【完結】世界を滅ぼす僕だけど、愛されてもいいですか

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

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41.僕の知らない誘拐や暗殺

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 婚約式が終わると、僕は正式に竜女王陛下の婚約者として認められた。半分も意味は分からないけど、それでいいみたい。女王より賢い王配は騒乱の元になるから嫌われるんだよ。そうらんって、何をすることだろう。

 僕はまだ知らないことばかりで、これから勉強していく。アスティより頭が良くなる心配はないから、僕はずっと「そうらん」に関係ないと思う。「おうはい」は僕のことで、番様とは違う呼び方なんだって。覚えられるかな……僕はカイって呼んでもらえたらそれでいいのに。

「番様のお名前を呼ぶことが許されるのは、とても名誉なことです」

 礼儀作法の先生がそう教えてくれる。僕が呼んで欲しくても、女王陛下であるアスティが「ダメ」って言ったらダメなんだ。だから勝手に許可を出したらいけないの。

「先にアスティに相談すればいい?」

「そうですね。そのようにすると竜女王陛下もお喜びになりますよ」

 ウサギの先生のお話は難しい。内容じゃなくて、言葉の使い方がよく分からない。でも僕のために目線を低くして話す優しい先生で、いろいろ知っていた。だから大好きな先生だよ。僕を叩いたり蹴ったりしないし、間違えても怒鳴らないから。

 大きな声は今も怖いし、頭の上に手を翳されるのも嫌。僕は我が侭なんだと思う。アスティに嫌われないように、我慢も覚えなきゃいけないよね。

「番様のお披露目は国外の来賓を招いて改めて行いますので、また歩く練習しましょうね」

 らいひんは偉い人のこと。その人達相手に、またお披露目の宴をするみたい。僕はアスティの番様でおうはいだから頑張る。ぐっと拳を握って気合を入れ、歩く練習を始めた。頭の上に置いたぬいぐるみが落ちないように歩く。

 ゆっくり過ぎてもダメで、急ぐと落ちちゃう。アスティが綺麗に歩けるのは、この練習をしたからだと聞いた。アスティは僕なら出来るって言ったから、がっかりさせたくない。何度も歩く練習をして、時間いっぱい頑張った。

「ありがとうございました」

 お礼を言って、侍女の人や騎士の人のお迎えを待つ。お屋敷の中でも、僕一人で歩いたらいけないの。迷子にならなくても、危ないんだって。理由は難しくて「ゆうかい」や「あんさつ」があるかも知れないと言ってたかな? どっちも知らない言葉だな。

 ウサギの先生が一緒にお話ししながら待っててくれて、侍女の人が挨拶して一緒に歩き出す。あれ? 今日は騎士の人がいないんだね。いつもは一緒に来るのに。それに、この侍女の人は初めて見るお顔だ。じっと見上げていたら、振り返った侍女の人が僕を睨んだ。

 びっくりして足を止める。怖い、殴る気かも知れない。伸ばされた手を避けて庭の方へ走り出した。どうしよう、どこへ隠れたら安全かな。きょろきょろ探す僕の襟を後ろから掴んだ侍女の人は、頭にすっぽりと何か袋をかぶせた。

 アスティ! 叫んだけど声は出なくて、怖くて震えながら丸まる。袋の上から殴られたのか、頭にがつんと衝撃があって目を閉じた。助けて……痛いのも怖いのも、もう嫌だ。
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