上 下
14 / 90

14.お菓子が崩れちゃった

しおりを挟む
 アガリはちゃんと毛布を見つけてくれた。抱きついてお礼を言って、大事にベッドの上に広げる。じっと見つめて、端の部分を撫でた。ここ、破れていたと思う。出かける前にお母さんが直してくれたのかも。

 絨毯の上を走って、寝室の外で靴を履く。座って履こうとした僕をディーが抱っこした。靴も拾って履かせながら歩き出す。

「たくさんの人を呼ぼうかと思ったんだが、ルンが大変だからな。こちらから遊びに行こうと思う。構わないか?」

「うん」

 ワクワクするね。いろんな人とお話ししたり、触れ合ったりできるの。精霊の子は小さくて、透明っぽくて、悪戯好き。魔獣の子は僕と寝転がって遊んでくれた。今度会う人はどんな人だろう。

 今日は遅いから出かけない。でも明日からお家の外へ出るんだよ。

「アガリ、あーん」

 口を開けておやつをもらう。柔らかい皮に包んだ丸いお菓子は、甘いお豆が中に入っていた。こんなの初めて食べたよ。ディーがくれたのは、甘いお豆の四角いケーキだ。こっちも口まで運んでもらう。もぐもぐと頬張って食べれば、味がちょっと違う。

 まん丸なお菓子を掴んで、ディーとアガリにあげようとした。割ったら、ぐにゃりと指が中に入っちゃう。慌てて持ち直していると、中身が溢れてきた。

「まんじゅうが崩れるぞ」

「どうしました?」

 二人が心配して手を貸そうとするのを断り、なんとか三つにする。でもボロボロで、元の姿と全然違う。アガリが僕にくれた時は、ちゃんとした形だったのに。悲しくなって、ぽろぽろと涙が落ちる。

 理由を聞かれて、しゃくりあげながら話した。ちゃんと割って、皆で食べたかったこと。でも崩れたこと。焦って引っ張ったら中身が落ちたこと。ベトベトになったお菓子に、ごめんなさいも付け足した。

「じゃあ、その一つをくれ」

 口を開けたディーが、手の中でベトベトになったお菓子を待っている。いいのかな、僕がいっぱい指突っ込んじゃったのに。迷いながら、もう少し小さいのを口に入れた。もぐもぐと噛んでから、僕にまたお菓子をくれと口を開ける。

「次は私の番です」

 アガリも同じように「あーん」をしていた。どうしよう。お菓子の小さいのを、両手に持って片方ずつ入れた。手の指も舐められちゃう。擽ったくて笑う僕に、二人は美味しいと言った。

「次はルンの番だ」

 またお菓子をもらう。次は僕があげる。繰り返していっぱい食べた。夜のご飯まで、外のお庭を散歩する。お腹が空かないと、残しちゃう。ご飯は誰かの命だから、大切に頂きなさい。そう教えてもらったから、ちゃんとお腹を空かせて美味しく食べるんだ。

 途中で見つけた小さなお花を摘んで、部屋でアガリと一緒に紙に挟んだ。魔法で水を消して、ぺたんこにする。すぐにできたお花のぺたんこは、綺麗な色をしていた。花の赤がそのまま残っている。

「綺麗」

「ええ。せっかくなのでリボンをつけましょうか」

 ピンクのリボンを付けて、壁に飾るんだ。作業が終わった頃、ディーが来て褒められた。ディーはお仕事していたみたいだけど、何のお仕事なんだろう。今度聞いてみようっと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

目覚めたら地下室!?~転生少女の夢の先~

そらのあお
ファンタジー
夢半ばに死んでしまった少女が異世界に転生して、様々な困難を乗り越えて行く物語。 *小説を読もう!にも掲載中

【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。 食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。 「あなた……毛皮をどうしたの?」 「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」 思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!? もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/09/21……完結 2023/07/17……タイトル変更 2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位 2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位 2023/07/15……エブリスタ トレンド1位 2023/07/14……連載開始

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】獅子の威を借る子猫は爪を研ぐ

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
 魔族の住むゲヘナ国の幼女エウリュアレは、魔力もほぼゼロの無能な皇帝だった。だが彼女が持つ価値は、唯一無二のもの。故に強者が集まり、彼女を守り支える。揺らぐことのない玉座の上で、幼女は最弱でありながら一番愛される存在だった。 「私ね、皆を守りたいの」  幼い彼女の望みは優しく柔らかく、他国を含む世界を包んでいく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/20……完結 2022/02/14……小説家になろう ハイファンタジー日間 81位 2022/02/14……アルファポリスHOT 62位 2022/02/14……連載開始

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「お生まれになりました! お嬢様です!!」  長い紆余曲折を経て結ばれた魔王ルシファーは、魔王妃リリスが産んだ愛娘に夢中になっていく。子育ては二度目、余裕だと思ったのに予想外の事件ばかり起きて!?  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。  魔王夫妻のなれそめは【魔王様、溺愛しすぎです!】を頑張って読破してください(o´-ω-)o)ペコッ 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう ※2023/06/04  完結 ※2022/05/13  第10回ネット小説大賞、一次選考通過 ※2021/12/25  小説家になろう ハイファンタジー日間 56位 ※2021/12/24  エブリスタ トレンド1位 ※2021/12/24  アルファポリス HOT 71位 ※2021/12/24  連載開始

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

処理中です...