51 / 113
51.神様の鳥っていつ頃来られるかご存じ?
しおりを挟む
侯爵夫人はお母様と一緒に到着されました。驚きましたが、エレンがすぐにお茶菓子の追加を頼んでくれたので、何とかなりそうです。お庭に用意してもらったのは、薄布を使ったテントでした。簡易のものですが、日陰を作っているのに暗くなくていいですね。それに風も通るので、涼しく過ごせそうです。
淑女のドレスはとても美しくて素敵ですが、重いですし夏に暑いのが難点でしたから。涼しい風が入るこのテントは、裾や天井に装飾を施したら流行するかも知れません。
「素敵なお庭ね」
「ありがとうございます。シベリウス侯爵夫人」
「あらいやだ、前にも言ったでしょう? ロヴィーサは娘も同然、カミラと呼んで。それより恐ろしい目に遭ったと聞いたわ。もう平気なのですか」
「はい、カミラ様。ご心配ありがとうございます」
笑顔で応じながら、三人で円卓を囲む。四角いテーブルにしてなくて良かったです。円卓なら順位が付きませんから。お母様とカミラ様の場合、どうしても公爵夫人であるお母様の方が上座になるのです。でもお友達に順位を付けるのは失礼だと、お母様はいつも円卓を利用していました。
正確には円卓でも座席に順位はあるそうですが、王族との会食でもなければ関係ないそうです。そのため私もいつものお茶会のつもりで、円卓を用意してくれるよう頼みました。
「このテントは辺境伯家が普段からお使いなのかしら」
「アレクシス様が戦場でよく利用されるそうですわ。未使用の新品をお借りしましたの」
虫よけに使うと聞きました。円形のテントの天井は帆布で透けませんが、そこから足元まで覆う壁部分は細かな網の薄布を巻いています。傭兵の方々が設置してくれました。そんな雑談から始まったお話は、徐々に核心へ向かって進みます。
「それで、ヴィーはもう……その、したの?」
した……ああ、夜這いのことですね。にっこり笑って頷きました。
「まぁ! 一緒に夜を過ごしたのね?」
「はい、その後も時々一緒に寝ておりますわ」
「あらぁ!」
感嘆の声がテントの外まで届くのか、時折エレンが動こうとしますが首を横に振りました。お茶が必要な時は呼びますわ。
「カミラ様、私……夜這いのお作法を間違えてしまいましたの。実は告白する前にお部屋に侵入して、飛び付いたのです。でもアレクシス様は許してくださって」
「っ! そうなのね。きっとロヴィーサがいい子だからよ」
せっかく教えていただきましたのに、申し訳ないことです。それと、大切なことをお尋ねしたかったのです。お母様もおられますし、ちょうどいい機会ですわ。
「あの……それで、神様の鳥っていつ頃来られるのかしら。私まったく分からなくて、出来たら結婚式後にお願いしたいのですが……どう伝えればいいのか困っておりますの」
「「はい??」」
お母様とカミラ様が同時に首を傾げ、互いの顔を見てから私を凝視しました。
「いろいろ聞きたいことがあるわ。そう、夜の話とかいろいろと」
いろいろを二度口にされましたが、そんなにたくさんお話があるのですか? カミラ様。お母様もそんなドラゴンにひっぱたかれたような顔をなさって。
詳しいお話は外に漏れるといけませんので、人払いをした私の私室へ移動することになりました。折角テントを用意していただいたのに、半刻も使用しませんでしたわ。
淑女のドレスはとても美しくて素敵ですが、重いですし夏に暑いのが難点でしたから。涼しい風が入るこのテントは、裾や天井に装飾を施したら流行するかも知れません。
「素敵なお庭ね」
「ありがとうございます。シベリウス侯爵夫人」
「あらいやだ、前にも言ったでしょう? ロヴィーサは娘も同然、カミラと呼んで。それより恐ろしい目に遭ったと聞いたわ。もう平気なのですか」
「はい、カミラ様。ご心配ありがとうございます」
笑顔で応じながら、三人で円卓を囲む。四角いテーブルにしてなくて良かったです。円卓なら順位が付きませんから。お母様とカミラ様の場合、どうしても公爵夫人であるお母様の方が上座になるのです。でもお友達に順位を付けるのは失礼だと、お母様はいつも円卓を利用していました。
正確には円卓でも座席に順位はあるそうですが、王族との会食でもなければ関係ないそうです。そのため私もいつものお茶会のつもりで、円卓を用意してくれるよう頼みました。
「このテントは辺境伯家が普段からお使いなのかしら」
「アレクシス様が戦場でよく利用されるそうですわ。未使用の新品をお借りしましたの」
虫よけに使うと聞きました。円形のテントの天井は帆布で透けませんが、そこから足元まで覆う壁部分は細かな網の薄布を巻いています。傭兵の方々が設置してくれました。そんな雑談から始まったお話は、徐々に核心へ向かって進みます。
「それで、ヴィーはもう……その、したの?」
した……ああ、夜這いのことですね。にっこり笑って頷きました。
「まぁ! 一緒に夜を過ごしたのね?」
「はい、その後も時々一緒に寝ておりますわ」
「あらぁ!」
感嘆の声がテントの外まで届くのか、時折エレンが動こうとしますが首を横に振りました。お茶が必要な時は呼びますわ。
「カミラ様、私……夜這いのお作法を間違えてしまいましたの。実は告白する前にお部屋に侵入して、飛び付いたのです。でもアレクシス様は許してくださって」
「っ! そうなのね。きっとロヴィーサがいい子だからよ」
せっかく教えていただきましたのに、申し訳ないことです。それと、大切なことをお尋ねしたかったのです。お母様もおられますし、ちょうどいい機会ですわ。
「あの……それで、神様の鳥っていつ頃来られるのかしら。私まったく分からなくて、出来たら結婚式後にお願いしたいのですが……どう伝えればいいのか困っておりますの」
「「はい??」」
お母様とカミラ様が同時に首を傾げ、互いの顔を見てから私を凝視しました。
「いろいろ聞きたいことがあるわ。そう、夜の話とかいろいろと」
いろいろを二度口にされましたが、そんなにたくさんお話があるのですか? カミラ様。お母様もそんなドラゴンにひっぱたかれたような顔をなさって。
詳しいお話は外に漏れるといけませんので、人払いをした私の私室へ移動することになりました。折角テントを用意していただいたのに、半刻も使用しませんでしたわ。
14
お気に入りに追加
911
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる