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03.鎖も全部取ってもらった
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じゃら……僕を抱いたディーが眉を寄せる。ごめんね、僕の足についてる鎖だと思う。そっと指差した先は、鉄格子と繋がっていた。抱っこされたから、引っ張られて短くなったの。
小さな声で謝った僕に、問題ないと返事をする。ディーの手が触れると、鎖は砕けてぱらぱらと落ちた。金属が落ちる音が響いて、それからグシャリと大きな音が重なる。足を引っ張る鎖だけじゃなくて、輪も取ってくれたみたい。
「ありが、と」
「気にするな。あんなのを付けたままは、俺も気分が悪い」
僕に鎖がついていると、嫌な感じがするの? 優しい人なんだな。頬を擦り寄せ、抱っこするディーの首に手を回した。後ろにある羽が見えて、そちらに興味が移る。あの羽、お父さんと形や色が違う。
伝えようと動いたら、背中が痛くて声が出なかった。涙がじわりと滲んでくる。殴る人はもういないから、泣いてもいいかな。ずずずと鼻を鳴らした僕の背で、ぱたりと羽が動いた。その度に痛い。
「どうした? 痛いのか。一時凌ぎだが、ほら」
ディーは僕の口に何かを入れた。甘くて少し酸っぱくて、美味しい。からんと口で転がるのは、飴かも。前にもらったことがある。転がしながら甘さを楽しむ。
気のせいかな、痛いのが少し楽になった。それに、お腹がすごく空いている。ぐぅと鳴ったお腹をぺちんと手で叩いた。勝手に騒いだらダメなの。
「ふふっ、ずいぶん可愛い仕草だ。これじゃ、ご両親は心配しているだろう」
うん、心配してると思う。頷いた僕を連れて、ディーは歩き出した。僕に攻撃する人が来る方角だ。あっちに何があるのか、僕も知らなかった。鉄格子の外の廊下を進み、途中で騒いで長い棒を振り回した人をやっつける。
びっくりするくらい、簡単に倒れちゃった。手をえいって振っただけだよ? ディーは強いんだね。そう言ったら、頭を撫でられた。口の飴が消えてきたところで、もう一つもらう。今度のは香りが違った。
酸っぱさも少なくて、甘い。舌で追いかけると、牙や歯にぶつかる音がした。からころ、その音が楽しくてまた転がす。ディーは階段を登り、外へ出た。
「ふおぃ、いお……」
凄い人の数、飴が邪魔して変な声になっちゃった。おかしくて笑う僕は、もう怖くないの。だってディーは強い。大勢に囲まれても勝っちゃうし、羽があるから逃げられるよ。狭いお部屋や廊下と違い、天井がない空を見上げた。
取り囲む人達が「かかれ」の声で動き出す。わっと走る人の手に、銀色や長い棒が握られていた。それを頭の上に持ち上げたり、殴るみたいに振り回す。ディーはちらりと僕を見て、笑った。座るみたいに抱っこする左腕で、軽く揺らす。
「危ないから、絶対に離れるな」
「うん」
ぎゅっと手を回す。首に捕まって、体をぴたりと寄せた。よくできたと褒めるディーの声に、雷の音が重なる。空を見ると、さっきまで晴れていたのに雲が出てきた。そこに綺麗な光が走る。
あれは知ってる、雷だ。落ちたら火が出るし、黒焦げになるんだよ。ディーの右腕が大きく振られた。その動きを追いかけるみたいに、雷が襲う。バリバリと大きな音を立てて、ディーの後を追うみたいに落ちた。
やっぱり、ディーは強いんだ。僕は嬉しくなった。
小さな声で謝った僕に、問題ないと返事をする。ディーの手が触れると、鎖は砕けてぱらぱらと落ちた。金属が落ちる音が響いて、それからグシャリと大きな音が重なる。足を引っ張る鎖だけじゃなくて、輪も取ってくれたみたい。
「ありが、と」
「気にするな。あんなのを付けたままは、俺も気分が悪い」
僕に鎖がついていると、嫌な感じがするの? 優しい人なんだな。頬を擦り寄せ、抱っこするディーの首に手を回した。後ろにある羽が見えて、そちらに興味が移る。あの羽、お父さんと形や色が違う。
伝えようと動いたら、背中が痛くて声が出なかった。涙がじわりと滲んでくる。殴る人はもういないから、泣いてもいいかな。ずずずと鼻を鳴らした僕の背で、ぱたりと羽が動いた。その度に痛い。
「どうした? 痛いのか。一時凌ぎだが、ほら」
ディーは僕の口に何かを入れた。甘くて少し酸っぱくて、美味しい。からんと口で転がるのは、飴かも。前にもらったことがある。転がしながら甘さを楽しむ。
気のせいかな、痛いのが少し楽になった。それに、お腹がすごく空いている。ぐぅと鳴ったお腹をぺちんと手で叩いた。勝手に騒いだらダメなの。
「ふふっ、ずいぶん可愛い仕草だ。これじゃ、ご両親は心配しているだろう」
うん、心配してると思う。頷いた僕を連れて、ディーは歩き出した。僕に攻撃する人が来る方角だ。あっちに何があるのか、僕も知らなかった。鉄格子の外の廊下を進み、途中で騒いで長い棒を振り回した人をやっつける。
びっくりするくらい、簡単に倒れちゃった。手をえいって振っただけだよ? ディーは強いんだね。そう言ったら、頭を撫でられた。口の飴が消えてきたところで、もう一つもらう。今度のは香りが違った。
酸っぱさも少なくて、甘い。舌で追いかけると、牙や歯にぶつかる音がした。からころ、その音が楽しくてまた転がす。ディーは階段を登り、外へ出た。
「ふおぃ、いお……」
凄い人の数、飴が邪魔して変な声になっちゃった。おかしくて笑う僕は、もう怖くないの。だってディーは強い。大勢に囲まれても勝っちゃうし、羽があるから逃げられるよ。狭いお部屋や廊下と違い、天井がない空を見上げた。
取り囲む人達が「かかれ」の声で動き出す。わっと走る人の手に、銀色や長い棒が握られていた。それを頭の上に持ち上げたり、殴るみたいに振り回す。ディーはちらりと僕を見て、笑った。座るみたいに抱っこする左腕で、軽く揺らす。
「危ないから、絶対に離れるな」
「うん」
ぎゅっと手を回す。首に捕まって、体をぴたりと寄せた。よくできたと褒めるディーの声に、雷の音が重なる。空を見ると、さっきまで晴れていたのに雲が出てきた。そこに綺麗な光が走る。
あれは知ってる、雷だ。落ちたら火が出るし、黒焦げになるんだよ。ディーの右腕が大きく振られた。その動きを追いかけるみたいに、雷が襲う。バリバリと大きな音を立てて、ディーの後を追うみたいに落ちた。
やっぱり、ディーは強いんだ。僕は嬉しくなった。
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