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94.未来や家族を語ることの幸せを
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ロッテ様の妊娠を聞いて、一時は気持ちが落ち込んだのに。今は前向きだった。素敵なワンピースを手に入れて、一緒に平たい靴も揃える。それを並べて、隣に小さな赤子用の毛布や服を用意した。
アンネやエルマと選ぶのは楽しくて、途中で精霊があれこれ口を出すのを笑って頷く。精霊はアンネ達に見えないから、話は後にした。多めに選んだ物を運んで、ヴィルや精霊と悩む。どの色が似合うか、あれこれ考えている私にヴィルが顔を寄せる。ちゅっと音を立てて額にキスをされた。
「っ、ヴィル?」
「ごめん、可愛くて我慢できなかった」
しらっとした顔の精霊を睨む。私がリードする必要なんてないじゃない! 目で伝えた抗議に、精霊はぺろっと舌を出して逃げ出す。もう、無責任なんだから。
「選べないなら、全部持っていったらいいさ。いくつあっても困らないはずだよ」
「それもそうね」
気に入れば着てくれるし、いまいちなら予備として保管して貰えばいい。王宮には保管場所がたくさんあると思うから。そう言いながらも、きっとロッテ様は着てくれると思うわ。私と会う日は、私の贈った服を着て、プレゼントした靴を履いて。私が逆の立場なら、絶対にそうするから。
首筋にキスをしたヴィルが、甘えるように首を傾げる。黒髪がさらりと肌を擽った。どうしよう、ドキドキしちゃう。
「ローザは子どもが欲しい?」
「ええ。エーレンフリートを産んであげたいの」
目を見開いた後、ヴィルはほわりと目元を和らげた。
「僕は君の子なら、何人でも欲しいけど……ローザは、どう?」
「そう、ね……女の子も育ててみたいわ。家族が増えるのって、嬉しいと思うの」
お母様が亡くなってから、私に家族はいなくなった。そこへアンネが現れて、ヴィルが私に愛を教えてくれた。優しいエルマも、執事のベルントも。皆、私の家族と同じよ。新しく子どもが増えたら、もっと幸せでしょうね。
拙い言葉で必死に伝えた私の唇を、ヴィルがそっと塞ぐ。重なった唇は乱暴じゃなくて、甘く噛んで吸い上げ、私の心も体も温めてくれた。
「生まれてない我が子に嫉妬しそうだよ」
「ふふっ、なら私もそうね。娘がお父様と結婚すると言い出したら、ケンカしちゃうわ」
「僕が仲裁に入るよ。でもどっちの味方をしても恨まれそうだな」
「当然、私の味方をしてね」
他愛ない話、戯言のようなこのやりとりが、胸に詰まっていく。私の中にあった空洞を埋めて、甘く切なく満たした。
深く口付けたけれど、結婚式までお預け。残念だけどね、そう笑ったヴィルと並んでベッドに横たわった。抱き締める腕が心地よくて、私より少し低い体温が徐々に溶け合うのが嬉しい。
明日の朝、準備をして王妃シャルロッテ様のお祝いに駆けつけるの。ヴィルと腕を組んで、満面の笑みで大切な友人達に「おめでとう」と言うわ。「次は私の番だから、お返しを期待してるわね」なんて、言ってもいいかしら。
優しく赤毛を撫でるヴィルの指先を掴んで指を絡め、私は目を閉じた。明日は素敵な一日になるわね。
アンネやエルマと選ぶのは楽しくて、途中で精霊があれこれ口を出すのを笑って頷く。精霊はアンネ達に見えないから、話は後にした。多めに選んだ物を運んで、ヴィルや精霊と悩む。どの色が似合うか、あれこれ考えている私にヴィルが顔を寄せる。ちゅっと音を立てて額にキスをされた。
「っ、ヴィル?」
「ごめん、可愛くて我慢できなかった」
しらっとした顔の精霊を睨む。私がリードする必要なんてないじゃない! 目で伝えた抗議に、精霊はぺろっと舌を出して逃げ出す。もう、無責任なんだから。
「選べないなら、全部持っていったらいいさ。いくつあっても困らないはずだよ」
「それもそうね」
気に入れば着てくれるし、いまいちなら予備として保管して貰えばいい。王宮には保管場所がたくさんあると思うから。そう言いながらも、きっとロッテ様は着てくれると思うわ。私と会う日は、私の贈った服を着て、プレゼントした靴を履いて。私が逆の立場なら、絶対にそうするから。
首筋にキスをしたヴィルが、甘えるように首を傾げる。黒髪がさらりと肌を擽った。どうしよう、ドキドキしちゃう。
「ローザは子どもが欲しい?」
「ええ。エーレンフリートを産んであげたいの」
目を見開いた後、ヴィルはほわりと目元を和らげた。
「僕は君の子なら、何人でも欲しいけど……ローザは、どう?」
「そう、ね……女の子も育ててみたいわ。家族が増えるのって、嬉しいと思うの」
お母様が亡くなってから、私に家族はいなくなった。そこへアンネが現れて、ヴィルが私に愛を教えてくれた。優しいエルマも、執事のベルントも。皆、私の家族と同じよ。新しく子どもが増えたら、もっと幸せでしょうね。
拙い言葉で必死に伝えた私の唇を、ヴィルがそっと塞ぐ。重なった唇は乱暴じゃなくて、甘く噛んで吸い上げ、私の心も体も温めてくれた。
「生まれてない我が子に嫉妬しそうだよ」
「ふふっ、なら私もそうね。娘がお父様と結婚すると言い出したら、ケンカしちゃうわ」
「僕が仲裁に入るよ。でもどっちの味方をしても恨まれそうだな」
「当然、私の味方をしてね」
他愛ない話、戯言のようなこのやりとりが、胸に詰まっていく。私の中にあった空洞を埋めて、甘く切なく満たした。
深く口付けたけれど、結婚式までお預け。残念だけどね、そう笑ったヴィルと並んでベッドに横たわった。抱き締める腕が心地よくて、私より少し低い体温が徐々に溶け合うのが嬉しい。
明日の朝、準備をして王妃シャルロッテ様のお祝いに駆けつけるの。ヴィルと腕を組んで、満面の笑みで大切な友人達に「おめでとう」と言うわ。「次は私の番だから、お返しを期待してるわね」なんて、言ってもいいかしら。
優しく赤毛を撫でるヴィルの指先を掴んで指を絡め、私は目を閉じた。明日は素敵な一日になるわね。
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