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36.探し求めた半身の行方
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*****SIDE キメリエス
集まった獣のような魔物を眺め、俺は笑みを深めた。
彼らを上手に嗾けて人間を襲わせればいい。悲鳴や苦痛の表情に興味はないが、それを嫌う存在をよく知っていた。人々が苦しめば、己を犠牲にすることを厭わない『彼』は現れざるを得ないだろう。
『彼』が現れれば、アモルの願いはほぼ叶う――仲間と呼んで差し支えないほど、奴を認めていた。だからこそ、こうして面倒な纏め役を買って出たのだ。
人が殺され傷つけられるたび、『彼』は傷つく。どこに身を潜めていようと、必ず最後には顔を見せずにいられない。そんな存在だからこそ、アモルも『彼』に固執したのだから……。
「キメリエス!」
思い浮かべた白い翼の堕天使が、ばさりと羽根を散らせて舞い降りる。ひどく興奮した様子抱きついた。普段は淡々として冷静なアモルの浮かれた様子に、受け止めた俺の首が傾がる。
「どうした?」
「見つけた! 間違いなく『あいつ』だ」
「っ……」
本当かと重ねて問う眼差しを受け止め、アモルは口元に笑みを浮かべて頷く。驚きに言葉が見つからない俺の表情が徐々に綻んだ。普段の大人びて作る顔が嘘みたいに、どこか幼い安らいだ表情で細く長い息を吐く。
見つかった。ようやくだ。長く長く、気が遠くなるほど探した『あいつ』を迎えねばなるまい。
「そうか」
見つかったことに安堵の声を漏らす俺にとって、探している『あいつ』は己の半身も同然の存在だった。常に傍らにあり、常に共にあることを望んできた。互いに同じ想いだったが……『彼』が身を隠したとき、その半身の絆は失われたのだ。
己の身を生きたまま引き裂かれる痛みに襲われ、探し求めた存在が見つかった――。
「『あいつ』は向こう側にいた。セイルの隣に……」
告げられた短い言葉からすべてを悟り、俺は僅かに顔を俯けた。さらりと流れた黒髪は珍しく後ろで結っていない。半分隠れた顔の口元がにやりと危険な笑みを浮かべた。
「ならば、正すだけだ」
在るべき場所に在るよう……正しい場所にすべてを戻せばいい。神がそれを拒むなら排除し、世界がそれを邪魔するなら壊すだけのこと。覚悟を秘めた俺の呟きに、アモルは大人びた笑みで「ああ」と同意を零した。
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『彼』が現れれば、アモルの願いはほぼ叶う――仲間と呼んで差し支えないほど、奴を認めていた。だからこそ、こうして面倒な纏め役を買って出たのだ。
人が殺され傷つけられるたび、『彼』は傷つく。どこに身を潜めていようと、必ず最後には顔を見せずにいられない。そんな存在だからこそ、アモルも『彼』に固執したのだから……。
「キメリエス!」
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「どうした?」
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「っ……」
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見つかった。ようやくだ。長く長く、気が遠くなるほど探した『あいつ』を迎えねばなるまい。
「そうか」
見つかったことに安堵の声を漏らす俺にとって、探している『あいつ』は己の半身も同然の存在だった。常に傍らにあり、常に共にあることを望んできた。互いに同じ想いだったが……『彼』が身を隠したとき、その半身の絆は失われたのだ。
己の身を生きたまま引き裂かれる痛みに襲われ、探し求めた存在が見つかった――。
「『あいつ』は向こう側にいた。セイルの隣に……」
告げられた短い言葉からすべてを悟り、俺は僅かに顔を俯けた。さらりと流れた黒髪は珍しく後ろで結っていない。半分隠れた顔の口元がにやりと危険な笑みを浮かべた。
「ならば、正すだけだ」
在るべき場所に在るよう……正しい場所にすべてを戻せばいい。神がそれを拒むなら排除し、世界がそれを邪魔するなら壊すだけのこと。覚悟を秘めた俺の呟きに、アモルは大人びた笑みで「ああ」と同意を零した。
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