25 / 153
24.特別な関係だとデートするの
しおりを挟む
ドラゴンが珍しいのかな。人がたくさん集まってきた。銀色のアスティは綺麗だから、きっと近くで見たいんだと思う。僕は箱にしっかり捕まって、着陸に備えた。
白い砂がある場所に降りた。細かくて小さな粒がいっぱいで、箱から飛び降りようとしたら「まだよ」と止められる。首を傾げた僕をよそに、アスティは器用に魔法で僕の入った箱を下ろした。でも「いいよ」がないから待ってる。
荷物を置いたアスティが光って、人の姿に戻った。あれ? さっきとお洋服が違う。赤い線が入った白い服だったのに、今は青いスカート姿だ。
「着替えたの?」
「そうよ。カイと初めてのデートだもの」
デートは恋人同士が二人で出かける事。教えてもらって頷く。そっか、僕とアスティは恋人同士なんだね。ところで、恋人って何するの? お友達とは違うのかな。尋ねたら、お友達よりもっと親しくて特別な関係みたい。アスティと僕が特別? すごく嬉しい。
「竜女王陛下、お越しとは存じ上げず……っぷ」
駆けてきた大柄な男の人が、白い砂の上で転んだ。言葉が途中で切れて、ぺっと砂を吐いてる。食べちゃったの? 美味しくないんじゃないかな。僕も蹴られて土が口に入ったことあるけど、美味しくなかった。
顔を上げて隣をみれば、アスティが変な笑い方してる。困ったような顔で、でも笑ってる感じ。あの男の人が嫌なのかな。僕が追い払ってもいいよ。何回か殴られたら、満足していなくなると思う。
こっそり提案したら、そんなことしなくていいと言われた。強い口調と声だけど、僕に怒ってるわけじゃないって。今度は悲しそうな顔をしてる。僕、余計なこと言わなければよかった。しょんぼりしながら、男の人がたどり着くまで待った。
「竜女王陛下、お待たせいたしました。本日はどのようなご予定ですか? 王城へいらしていただければ、歓迎を……そちらの若君はどちらの」
「ご苦労。歓待は不要。この子に興味を示すことは許さない。理解したか?」
「は、はい。失礼いたします」
手をもじもじ擦り合わせながら、男の人は離れていった。見送って、本当にアスティは強いんだと感心する。殴られなくても、相手の人がいなくなったよ。でも僕が弱いと知ってるのか、じろじろ見られた。アスティの後ろに隠れたら、手を繋いでくれる。
「カイ、大丈夫よ。彼はもう近づいてこないわ」
「うん。じろじろ見るの、いけないよね」
「ええ、そうね……じろじろ……見たのなら対価を要求しなくちゃ」
難しい言葉は分からない。たいかをよーきゅー? 首を傾げた僕を抱き上げ、周りに集まった人を無視したアスティが海に近づいた。匂いがすごいする。
海の手前は砂になってて、大きな水溜まりは近づいたり離れたりした。縁の部分はまだ成長してるのかな。こっちに近づいて、でも戻ってく。
「これは波というの。海はいつも揺れているのよ」
「波……夜も動いてるの?」
「賢いわね、カイ。人が見てなくてもずっと、打ち寄せては戻っていくわ」
見てない時もちゃんと動いてるなんて、波は偉いんだね。アスティが持ってきた荷物は、皮で包んである。そこへ魔法をかけて、僕とアスティは海へ数歩近づいた。
白い砂がある場所に降りた。細かくて小さな粒がいっぱいで、箱から飛び降りようとしたら「まだよ」と止められる。首を傾げた僕をよそに、アスティは器用に魔法で僕の入った箱を下ろした。でも「いいよ」がないから待ってる。
荷物を置いたアスティが光って、人の姿に戻った。あれ? さっきとお洋服が違う。赤い線が入った白い服だったのに、今は青いスカート姿だ。
「着替えたの?」
「そうよ。カイと初めてのデートだもの」
デートは恋人同士が二人で出かける事。教えてもらって頷く。そっか、僕とアスティは恋人同士なんだね。ところで、恋人って何するの? お友達とは違うのかな。尋ねたら、お友達よりもっと親しくて特別な関係みたい。アスティと僕が特別? すごく嬉しい。
「竜女王陛下、お越しとは存じ上げず……っぷ」
駆けてきた大柄な男の人が、白い砂の上で転んだ。言葉が途中で切れて、ぺっと砂を吐いてる。食べちゃったの? 美味しくないんじゃないかな。僕も蹴られて土が口に入ったことあるけど、美味しくなかった。
顔を上げて隣をみれば、アスティが変な笑い方してる。困ったような顔で、でも笑ってる感じ。あの男の人が嫌なのかな。僕が追い払ってもいいよ。何回か殴られたら、満足していなくなると思う。
こっそり提案したら、そんなことしなくていいと言われた。強い口調と声だけど、僕に怒ってるわけじゃないって。今度は悲しそうな顔をしてる。僕、余計なこと言わなければよかった。しょんぼりしながら、男の人がたどり着くまで待った。
「竜女王陛下、お待たせいたしました。本日はどのようなご予定ですか? 王城へいらしていただければ、歓迎を……そちらの若君はどちらの」
「ご苦労。歓待は不要。この子に興味を示すことは許さない。理解したか?」
「は、はい。失礼いたします」
手をもじもじ擦り合わせながら、男の人は離れていった。見送って、本当にアスティは強いんだと感心する。殴られなくても、相手の人がいなくなったよ。でも僕が弱いと知ってるのか、じろじろ見られた。アスティの後ろに隠れたら、手を繋いでくれる。
「カイ、大丈夫よ。彼はもう近づいてこないわ」
「うん。じろじろ見るの、いけないよね」
「ええ、そうね……じろじろ……見たのなら対価を要求しなくちゃ」
難しい言葉は分からない。たいかをよーきゅー? 首を傾げた僕を抱き上げ、周りに集まった人を無視したアスティが海に近づいた。匂いがすごいする。
海の手前は砂になってて、大きな水溜まりは近づいたり離れたりした。縁の部分はまだ成長してるのかな。こっちに近づいて、でも戻ってく。
「これは波というの。海はいつも揺れているのよ」
「波……夜も動いてるの?」
「賢いわね、カイ。人が見てなくてもずっと、打ち寄せては戻っていくわ」
見てない時もちゃんと動いてるなんて、波は偉いんだね。アスティが持ってきた荷物は、皮で包んである。そこへ魔法をかけて、僕とアスティは海へ数歩近づいた。
31
お気に入りに追加
458
あなたにおすすめの小説
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活
高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。
黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、
接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。
中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。
無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。
猫耳獣人なんでもござれ……。
ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。
R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。
そして『ほの暗いです』
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」
思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。
「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」
全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。
異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!
と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?
放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。
あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?
これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。
【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません
(ネタバレになるので詳細は伏せます)
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載
2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品)
2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品
2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる