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04.王命で婚約が成立ですね
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「一生、別れを口にしないと誓ったら、私と添い遂げて頂けますの?」
ぐっと息を呑んだ彼は、迷いながら私を見つめる。とても素敵、満面の笑みで迎え撃ちましょう。じわじわと頬や耳が赤くなり、気づけば首筋も真っ赤でした。あら、手も? 私の勝ちですわね。
「お忘れのようですから、もう一度繰り返しますわ。私はアレクシス様と結婚出来ないなら、命を絶ちます。その覚悟は出来ておりますの。でも……許されるなら、あなた様と幸せになりたいのです」
わざと目を伏せて、悲しげな表情を作る。このくらいは公爵令嬢として身に付けた礼儀作法のようなもの。さらりとこなしてご覧に入れますわ。長い睫毛が目元に影を作り、アレクシス様の身長では表情がよく見えないはず。
計算し尽くした私の仕草に、あたふたしたアレクシス様が声をかける。
「本当に私で良いのだな? 訂正は出来ませぬぞ、エールヴァール公爵令嬢」
「嫌です、ロヴィーサ……いえ、ヴィーとお呼びくださいな」
押して押して押しまくる。逃げ場など残してあげるほど、私は優しくありません。
「……っ! まだ婚約前なので、ロヴィーサ嬢と……」
精一杯の譲歩ですわね。頷いて安心させたいのですが、私も急いでおります。その常識、粉々に吹き飛ばして差し上げますわ。
「国王陛下……ご命令を」
微笑んで促され、私を我が子より可愛がる国王陛下はあっさり折れた。というか、最初から突っ張っていない。へらりと顔を笑み崩して、孫の我が儘を許す祖父のように甘い声で許可を出しました。
「誰でもないロヴィーサの願いだ。レードルンド辺境伯アレクシスへ命じる。これなるロヴィーサを婚約者とし、末長く幸せにしてくれ。王命だぞ」
「はっ、畏まりました」
王命となれば、騎士であり辺境伯のアレクシス様は断れない。承知で国王陛下のご命令を利用する私は、きっと悪女でしょう。それで構いませんわ。このために国王陛下を籠絡したんですもの。
「ありがとうございます、国王陛下」
「昔のように、おじじ様と呼んでくれ」
「はい、おじじ様」
願いを叶えてもらったら、ちゃんとサービスが必要です。
「あら、ずるいわ。あなたったら」
王妃殿下がむっと唇を尖らせる。私は王妃殿下へ数歩近づき、両手を差し伸べました。すぐに掴んで抱き寄せられます。
「ありがとうございます。アンネ様のご協力で、私、好きな方と結婚出来ますわ」
「いいのよ、あなたは私の娘も同然。必ず幸せになるのですよ」
「はい」
実の父であるエールヴァール公爵より、国王夫妻の方が私と過ごした時間が長いので、仕方ありません。母が病気で倒れて療養した際、父は母と一緒に領地へ向かいました。私はその頃には求婚者による誘拐未遂が相次いでいましたので、王宮預かりとなったのです。警護は万全の場所でした。
国王陛下の合図で用意された婚約の契約書に署名します。困惑した顔ですが、アレクシス様も署名なさいました。これを神殿で女神様に捧げることで、婚約は成立です。
一度解消しなくては、次の婚約が結べないのですが、私にとって都合のよい仕組みでした。他者に言い寄られても断る明確な理由になります。国王陛下が自ら王宮内にある神殿へ婚約の契約書を提出し、私とアレクシス様も同行して見届けました。
祭壇に置いた婚約の契約書が、ふわりと浮き上がり一瞬で消えます。
「これからよろしくお願いいたしますわ、アレクシス様。結婚式は最短で半年後に可能ですわね」
ぐっと息を呑んだ彼は、迷いながら私を見つめる。とても素敵、満面の笑みで迎え撃ちましょう。じわじわと頬や耳が赤くなり、気づけば首筋も真っ赤でした。あら、手も? 私の勝ちですわね。
「お忘れのようですから、もう一度繰り返しますわ。私はアレクシス様と結婚出来ないなら、命を絶ちます。その覚悟は出来ておりますの。でも……許されるなら、あなた様と幸せになりたいのです」
わざと目を伏せて、悲しげな表情を作る。このくらいは公爵令嬢として身に付けた礼儀作法のようなもの。さらりとこなしてご覧に入れますわ。長い睫毛が目元に影を作り、アレクシス様の身長では表情がよく見えないはず。
計算し尽くした私の仕草に、あたふたしたアレクシス様が声をかける。
「本当に私で良いのだな? 訂正は出来ませぬぞ、エールヴァール公爵令嬢」
「嫌です、ロヴィーサ……いえ、ヴィーとお呼びくださいな」
押して押して押しまくる。逃げ場など残してあげるほど、私は優しくありません。
「……っ! まだ婚約前なので、ロヴィーサ嬢と……」
精一杯の譲歩ですわね。頷いて安心させたいのですが、私も急いでおります。その常識、粉々に吹き飛ばして差し上げますわ。
「国王陛下……ご命令を」
微笑んで促され、私を我が子より可愛がる国王陛下はあっさり折れた。というか、最初から突っ張っていない。へらりと顔を笑み崩して、孫の我が儘を許す祖父のように甘い声で許可を出しました。
「誰でもないロヴィーサの願いだ。レードルンド辺境伯アレクシスへ命じる。これなるロヴィーサを婚約者とし、末長く幸せにしてくれ。王命だぞ」
「はっ、畏まりました」
王命となれば、騎士であり辺境伯のアレクシス様は断れない。承知で国王陛下のご命令を利用する私は、きっと悪女でしょう。それで構いませんわ。このために国王陛下を籠絡したんですもの。
「ありがとうございます、国王陛下」
「昔のように、おじじ様と呼んでくれ」
「はい、おじじ様」
願いを叶えてもらったら、ちゃんとサービスが必要です。
「あら、ずるいわ。あなたったら」
王妃殿下がむっと唇を尖らせる。私は王妃殿下へ数歩近づき、両手を差し伸べました。すぐに掴んで抱き寄せられます。
「ありがとうございます。アンネ様のご協力で、私、好きな方と結婚出来ますわ」
「いいのよ、あなたは私の娘も同然。必ず幸せになるのですよ」
「はい」
実の父であるエールヴァール公爵より、国王夫妻の方が私と過ごした時間が長いので、仕方ありません。母が病気で倒れて療養した際、父は母と一緒に領地へ向かいました。私はその頃には求婚者による誘拐未遂が相次いでいましたので、王宮預かりとなったのです。警護は万全の場所でした。
国王陛下の合図で用意された婚約の契約書に署名します。困惑した顔ですが、アレクシス様も署名なさいました。これを神殿で女神様に捧げることで、婚約は成立です。
一度解消しなくては、次の婚約が結べないのですが、私にとって都合のよい仕組みでした。他者に言い寄られても断る明確な理由になります。国王陛下が自ら王宮内にある神殿へ婚約の契約書を提出し、私とアレクシス様も同行して見届けました。
祭壇に置いた婚約の契約書が、ふわりと浮き上がり一瞬で消えます。
「これからよろしくお願いいたしますわ、アレクシス様。結婚式は最短で半年後に可能ですわね」
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