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22.隣の国まで空のお散歩するの
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朝起きたら、いつもアスティの腕の中にいる。一緒に起き上がって顔を洗い、キスをしてベッドを降りた。ベッドの横に並んで座るぬいぐるみに、順番に声をかける。
一番近いところからウサギさん、ドラゴン、お馬さん、熊さんで、最後にアスティがくれた大きな猫さん。全部に声をかけて、撫でてからアスティに抱きついた。
「いい子ね、カイ。今日は約束していた空の散歩よ」
「やった!」
アスティは毎日のお仕事がある。僕とずっと遊んでいられないの。だけど、お休みの日があって、その日はずっと一緒にいられた。前は一人でも気にならなかったけど、今は一人が寂しい。アスティがお仕事の日は、お部屋で本を眺めたりぬいぐるみとお昼寝するけど。本当はアスティと一緒の部屋にいたいんだ。
今度お願いしてみようかな。でも断られたら悲しくて泣いちゃうと思う。朝と夜は絶対に隣にいるから、僕も我慢しないといけないよね。
空の散歩は、アスティがドラゴンになって僕を乗せて出かけること。ご飯やお菓子が入った箱と僕を乗せて、アスティはすごく遠く高く飛べるんだよ。
銀色の鱗に包まれたアスティの姿は美しくて、いつも僕はぺたりと体をくっ付けている。飛んでる時も、降りる時も。その方がアスティと近い気がするし、喜んでくれるから。僕もアスティも嬉しいなんて、お得だよね。
「食べたい物があるかしら」
尋ねるアスティのお膝に座って、横向きに抱っこされた僕は指を折って数える。
「焼いたお菓子、冷たい氷菓子と葡萄のジュース。あとパンにハムとチーズが入ったやつ」
「そうね、氷菓子は溶けちゃうから帰ってきて食べましょうか」
侍女のお姉さんが頷いて、連絡のために出ていく。代わりに別の侍女さんがご飯を並べた。朝ご飯、と呼ぶんだ。僕も少しずつ言葉を覚えてるの。朝ご飯、昼ご飯、夜ご飯があるんだよ。今までと違って、一日に4回も食べる時間があるの。お昼と夜の間におやつも貰える。
「うん。アスティは今日、ずっと一緒?」
「ええ。お仕事はお休みだもの。カイと一緒に過ごすわ。せっかくだから隣の国に行こうと思うの。見たことがない大きいお魚を食べましょうね」
「どのくらい大きい?」
「カイがぱくりと飲み込まれるくらい大きいわ」
びっくり。部屋の壁際に並んだぬいぐるみを指差した。
「あの猫さんくらい?」
「いいえ、もっと大きいわよ」
一番大きいぬいぐるみを指差したのに、もっと大きいと言われた。僕どころか、アスティまで食べられちゃう!
「僕、アスティが食べられそうになったら助ける」
代わりに僕が食べられるから、その間に逃げてね。伝えた内容に驚いたのか、アスティは目を見開いた後笑った。
「安心して、私は強いのよ。大きい魚でも捕まえて齧ってやるんだから」
朝ご飯のスープに、ちぎったパンを入れる。じわじわと染み込んだパンを、スプーンで掬ったアスティが差し出す。
「あーん」
自分で声を出して口を開け、いっぱいスープを吸ったパンを食べた。柔らかくて美味しい。ほんのり甘いパンだ。サラダの葉っぱで巻いたお肉を齧り、またパンを食べる。最後にジュースを飲んで終わり。今日はオレンジのジュースだった。
「ふふっ、たくさん食べてくれて嬉しいわ。お着替えして出かけましょうね」
その頃には、持っていくご飯の準備も終わるって。今日のお荷物は大きくて、こっそり覗いたら毛布や着替えも入ってた。アスティ、どこかでお昼寝するつもりなのかな。
一番近いところからウサギさん、ドラゴン、お馬さん、熊さんで、最後にアスティがくれた大きな猫さん。全部に声をかけて、撫でてからアスティに抱きついた。
「いい子ね、カイ。今日は約束していた空の散歩よ」
「やった!」
アスティは毎日のお仕事がある。僕とずっと遊んでいられないの。だけど、お休みの日があって、その日はずっと一緒にいられた。前は一人でも気にならなかったけど、今は一人が寂しい。アスティがお仕事の日は、お部屋で本を眺めたりぬいぐるみとお昼寝するけど。本当はアスティと一緒の部屋にいたいんだ。
今度お願いしてみようかな。でも断られたら悲しくて泣いちゃうと思う。朝と夜は絶対に隣にいるから、僕も我慢しないといけないよね。
空の散歩は、アスティがドラゴンになって僕を乗せて出かけること。ご飯やお菓子が入った箱と僕を乗せて、アスティはすごく遠く高く飛べるんだよ。
銀色の鱗に包まれたアスティの姿は美しくて、いつも僕はぺたりと体をくっ付けている。飛んでる時も、降りる時も。その方がアスティと近い気がするし、喜んでくれるから。僕もアスティも嬉しいなんて、お得だよね。
「食べたい物があるかしら」
尋ねるアスティのお膝に座って、横向きに抱っこされた僕は指を折って数える。
「焼いたお菓子、冷たい氷菓子と葡萄のジュース。あとパンにハムとチーズが入ったやつ」
「そうね、氷菓子は溶けちゃうから帰ってきて食べましょうか」
侍女のお姉さんが頷いて、連絡のために出ていく。代わりに別の侍女さんがご飯を並べた。朝ご飯、と呼ぶんだ。僕も少しずつ言葉を覚えてるの。朝ご飯、昼ご飯、夜ご飯があるんだよ。今までと違って、一日に4回も食べる時間があるの。お昼と夜の間におやつも貰える。
「うん。アスティは今日、ずっと一緒?」
「ええ。お仕事はお休みだもの。カイと一緒に過ごすわ。せっかくだから隣の国に行こうと思うの。見たことがない大きいお魚を食べましょうね」
「どのくらい大きい?」
「カイがぱくりと飲み込まれるくらい大きいわ」
びっくり。部屋の壁際に並んだぬいぐるみを指差した。
「あの猫さんくらい?」
「いいえ、もっと大きいわよ」
一番大きいぬいぐるみを指差したのに、もっと大きいと言われた。僕どころか、アスティまで食べられちゃう!
「僕、アスティが食べられそうになったら助ける」
代わりに僕が食べられるから、その間に逃げてね。伝えた内容に驚いたのか、アスティは目を見開いた後笑った。
「安心して、私は強いのよ。大きい魚でも捕まえて齧ってやるんだから」
朝ご飯のスープに、ちぎったパンを入れる。じわじわと染み込んだパンを、スプーンで掬ったアスティが差し出す。
「あーん」
自分で声を出して口を開け、いっぱいスープを吸ったパンを食べた。柔らかくて美味しい。ほんのり甘いパンだ。サラダの葉っぱで巻いたお肉を齧り、またパンを食べる。最後にジュースを飲んで終わり。今日はオレンジのジュースだった。
「ふふっ、たくさん食べてくれて嬉しいわ。お着替えして出かけましょうね」
その頃には、持っていくご飯の準備も終わるって。今日のお荷物は大きくて、こっそり覗いたら毛布や着替えも入ってた。アスティ、どこかでお昼寝するつもりなのかな。
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