24 / 90
24.顔に傷があっても綺麗なの
しおりを挟む
お腹が苦しくなるまで食べて、果物を手に抱っこで帰る。その時も、皆が手を振ってくれた。左の手は果物を掴んでいるから、右手を目一杯動かす。バイバイと振りながら、食堂を出た。
廊下を進むディーは、いろんな人に頭を下げられる。偉いのかな。お母さんもお客さんによく頭を下げられていたから、お家の持ち主が偉いのかも。偉いは、まだよくわからない。強かったり、綺麗だと偉い?
考え込む僕に、ゆっくり覚えればいいとアガリは微笑んだ。歯を見せないでにこりとする。その顔は優しくて好き。ディーもアガリも、すごく綺麗な顔だ。そう褒めたら、僕の方が可愛いと言われた。
僕は可愛いじゃなくて、綺麗のお話をしてるの!
僕が二人を綺麗だと褒めるたび、変な顔をされる。傷があって怖いだろう? とディーは首を傾げた。僕も同じ方向へ首を倒す。同じ角度で、じっくり眺めた。
顔に傷はある。ちゃんと見えているよ。でも綺麗なんだもん。お父さんもいっぱい傷があって、お母さんはあまりない。でも二人とも綺麗だった。お顔や色も素敵だけど、周りがキラキラするんだよ。
両手を広げて説明したら、もっと詳しく話してごらんと言われた。だから順番にお話しする。
顔に傷があるのは普通で、お母さんみたいに傷がないのは魔族に多いの。種族が違うと羽があったりなかったりするから、それは綺麗とは別だった。牙があるから綺麗とは限らないし、爪がなくても綺麗な人もいる。
ぶわっと周りに綺麗な色や光を纏っている人が、綺麗な人なんだよ。濁ってる人は綺麗じゃない。お母さんもその区別でいいと言った。綺麗な人や目を合わせて話をする人は、信用していいの。ここまで話したら、ようやく二人に伝わったみたい。
「俺は何色の光だ?」
「うんとね、お日様の色。お父さんと同じ」
「私は?」
「キラキラするお星様みたいな色」
だから綺麗なの。そう締めくくって、僕は果物を齧った。酸っぱくて、少しだけ甘い。顔がきゅっと真ん中に寄っちゃう。アガリは慌ててお水をくれた。ゴクリと飲んで、また果物を齧る。ちょっと慣れた。真ん中の方が甘いみたい。
「顔に傷があると怖くない?」
アガリは変なこと言う。瞬きして、僕は耳が肩にくっつきそうなほど傾いた。
「怖くないよ。お父さんも傷がいっぱいあった。お客さんも傷のある人が来る。皆、優しいもん」
僕に痛いことや酷いことをしない。だから傷があるのは怖くないよ。そこまで説明して、僕は果物を頬張った。うっ! 酸っぱいのがいっぱいだった。顔をきゅっと真ん中に寄せる感じにして、我慢する。
ディーやアガリは、僕が傷を怖がると思ったのかな。顔を上げたら、なぜか強く抱っこされた。手にした果物が肩に触れて、ディーの服を濡らしてしまう。でもぎゅっと抱きついて離れなかった。
果物の汁がついているのを忘れて、ディーの頭を撫でる。べったりと髪の毛がついて、慌てた。
「ディー、髪がべたべた」
「うわっ、本当だ」
慌てたディーと一緒に、僕もお風呂に運ばれた。果物の汁は、僕のお洋服も汚して。腕もベタベタだった。
廊下を進むディーは、いろんな人に頭を下げられる。偉いのかな。お母さんもお客さんによく頭を下げられていたから、お家の持ち主が偉いのかも。偉いは、まだよくわからない。強かったり、綺麗だと偉い?
考え込む僕に、ゆっくり覚えればいいとアガリは微笑んだ。歯を見せないでにこりとする。その顔は優しくて好き。ディーもアガリも、すごく綺麗な顔だ。そう褒めたら、僕の方が可愛いと言われた。
僕は可愛いじゃなくて、綺麗のお話をしてるの!
僕が二人を綺麗だと褒めるたび、変な顔をされる。傷があって怖いだろう? とディーは首を傾げた。僕も同じ方向へ首を倒す。同じ角度で、じっくり眺めた。
顔に傷はある。ちゃんと見えているよ。でも綺麗なんだもん。お父さんもいっぱい傷があって、お母さんはあまりない。でも二人とも綺麗だった。お顔や色も素敵だけど、周りがキラキラするんだよ。
両手を広げて説明したら、もっと詳しく話してごらんと言われた。だから順番にお話しする。
顔に傷があるのは普通で、お母さんみたいに傷がないのは魔族に多いの。種族が違うと羽があったりなかったりするから、それは綺麗とは別だった。牙があるから綺麗とは限らないし、爪がなくても綺麗な人もいる。
ぶわっと周りに綺麗な色や光を纏っている人が、綺麗な人なんだよ。濁ってる人は綺麗じゃない。お母さんもその区別でいいと言った。綺麗な人や目を合わせて話をする人は、信用していいの。ここまで話したら、ようやく二人に伝わったみたい。
「俺は何色の光だ?」
「うんとね、お日様の色。お父さんと同じ」
「私は?」
「キラキラするお星様みたいな色」
だから綺麗なの。そう締めくくって、僕は果物を齧った。酸っぱくて、少しだけ甘い。顔がきゅっと真ん中に寄っちゃう。アガリは慌ててお水をくれた。ゴクリと飲んで、また果物を齧る。ちょっと慣れた。真ん中の方が甘いみたい。
「顔に傷があると怖くない?」
アガリは変なこと言う。瞬きして、僕は耳が肩にくっつきそうなほど傾いた。
「怖くないよ。お父さんも傷がいっぱいあった。お客さんも傷のある人が来る。皆、優しいもん」
僕に痛いことや酷いことをしない。だから傷があるのは怖くないよ。そこまで説明して、僕は果物を頬張った。うっ! 酸っぱいのがいっぱいだった。顔をきゅっと真ん中に寄せる感じにして、我慢する。
ディーやアガリは、僕が傷を怖がると思ったのかな。顔を上げたら、なぜか強く抱っこされた。手にした果物が肩に触れて、ディーの服を濡らしてしまう。でもぎゅっと抱きついて離れなかった。
果物の汁がついているのを忘れて、ディーの頭を撫でる。べったりと髪の毛がついて、慌てた。
「ディー、髪がべたべた」
「うわっ、本当だ」
慌てたディーと一緒に、僕もお風呂に運ばれた。果物の汁は、僕のお洋服も汚して。腕もベタベタだった。
246
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。
「私ね、皆を守りたいの」
幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/06/20……完結
2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位
2022/02/14……アルファポリスHOT 62位
2022/02/14……連載開始
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「お生まれになりました! お嬢様です!!」
長い紆余曲折を経て結ばれた魔王ルシファーは、魔王妃リリスが産んだ愛娘に夢中になっていく。子育ては二度目、余裕だと思ったのに予想外の事件ばかり起きて!?
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
魔王夫妻のなれそめは【魔王様、溺愛しすぎです!】を頑張って読破してください(o´-ω-)o)ペコッ
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2023/06/04 完結
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2021/12/25 小説家になろう ハイファンタジー日間 56位
※2021/12/24 エブリスタ トレンド1位
※2021/12/24 アルファポリス HOT 71位
※2021/12/24 連載開始
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します
黒木 楓
恋愛
隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。
どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。
巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。
転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。
そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる