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87.余計なことを言い過ぎたの――SIDE妹
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生まれた時から勝ち組だと思っていた。母は平民だけど美人で、私は小さい頃から可愛いと評判だった。周囲の子より贅沢な暮らしをして、綺麗に着飾る。それだけで男の子達は私を好きだと言ってくれた。
母は特に働く様子がなく、時折父が訪ねてくる。立派な身なりの父は、侯爵なのだと聞いた。私は貴族の娘で、ご令嬢だ。特別な存在なのだと嬉しくなる。兄と弟も父と同じ髪色をしていて、今は本妻がいるから我慢するけど、いずれは侯爵家のお屋敷で暮らすのよ。
望んだ通りに父が私達を引き取る日が来て、大きなお屋敷に馬車で向かう。侯爵家の紋章が入った本物の貴族の馬車だ。乗り心地も良くて、凝った内装や従者の恭しい態度が気に入った。屋敷に着くと、派手な髪色の綺麗な子が待っている。あれが姉? 父と全く違う毛色で、顔立ちも違う。本当に父の血を引いてるの?
前妻だった女が浮気して産んだ気がする。その印象が抜けなくて、姉になった女が何をしても気に入らない。幸いにして母も同じだったみたい。私が姉の持ち物を奪っても、それを身につけても咎められなかった。
赤毛は手入れがされずくすんでいき、表情は暗くなった。いつも青白い顔で、食事を与える回数も減らしたとか。ざまぁみろだわ。一度も手伝いなんてしたことがない綺麗な手が、傷だらけになってたのには笑ったわね。お嬢様の化けの皮が剥がれた。
公爵家に嫁に行ったのは気に入らないけど、その後、驚くほどの贅沢が許された。我慢していた大きなダイヤのネックレスも、お揃いの指輪も買ってもらえたし。新しいドレスを10着注文しても平気なの。あんな女でも金になるのね。
王家主催の夜会で、公爵家に嫁いだはずの赤毛の女が別の男の膝にいた。アバズレじゃない! 夫はどうしたのよ。姉だなんて思えないわ。本当に血が繋がってないんじゃない? 黒髪がヘビみたいで、片目を隠した男だ。でも見えてる半面は悪くないかな。
貴族じゃないと罵られ、父がキレる。その後ろで母が加勢して、私も声を張り上げた。私は侯爵令嬢なのよ? あんたとは違う。夫の公爵でもない男と、堂々と浮気する女のくせに。父の実子じゃないかも知れないのに、偉そうだわ。
喚き散らした後、母が騎士に拘束された。そこで怖くなる。だけど引けなかった。この女相手に私が負けるなんて有り得ない。今はあの時の判断を――心から悔やんでいる。何も言わずに大人しくしていたら、母や兄弟と同じ犯罪奴隷で済んだのよ。
黒髪の男は大公閣下だった。公爵より地位が高く、王族と並ぶ権力を誇る人。姉だった赤毛の女を選び、その復讐の刃を振り下ろした。幸せだった私の家族は崩壊し、父は投獄されたまま。母や兄弟は鉱山で働いている。私は……呪術を掛けられ、鉱山の麓にある小屋で暮らした。
昼夜関係なく訪ねてくる男達が、決まった呪文を唱える。否応なく足を開くのが私の仕事だった。呪術は死ぬまで消えることなく、呪文を唱えた相手に服従させられる。若さが消えて醜くなっても、奴隷として使われるのだろう。
きつい仕事の憂さを晴らす場末の小屋は、他にも数人の女がいる。だけど一番若いのが私なので、いつも私に指名が入った。小屋での雑用もやらされ、地位は一番低い。
侯爵の血を引くのよ! そう叫んで抵抗したら、顔が腫れるまで殴られた。貴族の血を引くならちょうどいい、そう言って殴られ蹴られ、体内を汚される。余計なことを言わないのが一番賢い。今なら分かるわ。私は余計なことを言い過ぎたの。
母は特に働く様子がなく、時折父が訪ねてくる。立派な身なりの父は、侯爵なのだと聞いた。私は貴族の娘で、ご令嬢だ。特別な存在なのだと嬉しくなる。兄と弟も父と同じ髪色をしていて、今は本妻がいるから我慢するけど、いずれは侯爵家のお屋敷で暮らすのよ。
望んだ通りに父が私達を引き取る日が来て、大きなお屋敷に馬車で向かう。侯爵家の紋章が入った本物の貴族の馬車だ。乗り心地も良くて、凝った内装や従者の恭しい態度が気に入った。屋敷に着くと、派手な髪色の綺麗な子が待っている。あれが姉? 父と全く違う毛色で、顔立ちも違う。本当に父の血を引いてるの?
前妻だった女が浮気して産んだ気がする。その印象が抜けなくて、姉になった女が何をしても気に入らない。幸いにして母も同じだったみたい。私が姉の持ち物を奪っても、それを身につけても咎められなかった。
赤毛は手入れがされずくすんでいき、表情は暗くなった。いつも青白い顔で、食事を与える回数も減らしたとか。ざまぁみろだわ。一度も手伝いなんてしたことがない綺麗な手が、傷だらけになってたのには笑ったわね。お嬢様の化けの皮が剥がれた。
公爵家に嫁に行ったのは気に入らないけど、その後、驚くほどの贅沢が許された。我慢していた大きなダイヤのネックレスも、お揃いの指輪も買ってもらえたし。新しいドレスを10着注文しても平気なの。あんな女でも金になるのね。
王家主催の夜会で、公爵家に嫁いだはずの赤毛の女が別の男の膝にいた。アバズレじゃない! 夫はどうしたのよ。姉だなんて思えないわ。本当に血が繋がってないんじゃない? 黒髪がヘビみたいで、片目を隠した男だ。でも見えてる半面は悪くないかな。
貴族じゃないと罵られ、父がキレる。その後ろで母が加勢して、私も声を張り上げた。私は侯爵令嬢なのよ? あんたとは違う。夫の公爵でもない男と、堂々と浮気する女のくせに。父の実子じゃないかも知れないのに、偉そうだわ。
喚き散らした後、母が騎士に拘束された。そこで怖くなる。だけど引けなかった。この女相手に私が負けるなんて有り得ない。今はあの時の判断を――心から悔やんでいる。何も言わずに大人しくしていたら、母や兄弟と同じ犯罪奴隷で済んだのよ。
黒髪の男は大公閣下だった。公爵より地位が高く、王族と並ぶ権力を誇る人。姉だった赤毛の女を選び、その復讐の刃を振り下ろした。幸せだった私の家族は崩壊し、父は投獄されたまま。母や兄弟は鉱山で働いている。私は……呪術を掛けられ、鉱山の麓にある小屋で暮らした。
昼夜関係なく訪ねてくる男達が、決まった呪文を唱える。否応なく足を開くのが私の仕事だった。呪術は死ぬまで消えることなく、呪文を唱えた相手に服従させられる。若さが消えて醜くなっても、奴隷として使われるのだろう。
きつい仕事の憂さを晴らす場末の小屋は、他にも数人の女がいる。だけど一番若いのが私なので、いつも私に指名が入った。小屋での雑用もやらされ、地位は一番低い。
侯爵の血を引くのよ! そう叫んで抵抗したら、顔が腫れるまで殴られた。貴族の血を引くならちょうどいい、そう言って殴られ蹴られ、体内を汚される。余計なことを言わないのが一番賢い。今なら分かるわ。私は余計なことを言い過ぎたの。
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