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64.二つの線が重なった

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 食堂が一番話し合いに向いているので集まった。机に用意したお茶はもう冷め始めている。

 ウルリヒとルードルフが調査させた結果は、予想通りだった。他国の血が入った家はすべて、直系が絶えている。その上、他国を経由した妻や養子はルベリウス国出身だった。

 これだけなら疑いは持っても、疑惑が深まることはなかったのに。ウルリヒはその先の情報を得ていた。

「この人とこの人を除いて、全員がルベリウスの爵位を持っていません」

 意味がわからず首を傾げる。ルードルフと違い、アンネリースはその危険性に気づいた。

「平民なの?」

「ええ、貴族籍が偽装されていました。アメシス王国やセレスタイン国にも、かなり入り込んでいるようです」

 驚いたアンネリースの隣で、ルードルフは首を傾げた。

「貴族じゃないと問題なのか」

「スマラグドスは気にしないが、一般的に他国の貴族に嫁ぐなら自国の貴族籍が必要です。それにスフェーン王国にほとんど被害がないのも、気になります」

 距離が離れているからか。それとも別の理由があるのか。王位交代に伴い、スフェーンは不穏な噂が流れた。他国へ攻め込むため準備をしている。その情報に加えて、実際に武器の購入が増えた。あの時は保留にした情報だが、今になると気になる。

 水を求めて攻めてくるセレスタインを沈静化した今、スフェーンの攻め込む先はどこか。ルベリウスと呼応して、ムンティアに攻め込むのでは? 疑惑と不安が膨らむ。アンネリースは落ち着こうと深呼吸した。

「ふむ。スフェーンはルベリウスを警戒しているのか」

 思わぬ見解を口にするルードルフは、納得した様子だ。計算式を飛ばして答えを出された気分で、アンネリースは中間の計算式部分を埋めていく。

 ルベリウスの偽貴族がほぼいないのは、ずっと警戒してきたから? ムンパールやジャスパーの動きに合わせて、攻め込もうとするルベリウスを警戒して、軍備を増強した。確かに辻褄は合う。

 ただ、口にしたのがウルリヒなら納得できた。なぜルードルフが先に読み切ったのか。

「陛下のお気持ちは理解しますが、ルードルフは戦神の申し子です。誰が敵で味方か、本能的に判断します。彼がスフェーンを敵でないと判断したなら、まず間違い無いでしょう」

 ウルリヒはからりと明るく言い放った。その笑顔に黒い印象はない。むっとした顔で「どういう意味だ」と突っかかるルードルフに、適当な言い逃れを始めた。その言い争いを聞きながら、アンネリースは額に手を当てた。

 先入観でルードルフは考えるのが苦手だと思い込んだ。己の狭い視野を嘲笑うように、彼は己の価値を示す。これからは相談も含めて、ルードルフとの距離が変わるわね。アンネリースは、ウルリヒをちらりと見やる。このために、この話題を出したのかしら。

「残念ですが、ルードルフが冴えているのは戦いだけです。それ以外は見ての通り、まったく役立ちませんので。それと……私はそこまで性悪ではありませんよ」

 最後の一言は信用に値しない。アンネリースはさらりと切り捨て、用意されたお茶を飲み干した。
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