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本編
最終話 私、あなたを幸せにするわ
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難しい儀式は終わり。魔族は礼儀作法を重んじるより、享楽にふける種族だ。わっと盛り上がり、テラスの下へ飛び出した。彼らが手にしたのは、シャリーヌが用意した花びらが入った籠。中身を風の魔法で舞い上げながら、テラス周辺を飾る。
アゼリアを抱き上げたイヴリースがテラスに立つと、待っていた観衆が沸き立った。喜んでくれる民を見つめるアゼリアの黄金の瞳が潤んでいく。
「や、だ。私……涙が」
化粧が崩れちゃう。そんな言葉で堪えようとするが、ぽろりと一粒落ちたら堪えきれない。披露宴に近い夜会があり、初夜まで――今日の予定はびっしり詰まっている。濡れた顳にイヴリースの接吻けが触れ、民はさらに沸いた。
「魔王陛下、魔王妃殿下に幸いあれ」
誰かが叫んだ言葉に、まるで合唱のように響き渡る。友人が用意してくれた花びらが宙を舞い、アゼリアの濡れた頬に1枚留まった。
「私、あなたを幸せにするわ」
「ならば、そなたが幸せになることだ」
そうすれば余も幸せなのだ。囁くイヴリースの唇に、自ら唇を重ねた。
今でも覚えている。『アゼリア・フォン・ホーヘーマイヤー、俺はお前との婚約を破棄する!』――嫌々結婚するはずの運命は、あの婚約破棄があった日から幸せへ向かって転がった。私が神だけじゃなく、魔王にも願ったのがよかったのね。あなたは確かに願いを聞き届けてくれたもの。
ようやく下ろしてもらい、アゼリアは眼下に広がる民に微笑んで手を振った。私、この国で生きて幸せになる。隣で腰を抱き寄せるこの人を――幸せにしてみせるわ。
決意を祝福するように、花びらは風に踊り祝福の光は2人の上に降り注ぎ続けた。
ここから魔国サフィロスの結婚ラッシュが始まる。女将軍バールと兄バラム、ゴエティアの一員であるアモンとマルバス、他にも貴族や街のご令嬢が憧れる結婚式がつぎつぎと執り行われた。その経済効果は他国に波及し、ベリルでは魚介類の出荷が増え、クリスタも木材や鉱山の金が大量に輸出される。ルベウスも料理用に魔物肉を加工して販売し、民の暮らしは一気に豊かになった。
民間レベルでの交流が急加速し、多少のトラブルが起きたものの……種族関係なく胸膨らませた若者が新天地を目指す。異種族間の結婚や交際が増えたことで、領地が足りなくなった貴族が大慌てで小国があった土地を開拓した。
3ヵ月後、アゼリアは兄ベルンハルトとヴィルヘルミーナの結婚式に顔を見せる。幸せ絶頂の新婚であるアゼリアは、美しいミントの婚礼衣装に似た装いで微笑んだ。彼女を包み込むように腰を抱くイヴリースは、以前にも増して溺愛が深まったらしい。真綿で包むという表現に近い優しさで、常にアゼリアだけを見つめていた。
アゼリアの手のひらはずっと腹部を柔らかく包み――様々な憶測を呼ぶが、数ヵ月後、魔王妃の懐妊が公開され、サフィロスの民を再び歓喜で沸かせることとなった。
The END or……?
**************************************************
※2020年6月から一気に駆け抜けてまいりました。この先の展開や別のキャラの話など、読んでみたいエピソードがありましたら、お知らせください。叶えられる範囲で皆様にお届けしたいと思います。
多少なり、皆様の心に響くお話であれば書き手冥利に尽きます。ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
******************************
宣伝です。
『彼女が魔女だって? 要らないなら僕が大切に愛するよ』
ヤンデレ系 溺愛ハッピーエンド、恋愛
1/19より公開
欲しい――理性ではなく感情で心が埋め尽くされた。愚かな王太子からこの子を奪って、傷ついた心を癒したい。僕だけを見て、僕の声だけ聞いて、僕への愛だけ口にしてくれたら……。
僕は君が溺れるほど愛し、僕なしで生きられないようにしたい。
明かされた暗い過去も痛みも思い出も、僕がすべて癒してあげよう。さあ、この手に堕ちておいで。
『今度こそ幸せを掴みます! ~大切だったあなたから死の宣告を受けたこと、忘れませんわ~』
異種族婚姻 溺愛ハッピーエンド、恋愛
1/29より公開
「首を刎ねよ」
大切な婚約者の冷えた声。愛を囁いた唇が紡ぐ、死の宣告に項垂れた。もう助けてと叫ぶ気力もない。冤罪と知ってなお、あなたは別の女性を選んだ。
偉大なる神カオスに最期の祈りを捧げた私は、愛する家族の前で首を落とされた――。
アゼリアを抱き上げたイヴリースがテラスに立つと、待っていた観衆が沸き立った。喜んでくれる民を見つめるアゼリアの黄金の瞳が潤んでいく。
「や、だ。私……涙が」
化粧が崩れちゃう。そんな言葉で堪えようとするが、ぽろりと一粒落ちたら堪えきれない。披露宴に近い夜会があり、初夜まで――今日の予定はびっしり詰まっている。濡れた顳にイヴリースの接吻けが触れ、民はさらに沸いた。
「魔王陛下、魔王妃殿下に幸いあれ」
誰かが叫んだ言葉に、まるで合唱のように響き渡る。友人が用意してくれた花びらが宙を舞い、アゼリアの濡れた頬に1枚留まった。
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「ならば、そなたが幸せになることだ」
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ようやく下ろしてもらい、アゼリアは眼下に広がる民に微笑んで手を振った。私、この国で生きて幸せになる。隣で腰を抱き寄せるこの人を――幸せにしてみせるわ。
決意を祝福するように、花びらは風に踊り祝福の光は2人の上に降り注ぎ続けた。
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アゼリアの手のひらはずっと腹部を柔らかく包み――様々な憶測を呼ぶが、数ヵ月後、魔王妃の懐妊が公開され、サフィロスの民を再び歓喜で沸かせることとなった。
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