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49.堕落の先の快楽 ※

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「ああ――っ、あ、んぅ……セイっ、セイル、はぁ、ぁ」

 快楽を貪り腰を揺らす悪魔に遠慮なく、奥まで一気に突き立てた。喉を反らして鳴く唇がせわしなく息を乱す。青い瞳に浮かんでいた涙が、瞬きもなく零れ落ちた。飽和した雫が伝うのを、舌で舐めとる。その動きに密着度の高まったアモルが苦しそうな声を上げた。

「あっ、あ……ぅ」

「中に欲しいのか? アモル」

 囁いた途端に、内壁がうねるように搾り上げる。解き放ちそうになった欲を堪え、アモルの目を覗き込む。やっぱり宝石みたいだ。こいつはオレの目を褒めるが、サファイアの青は悪魔にとって最上級の色だった。美しい器に嵌められるに相応しい。

 悪戯心で開いた瞳に舌を這わせた。眼球がつるりとした滑らかさで舌を受け入れる。涙の味に加え、どこか甘いそれは癖になりそうだった。

「んぁ……あっ、やぁ…ん、はぁ、も……」

 もっとと強請ったのか、もう嫌だと拒んだのか。アモルの表情は蕩けていた。どちらでも構わない。ただ欲をぶつける行為なのだから。

 ぐっと奥まで突き立てたモノを一度引き抜き、ぎりぎりの位置で止まる。潤んだ目が至近距離で見つめ返した。世界の時間が止まったような……不思議な感覚が襲う。

「はや、もっ……と寄越せ」

 自らの身体を明け渡した男とは思えない、欲深い本音を呟いた唇を塞ぐ。しっとりと温かく柔らかな肉壁へ再び突き入れた。くぐもった悲鳴が口の中で乱反射し、縮こまった舌を噛んで吸い上げる。水音が淫らにくちゅくちゃと響き、耳から汚染されていくようだった。

 ああ……こんな堕ち方なら悪くない。

 アモルの足がぎゅっと絡んで、腰を固定し自ら揺する。逃がさない、その強い意思を秘めた強欲さがひどく心地よかった。このままアモルに支配されたら、どれだけ満たされるのか。神が埋めぬ心の隙間が消え、温かく心地よい感情が新たに湧き出す。

 本能が命じるままに欲を突き立て腰を揺すり、神や教会が否定する異端の魔性を貪った。教会の祭壇に敷かれる聖別された絨毯の上で、血塗れのマリア像に見下ろされたオレはさぞ滑稽だろう。悪魔祓いの司教である服はすでに脱げ、かろうじて腕や足に巻き付くばかり。

 裸の悪魔に跨り、開かれ誘う穴に己の欲を突き立て、獣のように腰を振る。その醜さを客観的に判断する自分が、熱に侵されていく。神罰が下ろうと構わなかった。この身を盾にして100年の安寧を手に入れたのだから。

「……ふっ、う……セイル」

 嘘の感じられない、愛しさすら滲ませた声で名を呼んだアモル。滲んだ汗をそのままに微笑み、接吻けを強請る。頬を撫でる手に引き寄せられ、彼の唇を塞いだ。舌を絡め、唾液を流し込み、とても美しいとは言えないキスが彼の肌を汚していく。

「おまえ、を……くれ」

 中に出せ。そう告げる悪魔の内壁が搾り上げる動きに変わる。意図的に翻弄してくる肉を振り切り、思うままに貪った。思惑になど乗ってやるか。主導権を持つのはオレだ。そう示して、一番奥に突き刺したモノが弾ける。

 胎の中に注がれる熱を、愛おしそうにアモルが撫でる。腹を何度も往復する指はかすかに震えていた。疲れた身体を預ける肌はしっとりと汗ばみ、だが心地よい温かさを与えてくれる。いままで冷たく感じた肌が嘘のようだ。目を閉じて、聞こえる呼吸の音を重ねた。
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