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23.夕食に遅れないように
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昼食を終えると、オスカル様は大叔父様を騎士団に引き渡した。いえ、実際はもう少し穏やかな状況ですが、そう表現したくなるほど容赦なく大叔父様は追い返されました。迎えに来た側近や騎士団に連れられ、振り返りながら未練がましく去っていくアルムニア大公に大きく手を振った。
「ご安心くださいな、夕食にお伺いしますわ」
お母様はおっとりと約束を取り付ける。というのも、この街の隣が首都なので、今夜はアルムニア大公邸に宿泊予定になった。大叔父様がごねるので、お父様とお母様が折れた形ね。夕食までに片付く仕事量だといいのですが。
「バレンティナ皇女殿下、ご子息を抱いての観光は疲れるでしょう。私が抱き上げても構いませんか」
ナサニエルへのプレゼント合戦に勝利し、オスカル様は機嫌がよいご様子。赤子を連れての行動が慣れないこともあり、正直、手が疲れていた。お母様が頷くのでお渡しすると、オスカル様は慣れた手付きでナサニエルを抱き上げた。
まだ首が据わらないナサニエルの、首後ろに大きな手を当てたことで姿勢が安定する。軽く揺らしながら様子を見たオスカル様が、顔を近づけた。
「ほら、もう眠っています」
オムツを替えたこともあり、気分がいいみたい。ぷにぷにした頬を突き、私は微笑んだ。
「慣れているのですね」
「義父上に聞きましたか? 私は養女に迎えた姪を育てています。まだ赤子の頃からね」
「では育児の先輩ですわ」
「残念ですが、あなたのお母様には敵いません」
軽快な会話が楽しくて、並んで歩き始めた。案内された店は小物や雑貨品のお店が多く、見ているだけで楽しい。気に入った石鹸やスカーフを購入し、ふと気づけば……お父様が拗ねていた。
「お父様?」
「ナサニエルを抱っこしたい」
ぼそぼそと告げられた内容に、顔を見合わせたオスカル様と吹き出す。
「どうぞ。こんな感じで手を添えてください」
オスカル様に抱き方指導を受けたお父様は、剣も扱う大きな手でナサニエルの首を支えた。ふわりと浮いた瞬間に泣き出しかけたのに、お父様の腕の中で大人しく指を咥えている。抱き方指導は成功だったみたい。
「これ以上は夕食に遅れますね。馬車は私が警護します」
騎士団を連れて来たオスカル様はそう請け負い、新しい護衛が6人ほど増えた。寝台が設えられた馬車に乗り込み、また揺られる。途中から道が変わったのか、揺れが優しくなった。夕暮れが窓から赤く差し込む頃、馬車は静かに停車する。うとうとと眠りかけていた私は、停車に慌てて身を起こした。
「まだ大丈夫、髪が乱れたわね」
同乗するお母様が指先で直す。その間に周囲で物音が続き、ノックがあった。
「第三皇女フェリシア殿下、並びに皇孫バレンティナ皇女殿下。アルムニア大公邸にようこそ」
お礼を言った私の背を、お母様が押した。振り返れば、先に降りてナサニエルを受け取ってと言われる。手を差し伸べて待つオスカル様に助けていただき、いつもより高い馬車の階段を降りた。専用の踏み台が用意されており、足元の不安はない。
ナサニエルを受け取ろうと顔を向ければ、お父様が先に手を伸ばした。孫を抱いたお父様の顔が、緩み切ってるわ。取り上げるのに忍びないと苦笑いし、オスカル様のエスコートで顔を上げた。
目の前に、見たことがない屋敷が羽を広げていた。
「ご安心くださいな、夕食にお伺いしますわ」
お母様はおっとりと約束を取り付ける。というのも、この街の隣が首都なので、今夜はアルムニア大公邸に宿泊予定になった。大叔父様がごねるので、お父様とお母様が折れた形ね。夕食までに片付く仕事量だといいのですが。
「バレンティナ皇女殿下、ご子息を抱いての観光は疲れるでしょう。私が抱き上げても構いませんか」
ナサニエルへのプレゼント合戦に勝利し、オスカル様は機嫌がよいご様子。赤子を連れての行動が慣れないこともあり、正直、手が疲れていた。お母様が頷くのでお渡しすると、オスカル様は慣れた手付きでナサニエルを抱き上げた。
まだ首が据わらないナサニエルの、首後ろに大きな手を当てたことで姿勢が安定する。軽く揺らしながら様子を見たオスカル様が、顔を近づけた。
「ほら、もう眠っています」
オムツを替えたこともあり、気分がいいみたい。ぷにぷにした頬を突き、私は微笑んだ。
「慣れているのですね」
「義父上に聞きましたか? 私は養女に迎えた姪を育てています。まだ赤子の頃からね」
「では育児の先輩ですわ」
「残念ですが、あなたのお母様には敵いません」
軽快な会話が楽しくて、並んで歩き始めた。案内された店は小物や雑貨品のお店が多く、見ているだけで楽しい。気に入った石鹸やスカーフを購入し、ふと気づけば……お父様が拗ねていた。
「お父様?」
「ナサニエルを抱っこしたい」
ぼそぼそと告げられた内容に、顔を見合わせたオスカル様と吹き出す。
「どうぞ。こんな感じで手を添えてください」
オスカル様に抱き方指導を受けたお父様は、剣も扱う大きな手でナサニエルの首を支えた。ふわりと浮いた瞬間に泣き出しかけたのに、お父様の腕の中で大人しく指を咥えている。抱き方指導は成功だったみたい。
「これ以上は夕食に遅れますね。馬車は私が警護します」
騎士団を連れて来たオスカル様はそう請け負い、新しい護衛が6人ほど増えた。寝台が設えられた馬車に乗り込み、また揺られる。途中から道が変わったのか、揺れが優しくなった。夕暮れが窓から赤く差し込む頃、馬車は静かに停車する。うとうとと眠りかけていた私は、停車に慌てて身を起こした。
「まだ大丈夫、髪が乱れたわね」
同乗するお母様が指先で直す。その間に周囲で物音が続き、ノックがあった。
「第三皇女フェリシア殿下、並びに皇孫バレンティナ皇女殿下。アルムニア大公邸にようこそ」
お礼を言った私の背を、お母様が押した。振り返れば、先に降りてナサニエルを受け取ってと言われる。手を差し伸べて待つオスカル様に助けていただき、いつもより高い馬車の階段を降りた。専用の踏み台が用意されており、足元の不安はない。
ナサニエルを受け取ろうと顔を向ければ、お父様が先に手を伸ばした。孫を抱いたお父様の顔が、緩み切ってるわ。取り上げるのに忍びないと苦笑いし、オスカル様のエスコートで顔を上げた。
目の前に、見たことがない屋敷が羽を広げていた。
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