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94.リリアナによく似たお人形作り
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アルムニア大公家が帝都に建設中の屋敷は、半分ほど完成した。リリアナと一緒に様子を見に行き、これから公国へ向かう。確認した屋敷の進行状況の報告と、リリアナの入学が決まったお祝い、大公閣下へのご挨拶のためだった。
すでに昨夜、宮殿でお祖父様達とお祝いをしている。多くのプレゼントをもらい、リリアナは嬉しそうだった。ひいお祖父様はドレスを仕立てる約束をし、お祖母様は可愛い髪留めを贈った。お祖父様は馬車をプレゼントしたので、お父様とお母様が連名で馬を用意する。
迷ってリリアナに何が欲しいか尋ねたら、意外なものを強請られた。私が作ったお人形が欲しい、と。お店で売っている人形ではなく、誰も持っていない手作り。きっと以前から欲しかったのでしょうね。義父であるオスカル様に強請ることは出来ず、義祖父の大公閣下にも言えなかった。
誰か友人が持っていて自慢されたのかしら。幸い、お母様に刺繍を仕込まれたので裁縫は出来る。得意とは言えないけれど、ひと針ずつ心を込めて縫い上げた。リリアナによく似た女の子のお人形よ。宮殿の侍女が用意してくれた布で、お洋服も作った。
時間がかかったけれど、ようやく完成した。移動の馬車で渡せるわ。お人形の髪色は銀、細い銀の刺繍糸を使って長い髪を作った。これなら三つ編みくらいは作れそう。瞳は琥珀色にしたけれど、まさかのお祖母様から差し入れ。本物の琥珀を縫い付けたの。
私より刺繍の上手なお母様が、人形のドレスに刺繍を入れてくれる。すごく豪華なセットになったわ。人形の服や下着、靴などは侍女達も手分けして手伝ってくれた。
エルを抱いて、お母様と一緒に馬車に乗り込む。カルレオン帝国からアルムニア公国までは、事実上国内の移動と同じ。危険はほぼなく、安全な街道が確保されていた。それでも女性皇族の移動なので、ベルトラン将軍が護衛につく。
「ベルトラン、よろしくお願いしますね」
「お任せください」
慣れた様子で将軍を呼び捨てたお母様は、微笑んで私達を促す。新品の馬車は、白に金のラインが入っていた。所々に百合の花が描かれ、螺鈿細工で飾られている。内部は深紅のビロードやピンクのクッションで、鮮やかだった。
「綺麗!」
「リリアナの馬車よ、どうぞ」
お祖父様が贈った馬車は、カルレオン帝国皇室の紋章が数箇所に施されていた。恐る恐る足を踏み入れたリリアナが、クッションを抱いて座る。
「お義母様とお義祖母様もいらして!」
手招きで呼ぶリリアナに続いて、私が奥へ座った。エルを抱いたお母様は、ベルトラン将軍の手を借りて優雅に乗り込む。私がエルを抱くと言ったら、祖母の特権よと笑って首を横に振られた。
新しい馬車は、不思議とラベンダーの香りがした。ぐるりと見回せば、小さなポプリの袋が下がっている。匂いはあの香袋からね。あちこちに細工が施された優美な内装に吐息が漏れた。美しい馬車だわ。
「見事ですね、お母様」
「お父様ったら見栄っ張りなの。でも、本当にリリアナが可愛くて仕方ないんだわ」
ふふっと笑い、動き出す馬車の外を眺めた。カーテンは深紅で、刺繍が施されている。それ以外にも薄いレースのカーテンが用意された。外を見たがるリリアナへの配慮ね。お父様とお母様が贈った二頭の白馬が、軽快に走り出した。
後ろを侍女や荷物を乗せた馬車が続く。レースのカーテン越しに外を見て目を輝かせるリリアナに、私はそっと切り出した。
「遅くなったけれど、お人形を受け取ってくれるかしら」
リリアナが嬉しそうに大きく「はい」と声を上げた。
すでに昨夜、宮殿でお祖父様達とお祝いをしている。多くのプレゼントをもらい、リリアナは嬉しそうだった。ひいお祖父様はドレスを仕立てる約束をし、お祖母様は可愛い髪留めを贈った。お祖父様は馬車をプレゼントしたので、お父様とお母様が連名で馬を用意する。
迷ってリリアナに何が欲しいか尋ねたら、意外なものを強請られた。私が作ったお人形が欲しい、と。お店で売っている人形ではなく、誰も持っていない手作り。きっと以前から欲しかったのでしょうね。義父であるオスカル様に強請ることは出来ず、義祖父の大公閣下にも言えなかった。
誰か友人が持っていて自慢されたのかしら。幸い、お母様に刺繍を仕込まれたので裁縫は出来る。得意とは言えないけれど、ひと針ずつ心を込めて縫い上げた。リリアナによく似た女の子のお人形よ。宮殿の侍女が用意してくれた布で、お洋服も作った。
時間がかかったけれど、ようやく完成した。移動の馬車で渡せるわ。お人形の髪色は銀、細い銀の刺繍糸を使って長い髪を作った。これなら三つ編みくらいは作れそう。瞳は琥珀色にしたけれど、まさかのお祖母様から差し入れ。本物の琥珀を縫い付けたの。
私より刺繍の上手なお母様が、人形のドレスに刺繍を入れてくれる。すごく豪華なセットになったわ。人形の服や下着、靴などは侍女達も手分けして手伝ってくれた。
エルを抱いて、お母様と一緒に馬車に乗り込む。カルレオン帝国からアルムニア公国までは、事実上国内の移動と同じ。危険はほぼなく、安全な街道が確保されていた。それでも女性皇族の移動なので、ベルトラン将軍が護衛につく。
「ベルトラン、よろしくお願いしますね」
「お任せください」
慣れた様子で将軍を呼び捨てたお母様は、微笑んで私達を促す。新品の馬車は、白に金のラインが入っていた。所々に百合の花が描かれ、螺鈿細工で飾られている。内部は深紅のビロードやピンクのクッションで、鮮やかだった。
「綺麗!」
「リリアナの馬車よ、どうぞ」
お祖父様が贈った馬車は、カルレオン帝国皇室の紋章が数箇所に施されていた。恐る恐る足を踏み入れたリリアナが、クッションを抱いて座る。
「お義母様とお義祖母様もいらして!」
手招きで呼ぶリリアナに続いて、私が奥へ座った。エルを抱いたお母様は、ベルトラン将軍の手を借りて優雅に乗り込む。私がエルを抱くと言ったら、祖母の特権よと笑って首を横に振られた。
新しい馬車は、不思議とラベンダーの香りがした。ぐるりと見回せば、小さなポプリの袋が下がっている。匂いはあの香袋からね。あちこちに細工が施された優美な内装に吐息が漏れた。美しい馬車だわ。
「見事ですね、お母様」
「お父様ったら見栄っ張りなの。でも、本当にリリアナが可愛くて仕方ないんだわ」
ふふっと笑い、動き出す馬車の外を眺めた。カーテンは深紅で、刺繍が施されている。それ以外にも薄いレースのカーテンが用意された。外を見たがるリリアナへの配慮ね。お父様とお母様が贈った二頭の白馬が、軽快に走り出した。
後ろを侍女や荷物を乗せた馬車が続く。レースのカーテン越しに外を見て目を輝かせるリリアナに、私はそっと切り出した。
「遅くなったけれど、お人形を受け取ってくれるかしら」
リリアナが嬉しそうに大きく「はい」と声を上げた。
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