【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
207 / 530
第13章 海は新たな楽園か

205.海水の竜巻による魔王襲撃?

しおりを挟む
 これは参った。絶対に怒られる状況じゃないか。結界を張ったらバレないかも知れないが、逆にバレた時が怖いな。

 巨大竜巻の中央、目の部分で周囲を見回す。筒状になった海水は、ゆっくりと沖へ進んでいた。転移で外へ出ようとしたが、何らかの制限があるらしい。弾かれてしまった。仕方ないので外へ出ようと物理的に飛んだが……問題は上部も塞がっていることだ。海水の筒は上部が三角に尖って閉じていた。

 三角錐と表現するのが近いかも知れない。

「ケガ人はいないか?」

「はい、無事です」

 ルーシアやアンナに確認したイポスが、報告の形を取って状況をまとめる。子ども達も無事で、誰一人欠けていなかった。逆に言えば、誰か外にいてくれないと、助けを呼べない。この海水に何が含まれているか分からないが、内側で魔法が使えないことは確かだった。

「外へ出る方法、か」

 逆凪で魔力が使えなくなった経験がある。あの時は引き裂かれた体内に魔力が巡ると、激痛が走った。その症状に似ている。先ほど魔力を練ってぶつけたところ、海水は思わぬ反応を示した。

 風により穴が開くはずが、きらきら光ったのだ。虹色のような膜が発生し、魔力はそっくり返還された。攻撃という形を取って。咄嗟に魔法を解除したが、もしルーシアやジンが同じことをしていたら、解除が間に合わなかった可能性がある。

「状況がはっきりするまで、魔法の使用を禁ずる」

「「はい」」

 きゃっきゃとはしゃぐイヴは、他の子ども達同様、目を輝かせていた。巻き上げられた海水に、何かが透けて見えるらしい。手を伸ばそうとしたので、慌てて止めた。

「指が千切れたら困るからな」

「やぁ!」

 嫌だと抗議する愛娘の指先にチュッとキスをして、そっと握り込む。その様子を見ていたリリスは首を傾げた。

「ねえ、イヴが無効化出来るんじゃないかしら」

「出来なかったら指がなくなるぞ」

「それは困るわね」

 側から見るとのんびりした会話だが、一応魔族のトップ会談である。魔王と魔王妃は真剣に、外へ出る方法を考えていた。外から見ると、雑談にしか聞こえないとしても。

「アスタロトを呼んでみるか。アイツは影を使って往復できるかも」

「アシュタもいいけど、ベルゼ姉さんも出来そうよ。海水って水だから精霊が強いんでしょ?」

 話し合いにルーシアがおずおずと割り込んだ。

「お話中失礼しますわ。水の精霊族である私の力が一切及ばないので、おそらくベルゼビュート様も同様かと」

 水の精霊族、それも貴族であるルーシアと風の精霊族のジンは複雑な思いで顔を見合わせた。彼らも脱出のために力を振り絞ってみたが、娘達も含め誰も効果が出ない。たとえ竜巻の勢いに負けたとしても、部分的に反応があるはず。手応えも反応もなく魔力が吸収されたため、二人は困惑顔だった。

「そうか、ならアスタロトだな」

「アシュタしかいないわね」

 魔王夫妻は顔を見合わせ、ルシファーが召喚の魔力を込めて吸血鬼王を呼ぶ。しかし待っても反応がなかった。もう一度呼んで、ルシファーは大きく肩を落とした。

「理由は不明だが、この海水が魔力を遮っているのは確実だな」

 召喚も転移もダメ、その上物理的にも塞がれた。通常ならここで諦めるのだろうが、魔族の王となったルシファーは打たれ強い。癖のある部下を従え、さまざまなトラブルを解決してきた彼は、どこまでも前向きだった。

「ちょっと突進してみるから、イヴを預かってくれ」

「分かったわ」

 魔の森の娘であるリリスも、この点ではルシファーに負けず劣らずだ。通常は夫に「危険だからやめて」と口にするが、彼女は平然と娘を受け取って「頑張ってね」と手を振った。イヴの小さな手を握っての応援に、ルシファーは笑顔で……海水の壁に体当たりをかました。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

外れ婚約者とは言わせない! 〜年下婚約者様はトカゲかと思ったら最強のドラゴンでした〜

秋月真鳥
恋愛
 獣の本性を持つものが重用される獣国ハリカリの公爵家の令嬢、アイラには獣の本性がない。  アイラを出来損ないと周囲は言うが、両親と弟はアイラを愛してくれている。  アイラが8歳のときに、もう一つの公爵家で生まれたマウリとミルヴァの双子の本性はトカゲで、二人を産んだ後母親は体調を崩して寝込んでいた。  トカゲの双子を父親は冷遇し、妾腹の子どもに家を継がせるために追放しようとする。  アイラは両親に頼んで、マウリを婚約者として、ミルヴァと共に自分のお屋敷に連れて帰る。  本性が本当は最強のドラゴンだったマウリとミルヴァ。  二人を元の領地に戻すために、酷い父親をザマァして、後継者の地位を取り戻す物語。 ※毎日更新です! ※一章はざまぁ、二章からほのぼのになります。 ※四章まで書き上げています。 ※小説家になろうサイト様でも投稿しています。 表紙は、ひかげそうし様に描いていただきました。

三度の飯より犬好きな伯爵令嬢は田舎でもふもふスローライフがしたい

平山和人
恋愛
伯爵令嬢クロエ・フォン・コーネリアは、その優雅な所作と知性で社交界の憧れの的だった。しかし、彼女には誰にも言えない秘密があった――それは、筋金入りの犬好きであること。 格式あるコーネリア家では、動物を屋敷の中に入れることすら許されていなかった。特に、母である公爵夫人は「貴族たるもの、動物にうつつを抜かすなどもってのほか」と厳格な姿勢を貫いていた。しかし、クロエの心は犬への愛でいっぱいだった。 クロエはコーネリア家を出て、田舎で犬たちに囲まれて暮らすことを決意する。そのために必要なのはお金と人脈。クロエは持ち前の知性と行動力を駆使し、新しい生活への第一歩を踏み出したのだった!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

加藤伊織
ファンタジー
(全151話予定)世界からは魔法が消えていっており、錬金術師も賢者の石や金を作ることは不可能になっている。そんな中で、生活に必要な細々とした物を作る生活錬金術は「小さな錬金術」と呼ばれていた。 カモミールは師であるロクサーヌから勧められて「小さな錬金術」の道を歩み、ロクサーヌと共に化粧品のブランドを立ち上げて成功していた。しかし、ロクサーヌの突然の死により、その息子で兄弟子であるガストンから住み込んで働いていた家を追い出される。 落ち込みはしたが幼馴染みのヴァージルや友人のタマラに励まされ、独立して工房を持つことにしたカモミールだったが、師と共に運営してきたブランドは名義がガストンに引き継がれており、全て一から出直しという状況に。 そんな中、格安で見つけた恐ろしく古い工房を買い取ることができ、カモミールはその工房で新たなスタートを切ることにした。 器具付き・格安・ただし狭くてボロい……そんな訳あり物件だったが、更におまけが付いていた。据えられた錬金釜が1000年の時を経て精霊となり、人の姿を取ってカモミールの前に現れたのだ。 失われた栄光の過去を懐かしみ、賢者の石やホムンクルスの作成に挑ませようとする錬金釜の精霊・テオ。それに対して全く興味が無い日常指向のカモミール。 過保護な幼馴染みも隣に引っ越してきて、予想外に騒がしい日常が彼女を待っていた。 これは、ポーションも作れないし冒険もしない、ささやかな錬金術師の物語である。 彼女は化粧品や石けんを作り、「ささやかな小市民」でいたつもりなのだが、品質の良い化粧品を作る彼女を周囲が放っておく訳はなく――。 毎日15:10に1話ずつ更新です。 この作品は小説家になろう様・カクヨム様・ノベルアッププラス様にも掲載しています。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

虹色のプレゼントボックス

紀道侑
ファンタジー
安田君26歳が自宅でカップ麺を食ってたら部屋ごと異世界に飛ばされるお話です。 安田君はおかしな思考回路の持ち主でわけのわからないことばっかりやります。 わけのわからない彼は異世界に転移してからわけのわからないチート能力を獲得します。 余計わけのわからない人物に進化します。 作中で起きた事件の真相に迫るのが早いです。 本当に尋常じゃないほど早いです。 残念ながらハーレムは無いです。 全年齢対象で男女問わず気軽に読めるゆるいゆる~いストーリーになっていると思いますので、お気軽にお読みください。 未公開含めて30話分くらいあったのですが、全部行間がおかしくなっていたので、再アップしています。 行間おかしくなっていることに朝の4時に気づいて右往左往して泣く泣く作品を削除しました。 なかなかに最悪な気分になりました。 お気に入りしてくださった方、申し訳ありません。 というかしょっちゅう二行も三行も行間が空いてる小説をよくお気に入りしてくださいましたね。 お気に入りしてくださった方々には幸せになってほしいです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

処理中です...