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第15章 神のいない神隠し
258.子どもを全員発見しました
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安全のための結界に、何かが干渉する。見えないが、魔力を削り取られるような違和感があった。これが空にも満ちていたとしたら、飛ぶ行為に支障が出た原因かも知れない。
「ラミアや子ども達は無事かしら」
心配そうなベルゼビュートは自らを己の結界で包み、ルシファーの庇護下から出た。探査や感知は精霊女王である彼女の方が得意だ。くるくる巻いた髪を指先で弄りながら、ベルゼビュートは目を閉じた。感じられる範囲を徐々に広げていく。
「少し先の……こっちですわ」
指さした彼女の示す方角へ、二人と二匹は向き直った。アムドゥスキアスが嫌そうに鼻に皺を寄せる。
「妙な感じがします。僕は嫌いです」
「そうは言っても、民の救助は最優先だぞ」
頑張れ、災害担当大臣。そう付け足されると、照れた様子で態度が一変した。
「ま、まあ僕だってやる時はやりますよ」
促されるでもなく先頭に立ち、ふわふわと飛んでいく。ヤンは地上を走ると言い張ったが、何が危険か分からない状況でルシファーに止められた。見える目印を頼りに短距離転移を繰り返しながら、一行は小さな川のほとりに降り立つ。
「この辺りよね……あ、いた!」
魔狼の子だ。水を飲んでいた幼子は、ヤンの気配を感じると飛び上がった。一瞬警戒し、すぐに鼻を鳴らして駆け寄る。
「おお! 無事であったか。他の者共はどこにおる?」
ヤンが元種族長として問えば、きゃんと鳴いた子狼が走る。少し先で振り返り、尻尾を大きく振った。追いかける形でヤン、ルシファー、翡翠竜、ベルゼビュートの順で続く。川からそう離れていない森の中で、なだらかな丘に洞窟があった。
穴は小さめで、ルシファー達が立ったまま進むのは難しい。腰をかがめて覗き込むと、勢いよく熊の子が飛び付いた。
「うわっ、これは元気だ」
受け止めて笑うルシファーに、魔熊の子はくんくんと匂いを嗅ぎ始める。同じ世界から来たと判断したのか、嬉しそうに両腕で抱き着いた。子熊と言えど、魔獣である。その力はかなり強かった。ひっしとしがみ付く様子から、寂しかったのだろうと背を叩く。慰める仕草に子熊は鼻を鳴らして甘えた。
「他の子もいるか?」
尋ねられ、ようやく子熊は奥へ向かって「くーん」と鳴く。呼び寄せられたように、小柄な人が顔を見せた。耳が尖った薄緑の髪はエルフの子、鱗が輝く二人はリザードマンの子だろう。
「皆、無事でよかった。魔王ルシファーだ。全員オレが連れて帰るから、安心していいぞ」
明るい声で話しかければ、エルフの女の子は安心して泣き出した。リザードマンの子は兄弟のようで、泣いたエルフの少女を慰める。
「もう大丈夫だから」
「泣かないで」
立派に少女を守った戦士の一族に、ルシファーは床に座るようにして視線を合わせた。しっかりした筋肉質の兄弟の腕を撫で、胸部に触れ、額に手の甲を当てる。戦士を称える彼らの作法を二人に施し、笑顔を向けた。
「エルフや魔獣の子を良く守った。立派な戦士だな。一族もさぞ誇りに思うだろう」
「「ありがとうございます」」
嬉しそうな彼らが飛び付くのを受け止め、洞窟の奥を探る。だが誰もいない。眉を寄せて後ろのベルゼビュートを呼んだ。
「ラミア達の気配がない。探してくれ」
「この奥ではありませんの?」
「いないと思うが」
「あたくしは奥にいると思いますわ」
意見が分かれた。だがルシファーも己の能力を信じている。奥に誰もいないと感じる感覚が、惑わされたとしたら……かなり危険だった。
「子ども達は全員結界に包む」
まずは子どもの保護から。続いてラミアについて、尋ねることにした。
「ラミアの女性を見なかったか? 下半身が蛇の女性なんだが……」
「私は見たわ」
エルフの子が手を挙げる。ぎりぎり天井に当たらず、突き指せずに済んだ。ほっとしながら、きっちり結界で包んだ子を手招きする。
「どこで見たか教えてくれ」
「ラミアや子ども達は無事かしら」
心配そうなベルゼビュートは自らを己の結界で包み、ルシファーの庇護下から出た。探査や感知は精霊女王である彼女の方が得意だ。くるくる巻いた髪を指先で弄りながら、ベルゼビュートは目を閉じた。感じられる範囲を徐々に広げていく。
「少し先の……こっちですわ」
指さした彼女の示す方角へ、二人と二匹は向き直った。アムドゥスキアスが嫌そうに鼻に皺を寄せる。
「妙な感じがします。僕は嫌いです」
「そうは言っても、民の救助は最優先だぞ」
頑張れ、災害担当大臣。そう付け足されると、照れた様子で態度が一変した。
「ま、まあ僕だってやる時はやりますよ」
促されるでもなく先頭に立ち、ふわふわと飛んでいく。ヤンは地上を走ると言い張ったが、何が危険か分からない状況でルシファーに止められた。見える目印を頼りに短距離転移を繰り返しながら、一行は小さな川のほとりに降り立つ。
「この辺りよね……あ、いた!」
魔狼の子だ。水を飲んでいた幼子は、ヤンの気配を感じると飛び上がった。一瞬警戒し、すぐに鼻を鳴らして駆け寄る。
「おお! 無事であったか。他の者共はどこにおる?」
ヤンが元種族長として問えば、きゃんと鳴いた子狼が走る。少し先で振り返り、尻尾を大きく振った。追いかける形でヤン、ルシファー、翡翠竜、ベルゼビュートの順で続く。川からそう離れていない森の中で、なだらかな丘に洞窟があった。
穴は小さめで、ルシファー達が立ったまま進むのは難しい。腰をかがめて覗き込むと、勢いよく熊の子が飛び付いた。
「うわっ、これは元気だ」
受け止めて笑うルシファーに、魔熊の子はくんくんと匂いを嗅ぎ始める。同じ世界から来たと判断したのか、嬉しそうに両腕で抱き着いた。子熊と言えど、魔獣である。その力はかなり強かった。ひっしとしがみ付く様子から、寂しかったのだろうと背を叩く。慰める仕草に子熊は鼻を鳴らして甘えた。
「他の子もいるか?」
尋ねられ、ようやく子熊は奥へ向かって「くーん」と鳴く。呼び寄せられたように、小柄な人が顔を見せた。耳が尖った薄緑の髪はエルフの子、鱗が輝く二人はリザードマンの子だろう。
「皆、無事でよかった。魔王ルシファーだ。全員オレが連れて帰るから、安心していいぞ」
明るい声で話しかければ、エルフの女の子は安心して泣き出した。リザードマンの子は兄弟のようで、泣いたエルフの少女を慰める。
「もう大丈夫だから」
「泣かないで」
立派に少女を守った戦士の一族に、ルシファーは床に座るようにして視線を合わせた。しっかりした筋肉質の兄弟の腕を撫で、胸部に触れ、額に手の甲を当てる。戦士を称える彼らの作法を二人に施し、笑顔を向けた。
「エルフや魔獣の子を良く守った。立派な戦士だな。一族もさぞ誇りに思うだろう」
「「ありがとうございます」」
嬉しそうな彼らが飛び付くのを受け止め、洞窟の奥を探る。だが誰もいない。眉を寄せて後ろのベルゼビュートを呼んだ。
「ラミア達の気配がない。探してくれ」
「この奥ではありませんの?」
「いないと思うが」
「あたくしは奥にいると思いますわ」
意見が分かれた。だがルシファーも己の能力を信じている。奥に誰もいないと感じる感覚が、惑わされたとしたら……かなり危険だった。
「子ども達は全員結界に包む」
まずは子どもの保護から。続いてラミアについて、尋ねることにした。
「ラミアの女性を見なかったか? 下半身が蛇の女性なんだが……」
「私は見たわ」
エルフの子が手を挙げる。ぎりぎり天井に当たらず、突き指せずに済んだ。ほっとしながら、きっちり結界で包んだ子を手招きする。
「どこで見たか教えてくれ」
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