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第14章 それはオーパーツ?
248.もう一度確認しておこう
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哺乳瓶に使われるワイバーンの翼で作られた乳首を、ぶちっと噛み千切った赤子を、全員が凝視する。
「人魚って、鋭い牙があったか?」
「上腕ほどの大きな魚を、頭から齧って捕食していたので……おそらく」
立派な牙や歯が並んでいそうだ。上半身美女の人魚だが、食事風景はかなりアグレッシブらしい。想像するだけで、痛そうな歯が並んでいると思われた。
「人魚にもう一度聞いてみるか」
「ええ、間違えて渡した可能性もありますし、探しましょう」
アスタロトが同意したので、リリスとイヴにキスをして離れた。正体不明の赤子を抱いたルシファーに、レライエが同行を申し出る。
「気をつけてね、ライ」
「行ってきます」
大公女や魔王妃と挨拶を交わし、レライエはルシファーの斜め後ろに立った。魔法陣で転移する彼らを見送り、リリスは壊れた哺乳瓶を眺める。
「あの歯で噛まれたら大惨事ね。人魚のお母さん、大丈夫かしら」
「同族同士なら、何か方法があるかも知れませんね」
噛まれずに乳を与える。それが可能か議論しながら、奥様会のメンバーは奥庭へ足を向けた。本日のお茶会もとい会議は、奥庭の大木の下で行う予定だった。
巨大なイグアナが昼寝する間を抜けて、彼女達はお茶会の準備を始める。テーブルセットではなく、まずは囲いを作り始めた。その内側に敷き物を用意する。イヴを中に放し、その間にミニテーブルを用意した。被ると危険なので、冷たいお茶に限定している。
「これなら平気そうね」
「お茶菓子をこの上に置いてはどうでしょう」
ルーサルカが土属性を活かして、一部の地面を膝上まで持ち上げた。そこへお茶のカップやお茶菓子を置く。以前は魔王城の備品であるティーセットを利用することが多かった。しかし最近は、それぞれにカップやコップを持ち寄る。
種類が違うので、こうしてごちゃ混ぜに並べても、持ち主の見分けのつく利点があった。
「ライのところのゴルティー。今日はどこへ預けたのかしら」
「さあ」
「夫のアムドゥスキアスが預かってるかも知れませんね」
「大丈夫だといいんだけど」
リリスの不安そうな声に、大公女達はからりと笑った。
「あのライの子ですから、きっと平気ですわ」
「琥珀竜の名をもらったんです。暴れてるんじゃないですか」
「ええ」
勢いよく柵の中を這いずり回る我が子に気づき、リリスは頬を緩めた。そうよね、安全な場所に預けたに決まってるわ。そうでなければ、ライも同行しないでしょうし。
なぜか突然浮かんだ不安を打ち消し、リリスは奥様会を始めた。途中でベルゼビュートも合流する。ジルとイヴがお互いを引っ張り合い、泣きながら殴り合いに発展した。仲がいいのか悪いのか。年が上なので加減した挙句、めちゃくちゃに殴られたジルが半泣きで助けを求めた。
「陛下の御子でも構いません。やっておしまい」
母ベルゼビュートに再戦を嗾けられ、ジルは必死に戦った。が、やはりイヴの攻撃に泣きながら逃げ出す。そんな我が子を抱き上げ、ベルゼビュートは微笑んだ。
「最後までよく戦ったわ。女の子に、ケガをさせなかったのも立派よ。さすがは私の息子ね」
褒められるジルを見て、イヴは指を咥えた。期待の眼差しを母リリスへ向けるが……その反応は予想と違う。
「イヴ、あとでルシファーに言いつけますからね」
ショックを隠しきれない様子で、イヴは背を向けて丸まる。その後ろで「私の子だからケンカするわよね」と笑う母の声に、くるりと一回転した。
「おいで、イヴ」
抱っこすると両手を広げたリリスに目を輝かせ、イヴは全力で突進した。
「人魚って、鋭い牙があったか?」
「上腕ほどの大きな魚を、頭から齧って捕食していたので……おそらく」
立派な牙や歯が並んでいそうだ。上半身美女の人魚だが、食事風景はかなりアグレッシブらしい。想像するだけで、痛そうな歯が並んでいると思われた。
「人魚にもう一度聞いてみるか」
「ええ、間違えて渡した可能性もありますし、探しましょう」
アスタロトが同意したので、リリスとイヴにキスをして離れた。正体不明の赤子を抱いたルシファーに、レライエが同行を申し出る。
「気をつけてね、ライ」
「行ってきます」
大公女や魔王妃と挨拶を交わし、レライエはルシファーの斜め後ろに立った。魔法陣で転移する彼らを見送り、リリスは壊れた哺乳瓶を眺める。
「あの歯で噛まれたら大惨事ね。人魚のお母さん、大丈夫かしら」
「同族同士なら、何か方法があるかも知れませんね」
噛まれずに乳を与える。それが可能か議論しながら、奥様会のメンバーは奥庭へ足を向けた。本日のお茶会もとい会議は、奥庭の大木の下で行う予定だった。
巨大なイグアナが昼寝する間を抜けて、彼女達はお茶会の準備を始める。テーブルセットではなく、まずは囲いを作り始めた。その内側に敷き物を用意する。イヴを中に放し、その間にミニテーブルを用意した。被ると危険なので、冷たいお茶に限定している。
「これなら平気そうね」
「お茶菓子をこの上に置いてはどうでしょう」
ルーサルカが土属性を活かして、一部の地面を膝上まで持ち上げた。そこへお茶のカップやお茶菓子を置く。以前は魔王城の備品であるティーセットを利用することが多かった。しかし最近は、それぞれにカップやコップを持ち寄る。
種類が違うので、こうしてごちゃ混ぜに並べても、持ち主の見分けのつく利点があった。
「ライのところのゴルティー。今日はどこへ預けたのかしら」
「さあ」
「夫のアムドゥスキアスが預かってるかも知れませんね」
「大丈夫だといいんだけど」
リリスの不安そうな声に、大公女達はからりと笑った。
「あのライの子ですから、きっと平気ですわ」
「琥珀竜の名をもらったんです。暴れてるんじゃないですか」
「ええ」
勢いよく柵の中を這いずり回る我が子に気づき、リリスは頬を緩めた。そうよね、安全な場所に預けたに決まってるわ。そうでなければ、ライも同行しないでしょうし。
なぜか突然浮かんだ不安を打ち消し、リリスは奥様会を始めた。途中でベルゼビュートも合流する。ジルとイヴがお互いを引っ張り合い、泣きながら殴り合いに発展した。仲がいいのか悪いのか。年が上なので加減した挙句、めちゃくちゃに殴られたジルが半泣きで助けを求めた。
「陛下の御子でも構いません。やっておしまい」
母ベルゼビュートに再戦を嗾けられ、ジルは必死に戦った。が、やはりイヴの攻撃に泣きながら逃げ出す。そんな我が子を抱き上げ、ベルゼビュートは微笑んだ。
「最後までよく戦ったわ。女の子に、ケガをさせなかったのも立派よ。さすがは私の息子ね」
褒められるジルを見て、イヴは指を咥えた。期待の眼差しを母リリスへ向けるが……その反応は予想と違う。
「イヴ、あとでルシファーに言いつけますからね」
ショックを隠しきれない様子で、イヴは背を向けて丸まる。その後ろで「私の子だからケンカするわよね」と笑う母の声に、くるりと一回転した。
「おいで、イヴ」
抱っこすると両手を広げたリリスに目を輝かせ、イヴは全力で突進した。
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