を引く動作は行った。風により作られた弓が、風で加速する雷の矢を射る。ばちばちと雷光を放ちながら風を切る矢に、ルシファーは左手を振った。その手に握られていたのは、不思議な形の短剣だ。
キンッと甲高い音を立てて、矢は砕け散った。左手に取り出した短剣は、刃が途中で割れていた。まるで縦に切り裂かれたように。柄に近い部分で2本の刃は融合していた。
「あら、珍しいものを」
「だろう? こないだ見つけた」
互いにこの短剣を知っている会話を交わし、すぐにベルゼビュートが仕掛ける。長引かせる方に賭けた彼女だが、わざと時間稼ぎをする気はない。正々堂々正面から戦っても、ルシファーと長く渡り合える自信の表れだった。
「これはいかが?」
再び矢をつがえたベルゼビュートが放ったのは、ほんのり赤を帯びた細い矢だった。ひゅっと嫌な音を纏う。ルシファーは受けずに避けた。後ろでルキフェルが叫ぶ。
「ちょっ! 危ないだろ!!」
ぐるりと囲む民を守る結界を担当するルキフェルは、むっとした顔で結界を強化した。先ほどまでベルゼビュートが結界を張っていたが、交代したのだ。鋭い矢はとんでもない速さで、結界の一点を突き破ろうとした。咄嗟に結界を集約させて防いだ青年は、不満そうに唇を尖らせる。
「僕だって手加減したのに」
口角を持ち上げて笑ったベルゼビュートが、弓を剣に変化させる。一気に決着をつける姿勢を見せた彼女に対し、ルシファーは短剣のまま肩の力を抜いた。
「腕の一本、いただきますわ」
切り落とすと宣言し、ベルゼビュートは地を蹴った。
大公に女性は一人なので、美女と表現できるのは彼女だけ。ベルゼビュートが最後に登場は決まり事になったのか?
よくわからない理論を振りかざす精霊女王は、見事なボディを紺色のドレスに包んでいた。歩くたびに足がスリットから覗く。左右の太ももの付け根まで入ったスリットは、生足を存分に披露した。
すでに既婚者なので、多少控えてもいいのではないかとルシファーが眉を寄せる。胸元も寄せて上げなくても、立派な果実が揺れている。こちらも際どいデザインだった。全力で戦ったら、ぽろっと溢れかねない。
「ベルゼ姉さん、お胸が危ないわ」
「大丈夫よ、ちゃんと魔法陣で固定してるから」
見えそうで見えない位置は計算されたものらしい。となれば、当然足も同じだろう。ちなみにベルゼビュートが下着を身に着けないのは、かなり有名な話だった。
「陛下、責任をとっていただきますわ」
「人聞きの悪い言い方をするな。で、何のだ?」
「先ほど賭けをしましたの。陛下がどのくらいで勝つか、ベールとの戦いに時間をかけすぎですわ」
主君をダシに賭けをするな、とか。負けたからって八つ当たりはダメだぞ、とか。あれこれ浮かんだものの、ルシファーは溜め息ひとつで諦めた。彼女のギャンブル好きは、おそらく病気だ。死んでも治らない。
「今回はいくら賭けた?」
負けを取り戻すために、自分の戦いにも金を賭けただろうと問えば、ベルゼビュートは微笑んだ。
「ふふっ、ベールより長く、に金貨2枚ですわ」
取り返そうとして徐々に金額を大きく賭け、最終的に全部失うのがベルゼビュートのパターンだ。過去の賭け戦績を思い浮かべ、ルシファーはにやりと笑った。
「なら、短い方に金貨3枚を賭けよう」
「受けて立ちます、参りますわねっ!」
語尾に被せるように、ベルゼビュートは矢を放った。手に弓はない。だが弓を引く動作は行った。風により作られた弓が、風で加速する雷の矢を射る。ばちばちと雷光を放ちながら風を切る矢に、ルシファーは左手を振った。その手に握られていたのは、不思議な形の短剣だ。
キンッと甲高い音を立てて、矢は砕け散った。左手に取り出した短剣は、刃が途中で割れていた。まるで縦に切り裂かれたように。柄に近い部分で2本の刃は融合していた。
「あら、珍しいものを」
「だろう? こないだ見つけた」
互いにこの短剣を知っている会話を交わし、すぐにベルゼビュートが仕掛ける。長引かせる方に賭けた彼女だが、わざと時間稼ぎをする気はない。正々堂々正面から戦っても、ルシファーと長く渡り合える自信の表れだった。
「これはいかが?」
再び矢をつがえたベルゼビュートが放ったのは、ほんのり赤を帯びた細い矢だった。ひゅっと嫌な音を纏う。ルシファーは受けずに避けた。後ろでルキフェルが叫ぶ。
「ちょっ! 危ないだろ!!」
ぐるりと囲む民を守る結界を担当するルキフェルは、むっとした顔で結界を強化した。先ほどまでベルゼビュートが結界を張っていたが、交代したのだ。鋭い矢はとんでもない速さで、結界の一点を突き破ろうとした。咄嗟に結界を集約させて防いだ青年は、不満そうに唇を尖らせる。
「僕だって手加減したのに」
口角を持ち上げて笑ったベルゼビュートが、弓を剣に変化させる。一気に決着をつける姿勢を見せた彼女に対し、ルシファーは短剣のまま肩の力を抜いた。
「腕の一本、いただきますわ」
切り落とすと宣言し、ベルゼビュートは地を蹴った。
10
お気に入りに追加
748
あなたにおすすめの小説
継母の品格 〜 行き遅れ令嬢は、辺境伯と愛娘に溺愛される 〜
出口もぐら
恋愛
【短編】巷で流行りの婚約破棄。
令嬢リリーも例外ではなかった。家柄、剣と共に生きる彼女は「女性らしさ」に欠けるという理由から、婚約破棄を突き付けられる。
彼女の手は研鑽の証でもある、肉刺や擦り傷がある。それを隠すため、いつもレースの手袋をしている。別にそれを恥じたこともなければ、婚約破棄を悲しむほど脆弱ではない。
「行き遅れた令嬢」こればかりはどうしようもない、と諦めていた。
しかし、そこへ辺境伯から婚約の申し出が――。その辺境伯には娘がいた。
「分かりましたわ!これは契約結婚!この小さなお姫様を私にお守りするようにと仰せですのね」
少しばかり天然、快活令嬢の継母ライフ。
■この作品は「小説家になろう」にも投稿しています。
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
世界⇔異世界 THERE AND BACK!!
西順
ファンタジー
ある日、異世界と行き来できる『門』を手に入れた。
友人たちとの下校中に橋で多重事故に巻き込まれたハルアキは、そのきっかけを作った天使からお詫びとしてある能力を授かる。それは、THERE AND BACK=往復。異世界と地球を行き来する能力だった。
しかし異世界へ転移してみると、着いた先は暗い崖の下。しかも出口はどこにもなさそうだ。
「いや、これ詰んでない? 仕方ない。トンネル掘るか!」
これはRPGを彷彿とさせるゲームのように、魔法やスキルの存在する剣と魔法のファンタジー世界と地球を往復しながら、主人公たちが降り掛かる数々の問題を、時に強引に、時に力業で解決していく冒険譚。たまには頭も使うかも。
週一、不定期投稿していきます。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しています。
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます
今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。
アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて……
表紙 チルヲさん
出てくる料理は架空のものです
造語もあります11/9
参考にしている本
中世ヨーロッパの農村の生活
中世ヨーロッパを生きる
中世ヨーロッパの都市の生活
中世ヨーロッパの暮らし
中世ヨーロッパのレシピ
wikipediaなど
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる