【完結】愛してないなら触れないで

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

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61.勘違いで遠回りをした――SIDEヴィル

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 一度目の死因をローザは「餓死」だと言った。正確には毒殺中の餓死だ。毒があることで知られた、紫の花が咲く球根を彼女の食事に混ぜた。顔色が悪くなり、吐くことが増えたローザの体力は消耗していく。その状態で、当主の従姉妹ユリアーナが屋敷に入り込んだ。

 流行り病で混乱する領地で、能力不足故に問題の収束が図れないレオナルドは足止めを食う。その間に毒は彼女を侵食した。子が流れなかったのが不思議なほどだ。生まれた子を「病から遠ざける」という名目で奪い、離れに押しやった。当然、使用人達はローザを助けない。動いたのはアンネだけだった。

 ろくに暖房も家具もない部屋で、病人が治るはずもない。医者も通わぬ離れで、さらに衰弱は進んだ。体内に蓄積された毒は、ローザを苦しめただろう。幻覚や幻聴などに苛まれ、精神が弱っていく。さらに嘔吐が体力も奪い、彼女は食事を摂れなくなった。

 毒により栄養を摂取出来無くなれば、最終的な死因は餓死だ。アンネが必死にかき集めた食材では、延命には至らなかった。いや、下手に延命した方が苦しみが長引いたかもしれない。レオナルドの反応からして、彼が覚えているのはこの時らしい。

 時間を巻き戻した二度目の死は、もっと早かった。子どもが生まれる直前に、離れが火事で焼け落ちた。助けるために手を打ったが、間に合わない。あの時、他の貴族への根回しなど後にすればよかったのだ。婚姻しているローザの名誉を重んじて、あれこれと動いていた。

 餓死まで時間があったし、精霊の浄化能力で彼女を助けられると思ったのだ。だが、僕が動いたことで他家から屋敷に連絡が入った。執事やユリアーナは危機感を抱いた。ローザの容体がレオナルドの耳に入れば、自分達の身が危ないと。

 火をつけて焼き殺そうとした。亡くなったローザの死体は、無残に潰されている。古く脆かった離れには火種となる家具が少なかった。そのため火が回るのに時間がかかったのだ。這いずって逃げたローザの命を奪ったのは、崩れた壁の瓦礫だった。

 美しかった彼女の面影を探す余地がないほど無残な状態で、僕は叫んで己を責めた。今度こそ、その想いでレオナルドを彼女の隣に残すために次の手を打つ。

 二度目の巻き戻しは結婚式の手前だった。だがレオナルドの領地に流行る病を僕が手出ししたことで、また状況が狂う。レオナルドは領地に戻らず王都にいたが、浮気を疑った妻を惨殺したのだ。朝方に見知らぬ男がローザの部屋から出て行った。ただそれだけのことで、彼女に確かめもせず首を刎ねた。

 後にユリアーナの策略であったと知るが、レオナルドは従姉妹と結婚した。二人の首を刎ねて、僕は時間を巻き戻した。あの時の後悔は忘れない。だがこの期に及んでも、ローザへの告白に踏み切れないでいた。ローザはレオナルドを愛していると思ったから。

 息子を残す程、愛しているのだと――勘違いと知れたのは、最後の巻き戻しをする直前だ。今度こそ幸せにしたいと願い、届けられた報告書の内容に目を見開く。これを最後と決めて、右目を対価に差し出した。時間が巻き戻っても、僕が支払った対価はそのままだ。右目を失っても、ローザに会いたかった。









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ヴィル視点、もう1回入ります
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