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05.この家で暮らそう
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「魔王陛下が亡くなられた、と?」
「ああ、それもご夫婦ともに無惨な状態で。この子だけ遺して」
難しい言葉が聞こえてきて、僕は目を開いた。横向きに寝ていたみたいで、お洋服が見える。白い服をぎゅっと掴んだら、頭を撫でられた。温かくて大きな手だ。でも白い布が巻いてあるし、薬草の匂いがした。
「起きたのか、ルン」
こくんと頷いたら、抱き起こされた。縦に抱っこされて、部屋に知らない人がいることに気づく。そういえば、さっきお話ししていたみたい。きょろきょろと二人の顔を見比べた。似てる?
「似てるだろ」
僕の考えを読んだのかな。ディーはにっこりと笑う。頷いたら、弟だと教えてもらった。名前はアガリアレプト、覚えにくい。
「アガリ?」
「うん、それでいい」
ディーが頷いたので、僕は安心した。そういえば、羽が痛くない。背中を見ると、白い布が巻いてあった。これはディーの腕と同じだ。
「同じだ!」
「ん? 何が」
「包帯でしょうか」
首を傾げたディーに、アガリが指で教える。僕が白い布を見ていたからわかったのかな。アガリはすごい。この白い布は包帯って呼ぶのか。覚えて、後でお母さんに……。
ちらっと頭の中に浮かんだのは、真っ赤な風景だ。倒れたお母さんを抱っこして動かないお父さん、あれは何だったの?
「ディー」
膝に抱っこされて座る僕に届く長い髪を、ちょっとだけ引っ張った。乱暴にすると痛いから、少しだけね。下を向いてくれたディーに尋ねる。
「お父さんとお母さんは?」
「っ! 覚えていないのか」
何か忘れちゃった? うーんと悩む僕に、ディーは泣きそうな顔をした。すると顔がよく似たアガリの手が、ディーを叩く。びっくりして全身が揺れちゃった。痛くないか心配していたら、大丈夫ですとアガリが柔らかく笑う。
ディーも平気だって言った。兄弟の戯れあい? で、加減してるんだ。また新しいこと覚えちゃった。
「ルンの、お父さんとお母さんはその、遠くに」
「出かけるので、代わりにルンを預かることになったんです。そうですよね、兄さん」
「ああ、そうだ。そうなんだよ。この家で暮らそう」
ここは、二人の住むお家かな。ふわふわの絨毯も、柔らかいクッションもあるし、お母さんが好きだった細長い椅子もある。ディーは床に敷いた長細いクッションみたいなのに座っていた。そのお膝に僕、向かいでアガリは目を擦っている。
慌てるディーと落ち着いたアガリ。兄弟っていいな。僕もお兄ちゃんか弟が欲しい。お母さんとお父さんに相談しよう。早く帰ってきたらいいのに。
ゆらゆらと左右に体を揺らす僕を支えるディーが、ずずっと鼻を啜る。見上げると、何でもないって笑おうとした。でも顔がくしゃりと崩れちゃう。白い包帯がある僕の背は痛いから、腕に巻いた包帯の下が痛いのかな。
我慢できなくて泣いてもいいと思う。今は安全なお家にいるから、いいよ。手を伸ばして撫で、僕はあふっと欠伸をした。さっきまで寝てたのに変なの、まだ眠いや。
「ああ、それもご夫婦ともに無惨な状態で。この子だけ遺して」
難しい言葉が聞こえてきて、僕は目を開いた。横向きに寝ていたみたいで、お洋服が見える。白い服をぎゅっと掴んだら、頭を撫でられた。温かくて大きな手だ。でも白い布が巻いてあるし、薬草の匂いがした。
「起きたのか、ルン」
こくんと頷いたら、抱き起こされた。縦に抱っこされて、部屋に知らない人がいることに気づく。そういえば、さっきお話ししていたみたい。きょろきょろと二人の顔を見比べた。似てる?
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僕の考えを読んだのかな。ディーはにっこりと笑う。頷いたら、弟だと教えてもらった。名前はアガリアレプト、覚えにくい。
「アガリ?」
「うん、それでいい」
ディーが頷いたので、僕は安心した。そういえば、羽が痛くない。背中を見ると、白い布が巻いてあった。これはディーの腕と同じだ。
「同じだ!」
「ん? 何が」
「包帯でしょうか」
首を傾げたディーに、アガリが指で教える。僕が白い布を見ていたからわかったのかな。アガリはすごい。この白い布は包帯って呼ぶのか。覚えて、後でお母さんに……。
ちらっと頭の中に浮かんだのは、真っ赤な風景だ。倒れたお母さんを抱っこして動かないお父さん、あれは何だったの?
「ディー」
膝に抱っこされて座る僕に届く長い髪を、ちょっとだけ引っ張った。乱暴にすると痛いから、少しだけね。下を向いてくれたディーに尋ねる。
「お父さんとお母さんは?」
「っ! 覚えていないのか」
何か忘れちゃった? うーんと悩む僕に、ディーは泣きそうな顔をした。すると顔がよく似たアガリの手が、ディーを叩く。びっくりして全身が揺れちゃった。痛くないか心配していたら、大丈夫ですとアガリが柔らかく笑う。
ディーも平気だって言った。兄弟の戯れあい? で、加減してるんだ。また新しいこと覚えちゃった。
「ルンの、お父さんとお母さんはその、遠くに」
「出かけるので、代わりにルンを預かることになったんです。そうですよね、兄さん」
「ああ、そうだ。そうなんだよ。この家で暮らそう」
ここは、二人の住むお家かな。ふわふわの絨毯も、柔らかいクッションもあるし、お母さんが好きだった細長い椅子もある。ディーは床に敷いた長細いクッションみたいなのに座っていた。そのお膝に僕、向かいでアガリは目を擦っている。
慌てるディーと落ち着いたアガリ。兄弟っていいな。僕もお兄ちゃんか弟が欲しい。お母さんとお父さんに相談しよう。早く帰ってきたらいいのに。
ゆらゆらと左右に体を揺らす僕を支えるディーが、ずずっと鼻を啜る。見上げると、何でもないって笑おうとした。でも顔がくしゃりと崩れちゃう。白い包帯がある僕の背は痛いから、腕に巻いた包帯の下が痛いのかな。
我慢できなくて泣いてもいいと思う。今は安全なお家にいるから、いいよ。手を伸ばして撫で、僕はあふっと欠伸をした。さっきまで寝てたのに変なの、まだ眠いや。
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