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96.騎士団は半裸の出迎え

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 騎士団は上半身裸も多く、ゆるゆるとシャツを羽織る姿に首を傾げました。私が知っている騎士団と違うようです。そこそこ筋肉はついていますが、アレクシス様とは比べものになりませんね。もっと鍛えてもよいのでは?

 辺境は王都に比べて暑いので、シャツを脱いだのかしら。あっ! もしかしたら、シャツを汚さないように、脱いで訓練したのかも知れません。ならば咎めては可哀想です。奥様や恋人の洗濯の負担を減らそうとしたのではないかと思います。

「貴婦人の前だぞ!」

 叱るアレクシス様の腕を掴み、首を横に振りました。

「いけませんわ。そのように叱っては……きっと奥様や恋人のためですもの」

 途中説明を省いたので、怪訝そうな顔をするアレクシス様ですが、その場は収まりました。時間をずらしたゆっくりめの朝食で、アントンやニクラスから驚きの説明を受けました。

 半裸は、私を脅かすつもりで行ったとか。意味が分かりませんわ。きょとんとしながら、パンを口に入れます。もぐもぐ咀嚼する間に、意味がじわじわと理解できました。

 つまり都会育ちのお嬢様だから、からかうつもりだったのでは?

「奴らは厳しく罰する」

 むっとした口調のアレクシス様の口に、千切ったパンの残りを押し込みました。

「ダメですわ。私は気にしておりませんし、反感を買うのはアレクシス様です。笑って流すのが中央貴族と思われているなら、きっちりと私からお返ししましょう」

「……それが一番怖いんだ」

 パンを食べ終えたアレクシス様は、大きく息を吐き出しました。頭を抱える仕草は、さすがに大袈裟ですわ。サラダをつつきながら、私は微笑んでエレンを呼びました。

「明日から、騎士団の料理を私が作ります。そう通達してください」

 見る間に青ざめるエレンが震える声で「お、奥様が自ら?」と尋ねます。ふふっ、意味を理解してくれて嬉しいわ。そうよ、私が作るの。もちろん、料理人にも手伝っていただくけれど。

 何を恐れているのか。知らないアレクシス様は、尋ねる視線をエレンに向け、首を横に振られてしまいました。仕方なく家令のニクラスや執事アントンを見ますが、彼らも知らないのですから伝わりません。

「明日の朝が楽しみです」

「ご主人様、止めることをお勧めしますが、多分止まりません」

 エレンの不思議な忠告に、納得した顔のアレクシス様。きっと勘違いなさっているわ。でもその方が都合がいいので、私はにこにこしながら、果物を口に運びました。

「午後は街へ出るのでしたね。着替えますので、失礼します」

「ああ、準備を待っている」

「ありがとうございます」

 お忍び用のワンピースのように地味ではなく、高級品質を保ちながらもシンプルに。贅沢をする妻に見えないよう、品格を保ちながらも豪華すぎないドレスを選びました。

 装飾品は小さな宝石のついた首飾りをひとつ。耳は何も付けず、指輪に迷って手袋にしました。フリル付きですが、豪華なレースは最低限です。色はアレクシス様の青にしました。

 午後は街の商人が相手です。足元を見られないよう、交渉も含めてお役に立ってみせましょう。
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