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第17章 4歳の特別なお祝い
300.場所取りの前哨戦
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即位記念祭3ヶ月前になると、告知した通り抽選会が行われる。毎度の恒例行事なので、各種族の代表者が気合を入れて集まった。家を出る前に、それぞれ「いい場所を引き当てますように」と願掛けして参加が慣いだ。
「ジャンケン! ほいっ!!」
「くそっ、負けた」
日本人が種族として認められ、2度目の即位記念祭。代表者はアンナに決定した。くじ引きで公平に決まる場所取りなので、運試しでジャンケンが選ばれた。ルイとスイは早々に脱落し、アベルとアンナの一騎打ちだった。イザヤは参加を見送り、遅れた新作の発行に向けてラストスパート中である。
悔しがるアベルへ勝利のVサインを見せつけるアンナは、子ども達に尊敬の目を向けられご機嫌だ。苦笑いして見守るのは、ルーサルカだった。彼女はアベルの妻なので、日本人枠で参加だ。これが結婚前だと、両親の吸血種枠だった。半獣人なのに、そちらでの参加は一度もない。
「アンナさん、いい場所お願いしますね」
「任せておいて!」
大公女であるルーサルカや、文官として務めるアンナは、魔王城に住んでいる。日本人は、以前ルシファー達の好意で城下町に家を買ったが、様々な事情で魔王城内の一角に引っ越した。離れのある立派な家は、子沢山のネズミ獣人一家へ賃貸している。いつか隠居したら、また住むつもりらしい。
彼女達は魔王城に部屋があるのだし、別に種族としての見物場所確保に出向かなくても構わないのだ。特にルーサルカは大公女としての仕事もある。おそらく一等地で見物できるだろう。だが魔族にとって最大のお祭りとなれば、やはり参加しておきたい。
場所取りや衣装手配も含め、すでにお祭りは始まっていた。種族としての団結を見せつける場でもあり、他種族と交流する最高の条件が揃う。今の地位に胡座をかいて、楽をする気はなかった。平等なくじ引きに参加し、日本人の地位を高めるべきだろう。それが彼らの見解だ。
「決戦は明日ね!」
まだ前夜だというのに、気合の入ったアンナ。このままでは夜眠れなくなり、明日ミスをするかもしれない。心配になった娘スイが、ハーブティを淹れ始めた。
「お母さん、早く寝てよ。起きられないと困るから」
「分かってるわ」
よく眠れるよう選んだ香りのいいお茶を楽しみ、敗者となったアベル達は引き上げた。
「次こそは勝つぞ」
「いいけど、次は10年後よ?」
ルーサルカは肩を竦めた。日本人夫婦の子は、当然純粋は日本人である。次の即位記念祭で、スイやルイが家庭を持っていたら、ライバルはさらに増えるのに。まったく気づいていないわね。もしかしたら、の話だから言わなくてもいいか。
寿命が長い分、魔族はのんびりしている。日本人であるアベル達もかなり影響された。10年後のジャンケンは、どちらが勝つのか。それとも家庭を持った第二世代が、横から勝利を攫っていくのか。未来は魔王であっても見通せない。
翌日の予定を確認し、アベルに入浴を促す。飴づくりは週に一度のペースで続けられていた。
「あの気味悪い飴があんなに売れるなんてね」
ルーサルカはくすくす笑う。即位記念祭で売り出す予定の飴は、リリス親子から情報漏れし、あっという間に城下町で人気を博した。お祭り用に準備した飴が売り切れ、再び増産体制に入ったばかり。
宝石の形のジュエリー飴は、現時点で情報管理が徹底され、まだ知られていない。お祭りのお土産として、魔王城から提供される予定だった。そっちも増産しておいた方がいいかも。あれこれ考えながら、ルーサルカは夫のアベルと交代で風呂へ向かった。
明日、ルーシア達と相談しなくちゃ。考え事をしていたため、ルーサルカは夫からの求愛を見落とす。お祭り前後はよくある、家庭の悲しいすれ違いだった。
「ジャンケン! ほいっ!!」
「くそっ、負けた」
日本人が種族として認められ、2度目の即位記念祭。代表者はアンナに決定した。くじ引きで公平に決まる場所取りなので、運試しでジャンケンが選ばれた。ルイとスイは早々に脱落し、アベルとアンナの一騎打ちだった。イザヤは参加を見送り、遅れた新作の発行に向けてラストスパート中である。
悔しがるアベルへ勝利のVサインを見せつけるアンナは、子ども達に尊敬の目を向けられご機嫌だ。苦笑いして見守るのは、ルーサルカだった。彼女はアベルの妻なので、日本人枠で参加だ。これが結婚前だと、両親の吸血種枠だった。半獣人なのに、そちらでの参加は一度もない。
「アンナさん、いい場所お願いしますね」
「任せておいて!」
大公女であるルーサルカや、文官として務めるアンナは、魔王城に住んでいる。日本人は、以前ルシファー達の好意で城下町に家を買ったが、様々な事情で魔王城内の一角に引っ越した。離れのある立派な家は、子沢山のネズミ獣人一家へ賃貸している。いつか隠居したら、また住むつもりらしい。
彼女達は魔王城に部屋があるのだし、別に種族としての見物場所確保に出向かなくても構わないのだ。特にルーサルカは大公女としての仕事もある。おそらく一等地で見物できるだろう。だが魔族にとって最大のお祭りとなれば、やはり参加しておきたい。
場所取りや衣装手配も含め、すでにお祭りは始まっていた。種族としての団結を見せつける場でもあり、他種族と交流する最高の条件が揃う。今の地位に胡座をかいて、楽をする気はなかった。平等なくじ引きに参加し、日本人の地位を高めるべきだろう。それが彼らの見解だ。
「決戦は明日ね!」
まだ前夜だというのに、気合の入ったアンナ。このままでは夜眠れなくなり、明日ミスをするかもしれない。心配になった娘スイが、ハーブティを淹れ始めた。
「お母さん、早く寝てよ。起きられないと困るから」
「分かってるわ」
よく眠れるよう選んだ香りのいいお茶を楽しみ、敗者となったアベル達は引き上げた。
「次こそは勝つぞ」
「いいけど、次は10年後よ?」
ルーサルカは肩を竦めた。日本人夫婦の子は、当然純粋は日本人である。次の即位記念祭で、スイやルイが家庭を持っていたら、ライバルはさらに増えるのに。まったく気づいていないわね。もしかしたら、の話だから言わなくてもいいか。
寿命が長い分、魔族はのんびりしている。日本人であるアベル達もかなり影響された。10年後のジャンケンは、どちらが勝つのか。それとも家庭を持った第二世代が、横から勝利を攫っていくのか。未来は魔王であっても見通せない。
翌日の予定を確認し、アベルに入浴を促す。飴づくりは週に一度のペースで続けられていた。
「あの気味悪い飴があんなに売れるなんてね」
ルーサルカはくすくす笑う。即位記念祭で売り出す予定の飴は、リリス親子から情報漏れし、あっという間に城下町で人気を博した。お祭り用に準備した飴が売り切れ、再び増産体制に入ったばかり。
宝石の形のジュエリー飴は、現時点で情報管理が徹底され、まだ知られていない。お祭りのお土産として、魔王城から提供される予定だった。そっちも増産しておいた方がいいかも。あれこれ考えながら、ルーサルカは夫のアベルと交代で風呂へ向かった。
明日、ルーシア達と相談しなくちゃ。考え事をしていたため、ルーサルカは夫からの求愛を見落とす。お祭り前後はよくある、家庭の悲しいすれ違いだった。
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