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第二章
69.無理ならば死ね
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ドーレクで作り上げた奴隷の半数をアーベルライン国まで転送した。奪った領地を、人間どもに回収されるのは腹が立つ。そこでカカシのように奴隷アンデッドを置く方針が打ち出された。昼間も動けるため、巡回と畑仕事を言いつける。
「せっかく余ってる労働力だ。オレは米が食いたいぞ」
肥沃な大地に大量の水が必要な稲は、麦と違って育てるのが難しい。麦はある程度放置でもいけるらしいが、稲はすぐに害虫に食われ、雑草に負けると聞いた。川沿いの一角に水田を作らせることにし、残りはすべて麦や家畜の世話に回す。
捕らえられた奴隷エルフにやらせた仕事は、すべて体験させるつもりだった。魔族は人間より丈夫で長生きだが、酷使するのは間違ってる。魔力を封じて御子を盾に脅してきたなら、同じことをされても文句はないはずだ。
ドーレクは王侯貴族だけじゃなく、平民もエルフを使役して楽をしてきた。家事はもちろん労働の全てを押し付け、自分達は豊かさだけを享受する。その役割が入れ替わったからと泣き言を言うのは間違ってるだろ。
月が昇った時間にようやく戻ったオレは、転送したエルフの数を報告書に記す。これをリリィに届けたら、作戦終了を宣言しても構わない。安全のためにドーレクを出たオレは、森の木々の間に寝転がった。やはり森の方が落ち着く。虫に食われてもご愛嬌だし、強めの結界膜を張る手も使えるしな。
「こんなに便利なら、他の国も奴隷にしちゃえばいいのに」
「魔力が足りぬ」
ヴラゴが渋い顔をした。血を吸うだけで病のように感染するなら、話は簡単だ。しかし魔力による刻印が必要条件となれば、個々の魔力量に左右されてしまう。そこを懸念しての言葉に、オレは唸った。
今回は小国で人口が少なかった。だから魔力量は足りたし、不足した時点から残りの人間は殺していくつもりでいた。バルト国のように大きな国となれば、それが難しい。殺す人間の方が多くなるからだ。
「その辺はまたリリィの知恵でも借りるか。それはそうと。オレは明日から数日離脱するんで、後よろしく」
「無責任ではないか?」
「エイシェットに言ってくれ。銀色のお姫様が、海に行きたいそうだ」
なるほどと頷くヴラゴが、ひらひらと手を振った。行ってこいと許可をもらい、苦笑いする。ドラゴンのブレスで滅せられたら、いくら吸血種でも死んでしまう。あれほどの火力を誇る魔族は少ないが、それ故にヴラゴの天敵だった。
「朝出かけるのか?」
「いや、夜中らしい。夜明けを一緒に見るんだと」
「大事にしてやれ。ドラゴンは番との関係を最上位に据えた種族だ」
「うん、わかってるけど……オレは仮だからな」
エイシェットが本心から番たいドラゴンが見つかるまでの繋ぎだ。そう言ったら、巨大蝙蝠に頭を叩かれた。
「何すんだよ」
「ドラゴンは一度決めた番を変えない。お前はもう選ばれたんだ、覚悟を決めろ。無理ならば、死ね」
強い口調で吐き捨て、ヴラゴは飛んでいってしまった。闇夜に溶ける黒い姿を見送り、考え込む。仮でいいと思ってたが、選ばれたのか? 呻きながら難しく考えるのに飽きる頃、舞い降りたエイシェットに咥えられて運ばれた。いつもなら背に乗せてくれるのに……まさか、話を聞いてたんじゃないよな?
「せっかく余ってる労働力だ。オレは米が食いたいぞ」
肥沃な大地に大量の水が必要な稲は、麦と違って育てるのが難しい。麦はある程度放置でもいけるらしいが、稲はすぐに害虫に食われ、雑草に負けると聞いた。川沿いの一角に水田を作らせることにし、残りはすべて麦や家畜の世話に回す。
捕らえられた奴隷エルフにやらせた仕事は、すべて体験させるつもりだった。魔族は人間より丈夫で長生きだが、酷使するのは間違ってる。魔力を封じて御子を盾に脅してきたなら、同じことをされても文句はないはずだ。
ドーレクは王侯貴族だけじゃなく、平民もエルフを使役して楽をしてきた。家事はもちろん労働の全てを押し付け、自分達は豊かさだけを享受する。その役割が入れ替わったからと泣き言を言うのは間違ってるだろ。
月が昇った時間にようやく戻ったオレは、転送したエルフの数を報告書に記す。これをリリィに届けたら、作戦終了を宣言しても構わない。安全のためにドーレクを出たオレは、森の木々の間に寝転がった。やはり森の方が落ち着く。虫に食われてもご愛嬌だし、強めの結界膜を張る手も使えるしな。
「こんなに便利なら、他の国も奴隷にしちゃえばいいのに」
「魔力が足りぬ」
ヴラゴが渋い顔をした。血を吸うだけで病のように感染するなら、話は簡単だ。しかし魔力による刻印が必要条件となれば、個々の魔力量に左右されてしまう。そこを懸念しての言葉に、オレは唸った。
今回は小国で人口が少なかった。だから魔力量は足りたし、不足した時点から残りの人間は殺していくつもりでいた。バルト国のように大きな国となれば、それが難しい。殺す人間の方が多くなるからだ。
「その辺はまたリリィの知恵でも借りるか。それはそうと。オレは明日から数日離脱するんで、後よろしく」
「無責任ではないか?」
「エイシェットに言ってくれ。銀色のお姫様が、海に行きたいそうだ」
なるほどと頷くヴラゴが、ひらひらと手を振った。行ってこいと許可をもらい、苦笑いする。ドラゴンのブレスで滅せられたら、いくら吸血種でも死んでしまう。あれほどの火力を誇る魔族は少ないが、それ故にヴラゴの天敵だった。
「朝出かけるのか?」
「いや、夜中らしい。夜明けを一緒に見るんだと」
「大事にしてやれ。ドラゴンは番との関係を最上位に据えた種族だ」
「うん、わかってるけど……オレは仮だからな」
エイシェットが本心から番たいドラゴンが見つかるまでの繋ぎだ。そう言ったら、巨大蝙蝠に頭を叩かれた。
「何すんだよ」
「ドラゴンは一度決めた番を変えない。お前はもう選ばれたんだ、覚悟を決めろ。無理ならば、死ね」
強い口調で吐き捨て、ヴラゴは飛んでいってしまった。闇夜に溶ける黒い姿を見送り、考え込む。仮でいいと思ってたが、選ばれたのか? 呻きながら難しく考えるのに飽きる頃、舞い降りたエイシェットに咥えられて運ばれた。いつもなら背に乗せてくれるのに……まさか、話を聞いてたんじゃないよな?
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