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147.アスティが僕のお嫁さんになる

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「準備出来た?」

「どうかしら」

「すごく綺麗、僕のお嫁さんだ」

 嬉しくて微笑む。正装した僕が差し出した手に、白い手袋に包まれた指先が触れた。アスティは今日、僕のお嫁さんになる。

 ドレスは白、銀の刺繍をいっぱい入れた。これはヒスイと僕で入れたんだよ。完成までに1年以上かかったの。間違えたらやり直して、裾から胸元まで、キラキラひかる石を縫い込みながら作った。一針ごとに結婚式が近づくから、毎日少しずつ進めたんだ。

 重いドレスを、軽々と着こなすアスティは化粧をして髪を結った。意外にも器用なアベルが侍女の人と編んだ銀髪に、僕の色である赤い宝石が揺れる。白を基調とした正装姿の僕の胸元は、アスティの瞳の紫のハンカチを差した。

 褐色の肌に白と銀のドレスは映える。アスティは美しい人で、それがさらに引き立った。僕には勿体無いくらい綺麗だ。でも謙遜はやめる。それが成人した僕とアスティの約束だから。

「愛してる、アスティ」

「私もよ、カイ。あなただけを愛している」

 ちゅっとキスをしてたら、呆れ顔のラーシュに「早く行け」と尻を叩かれちゃった。さすがに花嫁のアスティには触らなかったけど、もし触れてたら外まで飛ばしちゃおうかと思った。にっこり笑う僕に「物騒なやつ」と肩を竦める。手に隠してる魔法陣、バレてたみたい。

 部屋を出ると、ヒスイに花束を貰った。綺麗な赤い薔薇がいっぱい。庭師のおじいちゃんと用意してくれたんだね。まだ朝露が残る薔薇をアスティに渡す。

 会場は大広間で、告白後の宴会を開いた3年前が嘘みたいだ。新しい魔王になったイェルド、獣人の王も顔を見せた。人族も混じる大広間で、僕はアスティに愛を乞う。かつてと同じ古代語で、愛し抜いて最後まで共にいると誓った。同じ言葉を返してくれたアスティにキスをして、わっと歓声が上がる。

 竜族の皆が集まって、僕達を担ぎ上げた。ふわふわと浮いて不思議な感じだ。サフィーは侍女の人と結婚の約束をしたんだって。番が見つからないなら、好きな人と結婚するのもいいよね。

 ヒスイはルビアに口説かれてる最中。竜族じゃないからって遠慮するヒスイを、ルビアは諦めずに追いかけてる。もうすぐ陥落じゃないか? ってボリス師匠は笑ってた。

 そういうボリス師匠だって、獣人の若いお嬢さんに追い回されてる。番なんだけど、恥ずかしいからボリス師匠は認めてなくて。年齢差があってもいいのにね。僕達だってそうだった。

 ラーシュを発見したイェルドは、彼に詰め寄った。魔王の座をラーシュに押し付け、研究に専念したいみたい。魔族の寿命も長いから、彼らも素敵な奥さんが見つかればいいな。

 美味しい食事を食べて、皆で笑って、少しだけお酒を口にする。酔うと笑顔が溢れちゃって、アスティがヤキモチを焼くんだ。それが可愛いから、苦いお酒が好きになった。

「たくさん飲んだらダメよ、カイ」

「うん。今日はアスティと初めての夜だから」

 笑顔で囁くと、真っ赤になった。

「誰がそんなこと教えたのよ!」

「ふふっ、アベルとボリス師匠」

 隠してもバレちゃうから、先に答えておこう。とっちめてやると怒っても、顔が赤くて可愛い。耳も首筋もほんのり赤くて、銀の鱗がキラキラしていた。

「アスティ、酔っちゃうから抜け出す?」

「……っ! そうしましょう」

 アスティの許可が出たから、僕は彼女の膝裏に手を入れて抱き上げる。ようやく出来るようになったんだ。練習はヒスイとしたけど、何度か落としちゃった。今は完璧だよ。

「きゃっ」

 可愛い声をあげたアスティの頬にキスをして、首に手を回してもらった。それから皆に見送られて広間を出る。アスティ、覚悟してね。僕、ちゃんと愛し方を覚えて来たんだから!
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