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02.国防費捻出より頭をひねる事態
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顔をほんのり赤くしたアレクシス様の手を、そっと頬に寄せる。お慕いしているのですが、信じていただけるでしょうか。不安になりながら、私は事情を説明することにしました。
「実は、私は結婚相手に不自由しております」
控室には、部屋付きの侍女と護衛の騎士がいます。どちらも守秘義務があるので大丈夫でしょう。遠回しに話し始めたところへ、ノックの音が響きました。お兄様と王太子殿下ですので、アレクシス様の許可を得てからソファを勧めます。
すぐにお父様とお母様が国王陛下夫妻と訪れ、控室はあっという間にいっぱいになりました。これ以上は無理なので、誰か来てもお断りしていただくようお願いしますわ。
「どこまで説明したの?」
「これからですわ」
お母様の質問へ首を横に振る。ほとんど説明できていない。私が結婚相手を探していたことだけは伝わっていると思うけれど。間を置いて座るアレクシス様は眉を寄せて考えて込んでいた。悪いところだけ伝わった気がします。
「ならば、わしから説明しよう」
まさかの国王陛下自らの説明となりました。公平な方なので心配はしませんが、自分から説明したかったと考えるのは不敬でしょうか。
「エールヴァール公爵家のロヴィーサ嬢は、この通り妖精のような美しさを誇る。もちろん慈善活動にも熱心で中身も素晴らしい淑女だ。だが、それ故に求婚者の争いが絶えなかった」
国王陛下の仰る通り、私の知らぬ場所で勝手に話が盛り上がり戦うのです。さらに悪いことに、騒動が起きるたびに私を知る男性が増えて、求婚者も列を長くしました。
「本人から断られて引き下がる者もいるが、大半は諦めきれずに決闘や誘拐未遂事件を起こした。それが国家レベルの騒動に発展したのは、海の向こうのヘンスラー帝国の王子が一目惚れしたからだ」
このレクセル王国は広大で豊かな土地を持つ強国のひとつです。海を隔てた先のヘンスラー帝国を除けば、この大陸で最大規模を誇っておりました。ヘンスラー帝国は軍事に特化した国で、我が国より国土は狭いながらも強国に名を連ねています。この辺の事情は、国境を守るアレクシス様の方が詳しいでしょう。
問題は王子が私を諦めないことでした。結婚しないなら攻め込むと脅してきたのです。私一人のために戦争を起こすわけに行きませんが、そのように卑劣な方に嫁ぐのも嫌でした。
「もう自殺しかないと思ったのです」
思いつめた私に、兄がひとつの提案をしました。誰かと結婚してしまえば、王子も諦めるのではないか。もしそれでも諦めないなら、求婚者すべてを使って権力と武力で蹴散らすしかないと。
「ず、随分物騒な……」
アレクシス様のお顔が強張りました。やはりはしたない考えだったでしょうか。
「相手を選び始めたはいいが、誰を選んでも公爵令嬢が首を縦に振らん。並みの男では務まらないと高位貴族や王族を並べたのだが、全員嫌だと言われた。こちらで誰かを選べば、遺恨を残しかねない。それでは意味がないのでな」
国王陛下は蓄えた立派なお鬚を撫でながら「あの時は国防費の捻出より頭をひねったわ」と苦笑いなさいました。本当に申し訳ない次第ですわ。でも選んでいただいた中に、アレクシス様のお名前がなかったんですもの。
「実は、私は結婚相手に不自由しております」
控室には、部屋付きの侍女と護衛の騎士がいます。どちらも守秘義務があるので大丈夫でしょう。遠回しに話し始めたところへ、ノックの音が響きました。お兄様と王太子殿下ですので、アレクシス様の許可を得てからソファを勧めます。
すぐにお父様とお母様が国王陛下夫妻と訪れ、控室はあっという間にいっぱいになりました。これ以上は無理なので、誰か来てもお断りしていただくようお願いしますわ。
「どこまで説明したの?」
「これからですわ」
お母様の質問へ首を横に振る。ほとんど説明できていない。私が結婚相手を探していたことだけは伝わっていると思うけれど。間を置いて座るアレクシス様は眉を寄せて考えて込んでいた。悪いところだけ伝わった気がします。
「ならば、わしから説明しよう」
まさかの国王陛下自らの説明となりました。公平な方なので心配はしませんが、自分から説明したかったと考えるのは不敬でしょうか。
「エールヴァール公爵家のロヴィーサ嬢は、この通り妖精のような美しさを誇る。もちろん慈善活動にも熱心で中身も素晴らしい淑女だ。だが、それ故に求婚者の争いが絶えなかった」
国王陛下の仰る通り、私の知らぬ場所で勝手に話が盛り上がり戦うのです。さらに悪いことに、騒動が起きるたびに私を知る男性が増えて、求婚者も列を長くしました。
「本人から断られて引き下がる者もいるが、大半は諦めきれずに決闘や誘拐未遂事件を起こした。それが国家レベルの騒動に発展したのは、海の向こうのヘンスラー帝国の王子が一目惚れしたからだ」
このレクセル王国は広大で豊かな土地を持つ強国のひとつです。海を隔てた先のヘンスラー帝国を除けば、この大陸で最大規模を誇っておりました。ヘンスラー帝国は軍事に特化した国で、我が国より国土は狭いながらも強国に名を連ねています。この辺の事情は、国境を守るアレクシス様の方が詳しいでしょう。
問題は王子が私を諦めないことでした。結婚しないなら攻め込むと脅してきたのです。私一人のために戦争を起こすわけに行きませんが、そのように卑劣な方に嫁ぐのも嫌でした。
「もう自殺しかないと思ったのです」
思いつめた私に、兄がひとつの提案をしました。誰かと結婚してしまえば、王子も諦めるのではないか。もしそれでも諦めないなら、求婚者すべてを使って権力と武力で蹴散らすしかないと。
「ず、随分物騒な……」
アレクシス様のお顔が強張りました。やはりはしたない考えだったでしょうか。
「相手を選び始めたはいいが、誰を選んでも公爵令嬢が首を縦に振らん。並みの男では務まらないと高位貴族や王族を並べたのだが、全員嫌だと言われた。こちらで誰かを選べば、遺恨を残しかねない。それでは意味がないのでな」
国王陛下は蓄えた立派なお鬚を撫でながら「あの時は国防費の捻出より頭をひねったわ」と苦笑いなさいました。本当に申し訳ない次第ですわ。でも選んでいただいた中に、アレクシス様のお名前がなかったんですもの。
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