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46.察しのいい王妃殿下は大好きです
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「ベントソン公爵令息の侵入経路でしたら、まだ特定できておりません。申し訳ございません」
言い訳せず、率直に話すのはアレクシス様のお人柄でしょうね。貴族らしからぬ潔さですが、国王陛下はこういった臣下を大切になさる方です。耳に厳しい提案をする宰相閣下だったり、国王陛下の優柔不断を叱咤する王妃殿下だったり。騎士団長もかなり厳しい物言いをなさると聞きました。
偉くなると忠告や耳に痛い話を避けるようになる。それが国を傾ける要因だ。国王陛下は以前そう仰っていました。自分にとって嫌な話程、真剣に聞くべき。その姿勢はご子息の教育も生かされ、王太子殿下の側近はかなり手厳しい方で固められています。
この国が安泰な理由の一つに妖精姫の存在がありますが、それ以上に王族の方々の己を律する姿勢が素晴らしいのが大きいでしょう。だから妖精王マーリン様も手を貸してくださるのです。
「特定できないか」
国王陛下の繰り返しに恐縮しきりのアレクシス様の手を、ぎゅっと強く握った。大丈夫ですわ、この話し方は試しておられる時ですもの。怒っているときの声や口調ではありません。
「明日の朝には特定できますわ」
アレクシス様がぎょっとしたお顔になりますが、ご安心ください。すでに妖精王様にお願いしてありますの。一晩もあれば、妖精達から情報が集まります。それらを纏めて報告すればいいのですから。にっこり笑って口を封じました。
「当てがあるようだな」
「はい、妖精王様のご加護がありますから」
妖精王様と直接やりとりできることは、家族以外には秘密にしております。ただでさえ狙われやすい私が、さらに各国で争奪戦になるからですわ。己を守るために情報を制限する、ごく当たり前の手法でした。加護があるから情報が得られる、ただし妖精王様と直接話せることは秘密。これがお父様に許された方法です。
私に危害を加えると妖精王様の機嫌を損ねる。国王陛下にはそのようにお伝えしていると聞きました。きっと夢に現れてお告げをくれると考えられるのでしょう。うんうんと何度も頷いて納得しています。王家も妖精姫を何人か輩出しておりますが、最近はめっきり少なくなりました。
ここ数代は我がエールヴァール家ばかりで、何か理由があるのかも知れませんね。
「妖精王様は犯人以外も教えてくれるのですか」
王妃殿下は驚いた顔をなさっておられますが、ちょっと違います。犯人を教えるのではなく、尋ねたら答えてくれるだけです。知らなければ、妖精達から情報を集めて渡してくれますが、どちらも私が願ったから……でしょうね。
「私に危害を加えたのですから、犯人を捕まえろとご指示をいただいた。我が家ではそう受け止めておりますわ」
ここで言う我が家は、今までエールヴァール公爵家を指しました。でも今後はレードルンド辺境伯家を指します。ここをご理解いただきたいわ。王妃殿下は意味ありげに微笑まれました。伝わったようです。今後はレードルンド辺境伯家も王家の支持がいただけそう。実家は権力があるので大丈夫でしょう。
「では明日、もう一度お伺いします」
話を終わらせようとした私に、王妃殿下が思わぬ提案をなさいました。
「明日の朝出直すのは大変でしょう、今夜は王宮に泊まりなさいな」
「はい、喜んで」
表面上はどっしり構えていますが、アレクシス様の手のひらに汗がじわり。焦っておられるのでしょうが、顔に出さないのはご立派です。大丈夫と伝えるため、きゅっと握り直しました。視線が合ったので微笑んで頷きます。近くにいる侍従に、レードルンド辺境伯の屋敷へ使者を送るよう頼みました。
今夜も一緒に寝ましょうね、アレクシス様。
言い訳せず、率直に話すのはアレクシス様のお人柄でしょうね。貴族らしからぬ潔さですが、国王陛下はこういった臣下を大切になさる方です。耳に厳しい提案をする宰相閣下だったり、国王陛下の優柔不断を叱咤する王妃殿下だったり。騎士団長もかなり厳しい物言いをなさると聞きました。
偉くなると忠告や耳に痛い話を避けるようになる。それが国を傾ける要因だ。国王陛下は以前そう仰っていました。自分にとって嫌な話程、真剣に聞くべき。その姿勢はご子息の教育も生かされ、王太子殿下の側近はかなり手厳しい方で固められています。
この国が安泰な理由の一つに妖精姫の存在がありますが、それ以上に王族の方々の己を律する姿勢が素晴らしいのが大きいでしょう。だから妖精王マーリン様も手を貸してくださるのです。
「特定できないか」
国王陛下の繰り返しに恐縮しきりのアレクシス様の手を、ぎゅっと強く握った。大丈夫ですわ、この話し方は試しておられる時ですもの。怒っているときの声や口調ではありません。
「明日の朝には特定できますわ」
アレクシス様がぎょっとしたお顔になりますが、ご安心ください。すでに妖精王様にお願いしてありますの。一晩もあれば、妖精達から情報が集まります。それらを纏めて報告すればいいのですから。にっこり笑って口を封じました。
「当てがあるようだな」
「はい、妖精王様のご加護がありますから」
妖精王様と直接やりとりできることは、家族以外には秘密にしております。ただでさえ狙われやすい私が、さらに各国で争奪戦になるからですわ。己を守るために情報を制限する、ごく当たり前の手法でした。加護があるから情報が得られる、ただし妖精王様と直接話せることは秘密。これがお父様に許された方法です。
私に危害を加えると妖精王様の機嫌を損ねる。国王陛下にはそのようにお伝えしていると聞きました。きっと夢に現れてお告げをくれると考えられるのでしょう。うんうんと何度も頷いて納得しています。王家も妖精姫を何人か輩出しておりますが、最近はめっきり少なくなりました。
ここ数代は我がエールヴァール家ばかりで、何か理由があるのかも知れませんね。
「妖精王様は犯人以外も教えてくれるのですか」
王妃殿下は驚いた顔をなさっておられますが、ちょっと違います。犯人を教えるのではなく、尋ねたら答えてくれるだけです。知らなければ、妖精達から情報を集めて渡してくれますが、どちらも私が願ったから……でしょうね。
「私に危害を加えたのですから、犯人を捕まえろとご指示をいただいた。我が家ではそう受け止めておりますわ」
ここで言う我が家は、今までエールヴァール公爵家を指しました。でも今後はレードルンド辺境伯家を指します。ここをご理解いただきたいわ。王妃殿下は意味ありげに微笑まれました。伝わったようです。今後はレードルンド辺境伯家も王家の支持がいただけそう。実家は権力があるので大丈夫でしょう。
「では明日、もう一度お伺いします」
話を終わらせようとした私に、王妃殿下が思わぬ提案をなさいました。
「明日の朝出直すのは大変でしょう、今夜は王宮に泊まりなさいな」
「はい、喜んで」
表面上はどっしり構えていますが、アレクシス様の手のひらに汗がじわり。焦っておられるのでしょうが、顔に出さないのはご立派です。大丈夫と伝えるため、きゅっと握り直しました。視線が合ったので微笑んで頷きます。近くにいる侍従に、レードルンド辺境伯の屋敷へ使者を送るよう頼みました。
今夜も一緒に寝ましょうね、アレクシス様。
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