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90.宣戦布告しましょう!
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「十二人は全員、実家から縁を切られた」
前置きはここからでした。もちろん、各国の貴族が縁を切った息子や兄弟の責任を取らない、という選択肢はありません。結婚式には国王陛下を始めとし、近隣国の使者や王族も参列していました。
我が国で王族と並ぶ権威を持つ妖精姫の結婚式に、武器を持って乱入したのですよ? それも私や夫のアレクシス様に危害を加える気でした。アレクシス様は、災害と見做されるドラゴンを退治した英雄です。
我が国では辺境伯の地位を与えていますが、近隣国からも表彰され地位を得ていました。複数の爵位を持つ貴族は、意外といるのですよ。自国に有利に働く相手となれば、囲い込みも兼ねて地位を与える王族が多い事情もありました。
周辺国に貸しのあるドラゴン殺しの英雄。そんなアレクシス様の結婚式に乱入、それも花嫁を強奪または殺害しようとした。そう解釈した来賓の皆様は大騒ぎだったそうです。
国同士の契約も守らぬ若者を放逐しても、周囲に迷惑をかけます。それぞれの実家は縁を切った後、過酷な鉱山へ送り込むと決めました。街中に放しても迷惑ですから。彼らが働いたお金を徴収して、賠償金の一部にする契約を結んだそうです。
当人達の罰は一段落しましたが、ここで思わぬ黒幕が現れました。お父様は溜め息を吐いて、説明を続けました。
「ヘンスラー帝国の隣国が、ドラゴンに襲われた」
「はぁ……」
「まあ、大変ですのね!」
嫌な予感がと呟くアレクシス様と違い、私は無邪気に声を上げました。完全に他人事ですし、おそらく妖精王様が絡んでいますね。実はドラゴンは妖精が好きなのです。といっても、恋愛ではなく食べる意味で。
捕食対象の妖精が集まれば、その国や場所を襲います。通常は数百年単位で眠っているドラゴンですが、この時期に二匹目も、目覚めるのはおかしいでしょう? わざと起こして狙わせたのでは、と邪推してしまいます。
ちなみに、我が国の周辺にドラゴンが現れたのは、妖精姫である私の影響ですわ。これは教えてはいけないと妖精王様に口止めされたので、お母様達にもお話しておりません。
「ヴィーを諦めない男達を焚きつけ、その隙に婿殿を自国に迎えようと考えたらしい。ドラゴン退治のためだな。皇女の一人を当てがう予定だったと……」
「何ですって?! お父様、ヘンスラー帝国に宣戦布告しましょう!!」
愛しの旦那様がターゲットだなんて、絶対に許せませんわ。アレクシス様の魅力に気づいた慧眼は褒めて差し上げます。でも私の夫ですのよ? 妖精姫の祟りで国を沈めたいのかしら。
私自身に大きな力はありませんが、妖精達は私のために動いてくれます。妖精王様も同じでした。きっと邪な帝国を罰するおつもりで、匙加減を間違えたのね。
「宣戦布告しなくても、すでに帝都がドラゴンによって半壊したそうだ」
天罰です! これから全壊すると思いますわ。だって、ドラゴンは長時間空を飛べないんですもの。海を渡ることはありません。近くの獲物を食べ尽くすまで、暴れるでしょう。この点は妖精王様もお考えくださったみたいですね。
「海の向こうは自力で頑張ってもらうとして、こちらは大量の土地と賠償金を得ましたわ。王妃殿下と私で交渉しましたの」
「さすがお母様です」
国境近くの土地や森に加え、金が出る鉱山と大量の宝石類。辺境伯家の財政状態が一気に改善します。にこにことお金の計算を始めたお母様と私から視線を逸らし、殿方は無言でお茶を飲み干していました。
前置きはここからでした。もちろん、各国の貴族が縁を切った息子や兄弟の責任を取らない、という選択肢はありません。結婚式には国王陛下を始めとし、近隣国の使者や王族も参列していました。
我が国で王族と並ぶ権威を持つ妖精姫の結婚式に、武器を持って乱入したのですよ? それも私や夫のアレクシス様に危害を加える気でした。アレクシス様は、災害と見做されるドラゴンを退治した英雄です。
我が国では辺境伯の地位を与えていますが、近隣国からも表彰され地位を得ていました。複数の爵位を持つ貴族は、意外といるのですよ。自国に有利に働く相手となれば、囲い込みも兼ねて地位を与える王族が多い事情もありました。
周辺国に貸しのあるドラゴン殺しの英雄。そんなアレクシス様の結婚式に乱入、それも花嫁を強奪または殺害しようとした。そう解釈した来賓の皆様は大騒ぎだったそうです。
国同士の契約も守らぬ若者を放逐しても、周囲に迷惑をかけます。それぞれの実家は縁を切った後、過酷な鉱山へ送り込むと決めました。街中に放しても迷惑ですから。彼らが働いたお金を徴収して、賠償金の一部にする契約を結んだそうです。
当人達の罰は一段落しましたが、ここで思わぬ黒幕が現れました。お父様は溜め息を吐いて、説明を続けました。
「ヘンスラー帝国の隣国が、ドラゴンに襲われた」
「はぁ……」
「まあ、大変ですのね!」
嫌な予感がと呟くアレクシス様と違い、私は無邪気に声を上げました。完全に他人事ですし、おそらく妖精王様が絡んでいますね。実はドラゴンは妖精が好きなのです。といっても、恋愛ではなく食べる意味で。
捕食対象の妖精が集まれば、その国や場所を襲います。通常は数百年単位で眠っているドラゴンですが、この時期に二匹目も、目覚めるのはおかしいでしょう? わざと起こして狙わせたのでは、と邪推してしまいます。
ちなみに、我が国の周辺にドラゴンが現れたのは、妖精姫である私の影響ですわ。これは教えてはいけないと妖精王様に口止めされたので、お母様達にもお話しておりません。
「ヴィーを諦めない男達を焚きつけ、その隙に婿殿を自国に迎えようと考えたらしい。ドラゴン退治のためだな。皇女の一人を当てがう予定だったと……」
「何ですって?! お父様、ヘンスラー帝国に宣戦布告しましょう!!」
愛しの旦那様がターゲットだなんて、絶対に許せませんわ。アレクシス様の魅力に気づいた慧眼は褒めて差し上げます。でも私の夫ですのよ? 妖精姫の祟りで国を沈めたいのかしら。
私自身に大きな力はありませんが、妖精達は私のために動いてくれます。妖精王様も同じでした。きっと邪な帝国を罰するおつもりで、匙加減を間違えたのね。
「宣戦布告しなくても、すでに帝都がドラゴンによって半壊したそうだ」
天罰です! これから全壊すると思いますわ。だって、ドラゴンは長時間空を飛べないんですもの。海を渡ることはありません。近くの獲物を食べ尽くすまで、暴れるでしょう。この点は妖精王様もお考えくださったみたいですね。
「海の向こうは自力で頑張ってもらうとして、こちらは大量の土地と賠償金を得ましたわ。王妃殿下と私で交渉しましたの」
「さすがお母様です」
国境近くの土地や森に加え、金が出る鉱山と大量の宝石類。辺境伯家の財政状態が一気に改善します。にこにことお金の計算を始めたお母様と私から視線を逸らし、殿方は無言でお茶を飲み干していました。
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