3 / 33
3
しおりを挟む
すっと足を引いて優雅に一礼し、エスコートの為に手を差し伸べる。
「待ってたよ、リズ」
にっこりと笑顔を添えた。仕事で向けられているのだと理解していても、騙されたくなる。そっとサリエルの手に自分の指を触れさせ、恥らうように顔を伏せた。
美しいブロンドをゴージャスな巻き毛にして、ボリュームをもたせる。派手な外見と裏腹の初心な仕草は男が誘う。豊かな胸元に輝くダイヤは、軽く見積もって15ct近くあった。
彼女の肢体を包む高価な毛皮やダイヤが、リズの豊富な財力を物語る。
「……あちらの女性は平気なの?」
先ほどまでの天国から地獄へ突き落とされたレミを心配するリズの声に、サリエルはさらに笑みを深めた。彼女達が落とす金を操る為のスパイスとして、嫉妬は必要だ。
だから、背中に視線を感じながら振り返らない。次にレミが来るときは、札束を抱えて来るだろう。そして、レミから絞れる金額は……次が最後になる。最近の派手な使い方を見れば、彼女の金が尽き始めているのは明白だった。
すでにかなりの借金をしている筈だ。
「今のオレには、リズの方が大切なんだけど」
抱き寄せて、耳元で囁く。
顔を赤らめて寄り掛かるリズの腰を抱きエスコートするサリエルは、最後までレミを振り返らなかった。言葉通り自分だけを見てくれるとリズが錯覚するのも、お金さえあればサリエルを独占できるとレミが誤解するのも、すべて彼女達の勝手だ。逆に言うなら、サリエルが頼んだ訳ではない。
「ジン、ヘルプについてくれ」
手招きされ、子飼いのホストを呼び寄せた。すでに、カインは指名を受けて席を外している。ヘルプとして動くため、自分の客が少ないジンだが、彼の売上げはサリエルのお陰で№3から落ちた事がなかった。ここ半年ほどは、№2を維持している。
モデル並の顔立ちと優雅な物腰、物静かな雰囲気は、珍しいブロンズ系の髪や緑瞳と相まって、かなり引く手数多なのだ。それでもジンは、サリエルのヘルプに徹して来た。無用な競争を嫌う彼の性格も影響しているのだろう。
「サリエル、今日は時間があまり取れなくて……ごめんなさい」
最初に謝る彼女の指を手で包み、口元まで持ち上げてキスを落とす。まだ腰を抱かれたままソファに腰掛けるリズの顔が、薄暗い照明でも分かるほど赤く染まった。
「寂しいな」
囁かれると、時間がない自分が悪い気がしてしまう。サリエルの術中に嵌っている自覚があっても、夢の中に居たいと願う愚かな自分に酔っていた。
「待ってたよ、リズ」
にっこりと笑顔を添えた。仕事で向けられているのだと理解していても、騙されたくなる。そっとサリエルの手に自分の指を触れさせ、恥らうように顔を伏せた。
美しいブロンドをゴージャスな巻き毛にして、ボリュームをもたせる。派手な外見と裏腹の初心な仕草は男が誘う。豊かな胸元に輝くダイヤは、軽く見積もって15ct近くあった。
彼女の肢体を包む高価な毛皮やダイヤが、リズの豊富な財力を物語る。
「……あちらの女性は平気なの?」
先ほどまでの天国から地獄へ突き落とされたレミを心配するリズの声に、サリエルはさらに笑みを深めた。彼女達が落とす金を操る為のスパイスとして、嫉妬は必要だ。
だから、背中に視線を感じながら振り返らない。次にレミが来るときは、札束を抱えて来るだろう。そして、レミから絞れる金額は……次が最後になる。最近の派手な使い方を見れば、彼女の金が尽き始めているのは明白だった。
すでにかなりの借金をしている筈だ。
「今のオレには、リズの方が大切なんだけど」
抱き寄せて、耳元で囁く。
顔を赤らめて寄り掛かるリズの腰を抱きエスコートするサリエルは、最後までレミを振り返らなかった。言葉通り自分だけを見てくれるとリズが錯覚するのも、お金さえあればサリエルを独占できるとレミが誤解するのも、すべて彼女達の勝手だ。逆に言うなら、サリエルが頼んだ訳ではない。
「ジン、ヘルプについてくれ」
手招きされ、子飼いのホストを呼び寄せた。すでに、カインは指名を受けて席を外している。ヘルプとして動くため、自分の客が少ないジンだが、彼の売上げはサリエルのお陰で№3から落ちた事がなかった。ここ半年ほどは、№2を維持している。
モデル並の顔立ちと優雅な物腰、物静かな雰囲気は、珍しいブロンズ系の髪や緑瞳と相まって、かなり引く手数多なのだ。それでもジンは、サリエルのヘルプに徹して来た。無用な競争を嫌う彼の性格も影響しているのだろう。
「サリエル、今日は時間があまり取れなくて……ごめんなさい」
最初に謝る彼女の指を手で包み、口元まで持ち上げてキスを落とす。まだ腰を抱かれたままソファに腰掛けるリズの顔が、薄暗い照明でも分かるほど赤く染まった。
「寂しいな」
囁かれると、時間がない自分が悪い気がしてしまう。サリエルの術中に嵌っている自覚があっても、夢の中に居たいと願う愚かな自分に酔っていた。
1
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
おれの大好きなイケメン幼なじみは、何故だか毎回必ず彼女にフラれてしまうんです。
そらも
BL
周囲(主に彼女)に被害をまき散らしまくる、鈍感幼なじみの恵ちゃんとりょうくんのある日のお話。
「これ、絶対、モグ、んっ迷宮入りの大事件だよねっモグモグっ」
「な~…俺チャラく見えて、結構尽くすほうだってのに…っと、まぁたほっぺにパンくずつけてんぞ。ほらっこっち向け」
「んむっ、ありがと~恵ちゃん。へへっ」
「ったく、ほんとりょうは俺がついてないとダメだなぁ♡」
「え~♡」
……終始こんな感じの、(彼女にとって)悪魔のような二人組の惚気全開能天気会話劇であります。
今回はまさかの初めてのR-18じゃない普通のBL話です。連載ものですが短編予定ですので、多分すぐに終わります。
ぶっちゃけ言うと、ちゅうさえもしません(マジかい)最後まで鈍感です。
それでもオッケーという方は、どうぞお暇つぶしに読んでやってくださいませ♪
※ 素敵な表紙は、pixiv小説用フリー素材にて、『やまなし』様からお借りしました。ありがとうございます!
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる