14 / 61
14.孤児を脅かす怪異
しおりを挟む
言い渡された任務に顔をしかめた。
教会が運営する孤児院での、不審な騒動への対処だ。子供だけが目撃する不審な人影、大人には聞こえない物音や声……混乱した子供達の懇願により、神父と修道女が話し合って要請した事例だった。
昨夜の夢が脳裏を過ぎる。あの夢の直後、まるで暗示だったように『孤児をおびやかす怪異』の任務が下されたのは、何らかの作為がある気がした。常に命懸けの場で磨いてきた、悪魔狩りとしての自分の直感は疑わない。
「クルス……、これは彼女の透視がらみか?」
直球で尋ねれば、隠す様子なく頷かれた。
「そうですよ、リリトが視た結果からセイルが選ばれました」
歴代最高の能力を誇る彼女の透視だから、クルスは疑うことなく決定したのだ。
オレが解決する未来を予知するリリトの能力は神に属するもので、悪魔ごときが関与できる領域ではない。ならば、自分で考えすぎているのだろう。
そう結論付けて、オレはゆったりとローブをさばいて膝をつく。
「しかと承りました」
決められた手順どおりに一礼し、数歩後ろに下がってから身を起こした。面倒な儀礼だが、彼らの間にも最低限のルールと立場が存在している。それを無視して友人同士の気安さですべてを済ますことは出来なかった。
「神のご加護を」
いつもと同じ挨拶を声にした金髪の友人に笑顔を向け、オレは踵を返した。さきほどの笑顔とは打って変わった厳しい表情は、この任務自体を疑う気持ちが滲んでいる。上手に感情を隠し、いつも通りの態度を作ったオレは荘厳な広間を後にした。
辿りついた孤児院の子供達は、とても明るい表情をしている。神父やシスターもさほど深刻な事態だと考えていないようで、オレを迎える彼らの態度は温和そのものだった。
まるで客人のように迎えられ、お茶を出される。丸テーブルを囲む彼らから、特に不審な気配は感じられなかった。それだけ確認すれば、神父とシスターに尋ねることはない。
一口だけお茶を飲んで切り出した。
「子供達と話せますか?」
「どうぞ」
本国から派遣された司教へ丁重に応対する神父へ一礼し、シスターの案内で子供達が掃除をしている庭へ顔を出す。知らない大人を遠巻きに眺めるより好奇心で寄ってくる姿は、大人を怖いものだと認識していない証拠だった。つまり、子供達は健全な環境で、愛情深く育てられている。
ならば、ストレスによる幻聴や幻覚の可能性は消えた。
教会が運営する孤児院での、不審な騒動への対処だ。子供だけが目撃する不審な人影、大人には聞こえない物音や声……混乱した子供達の懇願により、神父と修道女が話し合って要請した事例だった。
昨夜の夢が脳裏を過ぎる。あの夢の直後、まるで暗示だったように『孤児をおびやかす怪異』の任務が下されたのは、何らかの作為がある気がした。常に命懸けの場で磨いてきた、悪魔狩りとしての自分の直感は疑わない。
「クルス……、これは彼女の透視がらみか?」
直球で尋ねれば、隠す様子なく頷かれた。
「そうですよ、リリトが視た結果からセイルが選ばれました」
歴代最高の能力を誇る彼女の透視だから、クルスは疑うことなく決定したのだ。
オレが解決する未来を予知するリリトの能力は神に属するもので、悪魔ごときが関与できる領域ではない。ならば、自分で考えすぎているのだろう。
そう結論付けて、オレはゆったりとローブをさばいて膝をつく。
「しかと承りました」
決められた手順どおりに一礼し、数歩後ろに下がってから身を起こした。面倒な儀礼だが、彼らの間にも最低限のルールと立場が存在している。それを無視して友人同士の気安さですべてを済ますことは出来なかった。
「神のご加護を」
いつもと同じ挨拶を声にした金髪の友人に笑顔を向け、オレは踵を返した。さきほどの笑顔とは打って変わった厳しい表情は、この任務自体を疑う気持ちが滲んでいる。上手に感情を隠し、いつも通りの態度を作ったオレは荘厳な広間を後にした。
辿りついた孤児院の子供達は、とても明るい表情をしている。神父やシスターもさほど深刻な事態だと考えていないようで、オレを迎える彼らの態度は温和そのものだった。
まるで客人のように迎えられ、お茶を出される。丸テーブルを囲む彼らから、特に不審な気配は感じられなかった。それだけ確認すれば、神父とシスターに尋ねることはない。
一口だけお茶を飲んで切り出した。
「子供達と話せますか?」
「どうぞ」
本国から派遣された司教へ丁重に応対する神父へ一礼し、シスターの案内で子供達が掃除をしている庭へ顔を出す。知らない大人を遠巻きに眺めるより好奇心で寄ってくる姿は、大人を怖いものだと認識していない証拠だった。つまり、子供達は健全な環境で、愛情深く育てられている。
ならば、ストレスによる幻聴や幻覚の可能性は消えた。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。


学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――
天海みつき
BL
族の総長と副総長の恋の話。
アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。
その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。
「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」
学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。
族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。
何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる