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24.顔に傷があっても綺麗なの

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 お腹が苦しくなるまで食べて、果物を手に抱っこで帰る。その時も、皆が手を振ってくれた。左の手は果物を掴んでいるから、右手を目一杯動かす。バイバイと振りながら、食堂を出た。

 廊下を進むディーは、いろんな人に頭を下げられる。偉いのかな。お母さんもお客さんによく頭を下げられていたから、お家の持ち主が偉いのかも。偉いは、まだよくわからない。強かったり、綺麗だと偉い?

 考え込む僕に、ゆっくり覚えればいいとアガリは微笑んだ。歯を見せないでにこりとする。その顔は優しくて好き。ディーもアガリも、すごく綺麗な顔だ。そう褒めたら、僕の方が可愛いと言われた。

 僕は可愛いじゃなくて、綺麗のお話をしてるの!

 僕が二人を綺麗だと褒めるたび、変な顔をされる。傷があって怖いだろう? とディーは首を傾げた。僕も同じ方向へ首を倒す。同じ角度で、じっくり眺めた。

 顔に傷はある。ちゃんと見えているよ。でも綺麗なんだもん。お父さんもいっぱい傷があって、お母さんはあまりない。でも二人とも綺麗だった。お顔や色も素敵だけど、周りがキラキラするんだよ。

 両手を広げて説明したら、もっと詳しく話してごらんと言われた。だから順番にお話しする。

 顔に傷があるのは普通で、お母さんみたいに傷がないのは魔族に多いの。種族が違うと羽があったりなかったりするから、それは綺麗とは別だった。牙があるから綺麗とは限らないし、爪がなくても綺麗な人もいる。

 ぶわっと周りに綺麗な色や光を纏っている人が、綺麗な人なんだよ。濁ってる人は綺麗じゃない。お母さんもその区別でいいと言った。綺麗な人や目を合わせて話をする人は、信用していいの。ここまで話したら、ようやく二人に伝わったみたい。

「俺は何色の光だ?」

「うんとね、お日様の色。お父さんと同じ」

「私は?」

「キラキラするお星様みたいな色」

 だから綺麗なの。そう締めくくって、僕は果物を齧った。酸っぱくて、少しだけ甘い。顔がきゅっと真ん中に寄っちゃう。アガリは慌ててお水をくれた。ゴクリと飲んで、また果物を齧る。ちょっと慣れた。真ん中の方が甘いみたい。

「顔に傷があると怖くない?」

 アガリは変なこと言う。瞬きして、僕は耳が肩にくっつきそうなほど傾いた。

「怖くないよ。お父さんも傷がいっぱいあった。お客さんも傷のある人が来る。皆、優しいもん」

 僕に痛いことや酷いことをしない。だから傷があるのは怖くないよ。そこまで説明して、僕は果物を頬張った。うっ! 酸っぱいのがいっぱいだった。顔をきゅっと真ん中に寄せる感じにして、我慢する。

 ディーやアガリは、僕が傷を怖がると思ったのかな。顔を上げたら、なぜか強く抱っこされた。手にした果物が肩に触れて、ディーの服を濡らしてしまう。でもぎゅっと抱きついて離れなかった。

 果物の汁がついているのを忘れて、ディーの頭を撫でる。べったりと髪の毛がついて、慌てた。

「ディー、髪がべたべた」

「うわっ、本当だ」

 慌てたディーと一緒に、僕もお風呂に運ばれた。果物の汁は、僕のお洋服も汚して。腕もベタベタだった。
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