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外伝
外伝2-4.お転婆姫は濡れ鼠
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アンネが双子を産んでから3年、その間にエルマも結婚した。なんとアンネの夫アルノルト様の従兄弟だとか。そのため、騎士の夫を持ったエルマも、侍女として大公家に残っている。ふふっ、結婚しても一緒なんて素敵だわ。
「ずるいわ、皆アルブレヒツベルガーの関係者なんだもの」
私だけ取り残されたと嘆くのは王妃殿下。その泣き言も数十回聞けば、軽くあしらうようになる。
「もう聞き飽きましたわ、ロッテ様」
「母上、ローザリンデおば様! フィーネが」
駆け寄ったのは、第一王子アルフォンス様だった。フィーネに何かあったのかと、お茶会用のソファから身を起こす。普通は椅子を使うのだけれど、子どもが多いからソファを用意してお茶会をするのが通例になった。楽なのよね。
見回した先で、フィーネが水を滴らせていた。あのお転婆姫は、噴水にでも飛び込んだの?
私的とはいえ、王室のお茶会なので着飾っている。ふわふわとフリルの多いワンピース姿のフィーネは、水に濡れてボリュームが半分ほどに減っていた。けろりとした様子で、擦り剥いた膝を気にする姿は誰に似たのかしら。
「フィーネ、どうしたの」
「おば様、フィーネは噴水の縁を歩いて足を滑らせて……僕が支えられたら良かったんですが」
残念そうに呟く王子の頭を撫でる。国王陛下と同じ金色の瞳が細められた。猫みたいで可愛いわ。
「支えて、一緒にアル様まで落ちる方が事件です。引き上げてくださっただけで十分ですわ」
「あら、お風呂と着替えを用意させるわね」
王妃シャルロッテ様の手配にお礼を言って、濡れたフィーネを拭き始めた。と、泣き声が聞こえる。あの声はエーレンフリートね。
「エレン? お母様のところへいらっしゃい」
呼ぶと茂みから飛び出した息子は、これまたびしょ濡れだった。溜め息が漏れると同時に、頬が緩んでしまう。事情が掴めたのだ。おそらく姉と手を繋いでいて、落ちたのはフィーネの方。支えようとした王子アルフォンスが間に合わず、繋いだ手を離さなかったフィーネがエレンを道連れにしたのね。
「エレンも温まって着替えましょう」
「じゃあ、僕もエレンと一緒にお風呂する!」
第二王子コルネリウス殿下が手を挙げると、双子の姉妹も騒ぎ始めた。
「ずるい!!」
「私達もフィーネ姉様とお風呂」
赤いリボンがレーア、青いリボンがリーゼだ。大公家で一緒に暮らしている双子は、フィーネを実の姉のように慕っていた。
「いいわよ。お風呂入りましょう」
元凶なのに、一番偉そうに胸を逸らす。真っ赤になったアルフォンス殿下が顔を俯けた。ずいぶん紳士的ね。服が濡れて透けると思い、見ないように振る舞ったのだ。この辺りは評価できるわ。夫ヴィルに話したら、それでも及第点でしょうけれど。
アルフォンス殿下のフィーネに対する求愛は当たり前のように続き、フィーネ自身も満更でもないみたい。反対しているのは夫ヴィルだけだった。父親はそういうものです、と教えてくれたのはアンネだ。一般的な父親を知らないから、そうなのねと驚いた。
「もういいわ、全員でお風呂に入りなさい」
ロッテ様の仕切りで、男女に分かれて侍女について行く。見送って、女3人で笑い合った。そういえば、アルフォンス殿下は付き合いがいいのね。彼は濡れていないし汚れていないのに。弟達の面倒を見てくれるつもりかも知れないわ。
「あの子なら言い出しそうね」
ロッテ様がからりと笑う。大きな枝が作る影が、じりじりと移動していた。このソファにも日差しが近づく。日除けテントを用意する侍従達にお礼を言って、束の間の休息を楽しんだ。
「ずるいわ、皆アルブレヒツベルガーの関係者なんだもの」
私だけ取り残されたと嘆くのは王妃殿下。その泣き言も数十回聞けば、軽くあしらうようになる。
「もう聞き飽きましたわ、ロッテ様」
「母上、ローザリンデおば様! フィーネが」
駆け寄ったのは、第一王子アルフォンス様だった。フィーネに何かあったのかと、お茶会用のソファから身を起こす。普通は椅子を使うのだけれど、子どもが多いからソファを用意してお茶会をするのが通例になった。楽なのよね。
見回した先で、フィーネが水を滴らせていた。あのお転婆姫は、噴水にでも飛び込んだの?
私的とはいえ、王室のお茶会なので着飾っている。ふわふわとフリルの多いワンピース姿のフィーネは、水に濡れてボリュームが半分ほどに減っていた。けろりとした様子で、擦り剥いた膝を気にする姿は誰に似たのかしら。
「フィーネ、どうしたの」
「おば様、フィーネは噴水の縁を歩いて足を滑らせて……僕が支えられたら良かったんですが」
残念そうに呟く王子の頭を撫でる。国王陛下と同じ金色の瞳が細められた。猫みたいで可愛いわ。
「支えて、一緒にアル様まで落ちる方が事件です。引き上げてくださっただけで十分ですわ」
「あら、お風呂と着替えを用意させるわね」
王妃シャルロッテ様の手配にお礼を言って、濡れたフィーネを拭き始めた。と、泣き声が聞こえる。あの声はエーレンフリートね。
「エレン? お母様のところへいらっしゃい」
呼ぶと茂みから飛び出した息子は、これまたびしょ濡れだった。溜め息が漏れると同時に、頬が緩んでしまう。事情が掴めたのだ。おそらく姉と手を繋いでいて、落ちたのはフィーネの方。支えようとした王子アルフォンスが間に合わず、繋いだ手を離さなかったフィーネがエレンを道連れにしたのね。
「エレンも温まって着替えましょう」
「じゃあ、僕もエレンと一緒にお風呂する!」
第二王子コルネリウス殿下が手を挙げると、双子の姉妹も騒ぎ始めた。
「ずるい!!」
「私達もフィーネ姉様とお風呂」
赤いリボンがレーア、青いリボンがリーゼだ。大公家で一緒に暮らしている双子は、フィーネを実の姉のように慕っていた。
「いいわよ。お風呂入りましょう」
元凶なのに、一番偉そうに胸を逸らす。真っ赤になったアルフォンス殿下が顔を俯けた。ずいぶん紳士的ね。服が濡れて透けると思い、見ないように振る舞ったのだ。この辺りは評価できるわ。夫ヴィルに話したら、それでも及第点でしょうけれど。
アルフォンス殿下のフィーネに対する求愛は当たり前のように続き、フィーネ自身も満更でもないみたい。反対しているのは夫ヴィルだけだった。父親はそういうものです、と教えてくれたのはアンネだ。一般的な父親を知らないから、そうなのねと驚いた。
「もういいわ、全員でお風呂に入りなさい」
ロッテ様の仕切りで、男女に分かれて侍女について行く。見送って、女3人で笑い合った。そういえば、アルフォンス殿下は付き合いがいいのね。彼は濡れていないし汚れていないのに。弟達の面倒を見てくれるつもりかも知れないわ。
「あの子なら言い出しそうね」
ロッテ様がからりと笑う。大きな枝が作る影が、じりじりと移動していた。このソファにも日差しが近づく。日除けテントを用意する侍従達にお礼を言って、束の間の休息を楽しんだ。
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