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76.僕は災厄でも幸せになりたい
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災厄とは、世界を滅ぼす絶対悪に対して使われる言葉なんだって。今日、僕はその言葉を初めて知った。
「災厄のくせに! 死ねっ!!」
僕を指差して叫んだ人は、すぐにルビアの命令で連れて行かれた。あの人はなんだろう。どうして僕を「さいやく」と呼んだの? 僕のことが嫌いなのかな。いろんな思いが浮かんで、蹲った。僕を守るみたいにヒスイが前に立つ。
「番様、具合が悪いのですか」
困った顔をしたルビアに、悪いことをした気になった。首を横に振り、立ち上がるけど……ふらりと傾く。なんで? 真っ直ぐに立てない。鼻を啜った僕は、ルビアに抱っこされて部屋に戻った。心配そうに指先を握るヒスイが「カイ様」と何度も呼びかける。
「へいき」
そう口にしたけど、誰も信じてくれない。すぐにアスティがお部屋に帰ってきた。ベッドから起きあがろうとしたのに、ヒスイが肩を押さえて止める。
「いけません。熱があります」
「発熱? 体調が悪いのね。おいで」
ベッドに座ったアスティの腕にしがみついた。気持ちいい。鱗が浮いた冷たい肌に頬を押しつけた。
「眠れそう?」
「うん」
「ヒスイも一緒に眠ってやってくれ。きっと冷たいから喜ぶ」
「あっ、はい」
いつもはアスティが一緒だと、ヒスイは自分の部屋でお昼寝する。でも今日は二人ともいて、僕は幸せな状況に頬を緩めた。具合悪くて心配させたり、熱で苦しいのは嫌だけど、今みたいに皆で寝るのは好き。
目を閉じると、真っ暗な闇に吸い込まれた。一瞬で眠ったのに、声だけが聞こえる。アスティとアベル、ルビアかな?
どうやって入り込まれた、と怖い声を出したアスティ。あの男の人が叫んだ言葉を伝えるルビア。アベルが唸るように呟いたのは、イース神聖国を倒す必要性。
難しい話だから半分も分からなかった。でも僕が誰かに嫌われて、それで皆が困ってるみたい。アスティを困らせるなら、僕はいろいろ我慢するよ。おやつもなくていいし、ご飯も半分でいい。お手伝いだって出来るから……怖い声を出さないで。
握った手にきゅっと力を入れる。握り返すアスティの手が温かいのに、いつもより冷たくて。なぜか悲しくなった。僕はアスティと一緒に生きたいだけなのに、どうして邪魔をするんだろう。
そのまま深く眠った僕は、目が覚めたらお話の内容を忘れていた。でも皆が困った様子で、難しい話をしていたのは覚えてる。僕のせいでごめんね。起きてそう話したら、アスティに叱られた。
「カイは私と幸せになることだけ考えてくれ。それ以外は何も知らなくていい」
少し怖い声で強く言われたのに、嬉しくて僕は笑っていた。うん、僕、アスティと幸せになることを考える。それ以外は聞こえないよ。
「災厄のくせに! 死ねっ!!」
僕を指差して叫んだ人は、すぐにルビアの命令で連れて行かれた。あの人はなんだろう。どうして僕を「さいやく」と呼んだの? 僕のことが嫌いなのかな。いろんな思いが浮かんで、蹲った。僕を守るみたいにヒスイが前に立つ。
「番様、具合が悪いのですか」
困った顔をしたルビアに、悪いことをした気になった。首を横に振り、立ち上がるけど……ふらりと傾く。なんで? 真っ直ぐに立てない。鼻を啜った僕は、ルビアに抱っこされて部屋に戻った。心配そうに指先を握るヒスイが「カイ様」と何度も呼びかける。
「へいき」
そう口にしたけど、誰も信じてくれない。すぐにアスティがお部屋に帰ってきた。ベッドから起きあがろうとしたのに、ヒスイが肩を押さえて止める。
「いけません。熱があります」
「発熱? 体調が悪いのね。おいで」
ベッドに座ったアスティの腕にしがみついた。気持ちいい。鱗が浮いた冷たい肌に頬を押しつけた。
「眠れそう?」
「うん」
「ヒスイも一緒に眠ってやってくれ。きっと冷たいから喜ぶ」
「あっ、はい」
いつもはアスティが一緒だと、ヒスイは自分の部屋でお昼寝する。でも今日は二人ともいて、僕は幸せな状況に頬を緩めた。具合悪くて心配させたり、熱で苦しいのは嫌だけど、今みたいに皆で寝るのは好き。
目を閉じると、真っ暗な闇に吸い込まれた。一瞬で眠ったのに、声だけが聞こえる。アスティとアベル、ルビアかな?
どうやって入り込まれた、と怖い声を出したアスティ。あの男の人が叫んだ言葉を伝えるルビア。アベルが唸るように呟いたのは、イース神聖国を倒す必要性。
難しい話だから半分も分からなかった。でも僕が誰かに嫌われて、それで皆が困ってるみたい。アスティを困らせるなら、僕はいろいろ我慢するよ。おやつもなくていいし、ご飯も半分でいい。お手伝いだって出来るから……怖い声を出さないで。
握った手にきゅっと力を入れる。握り返すアスティの手が温かいのに、いつもより冷たくて。なぜか悲しくなった。僕はアスティと一緒に生きたいだけなのに、どうして邪魔をするんだろう。
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「カイは私と幸せになることだけ考えてくれ。それ以外は何も知らなくていい」
少し怖い声で強く言われたのに、嬉しくて僕は笑っていた。うん、僕、アスティと幸せになることを考える。それ以外は聞こえないよ。
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