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104.この子は次の妖精姫みたい

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 飛び込んだアレクシス様は、鎧姿でした。兜は被っておりませんが、全身ゴツゴツと覆われています。見回りだったので、革製の鎧ですね。これが戦やドラゴン退治なら金属製の鎧でした。

 過去に見た姿が懐かしく甦ります。私を助けてくれた英雄は、金属の鎧が凹むほどの攻撃を防ぎ切りました。ロブの目から見た光景が、浮かんで消えます。

『どちらも無事だ』

 笑って立ち上がる妖精王様が譲った場所に、アレクシス様が膝を突きます。苦笑いするアントンが、慣れた手つきで後ろから鎧を緩め始めました。

 妖精王様が無事と言い切ったことで、誰もがほっとした表情を浮かべます。私の失敗で、皆に心配をかけてしまいました。

「ごめんなさい……気をつけるわ」

 次から……の部分は省略します。なんとなく、今回も注意して欲しかったと言われそうな気がしました。

「ヴィーは無事なの?!」

「急げ、早くしろ」

 騒がしい玄関の方へ首を向けますが、室内からは分かりません。でも聞こえた声は両親のような?

「本当によかった、ヴィー。何かあれば、いくら後悔しても足りない……ああ、そうだ。義父殿と義母殿をお連れした」

 アレクシス様の言葉が終わると同時に、お父様を押し除けてお母様が飛び込んできました。横たわる私の姿に、慌てて駆け寄ります。出遅れたお父様が苦笑いし、続いて妖精王様に気付いて頭を下げました。

「ありがとうございます、妖精王様」

 私を助けたと感じたお父様の声に、妖精王様は首を横に振りました。絶世の美貌なのに、子どもっぽい仕草ですわ。

『私ではない。妖精達が自ら動いた』

 きらきらと集まる光は、点滅しながら私に触れる。触っては離れる動きは不思議ですが、妖精王様は笑って教えてくれました。

『どうやら、その子が次の妖精姫だな。我が子らが守護している』

「あらぁ、女の子なの?!」

 お母様が大喜びで手を握り締めます。生まれてくる子の性別が先に分かれば、道具も揃えやすいので助かります。

「私の次の……」

『同世代に被るのは珍しいが、そういうこともあるだろう』

 くつりと喉を鳴らして笑い、妖精王様は消えてしまいました。挨拶もしておりませんし、お礼もまだですわ。後でまたお話しさせていただきましょう。

 話している間に、アレクシス様の鎧はアントンの手で、器用に脱がされていました。残っているのは膝から下くらいですね。ブーツと一体になっているので、脱がせるのは諦めたようです。

 アレクシス様は私の妊娠を聞いて、すぐに実家に知らせてくれたようです。こちらへ向かうと連絡が入ったので、見回りをしながら迎えに行ってくれたとか。いつもは大騒ぎで馬を飛ばすお兄様がいないのは、お義姉様も妊娠の兆候があるようで。

「おめでたいことが続きますわね」

 ふふっと笑い、体を起こして気づきます。背中や肩の痛みがないわ。マーリン様が消してくれたのですね。この分も重ねて、果物でお礼をご用意しましょう。妖精は甘い果物が大好きなのですから。

 まだほとんど平らなお腹に手を置き、優しく撫でる。反応などないのを承知で、心で話しかけました。

 ――大切な私のお姫様、ゆっくりでいいの。元気に生まれてきてね。
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